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米国の「イラン空爆計画」は市場陽動の演出なのか?
BBCが流した米国の「イラン空爆計画」
2月20日(日本時間)、世界に衝撃が走った。米国が、何度警告しても核開発をやめようとしないイランに対する空爆計画を練っていると英国のBBCが報道したからだ。しかも、攻撃対象の中には、問題となっている核関連施設も含まれているというのだから仰天だ。米軍お得意のいわゆる「限定的空爆」とでもいうのだろうが、操業中の核関連施設に空爆をしかければ、核爆発になり、世界中に甚大な被害が出ることが予想される。
こうした報道を見て、ふと思い出した。それは、80年代後半から90年代前半にかけて、かつて大騒ぎとなった北朝鮮による核開発を巡る、米国の対応だ。当時のクリントン政権は、のらりくらりと要求をかわす北朝鮮に業を煮やし、今回のイランに対してと同じように「北朝鮮に対する限定的空爆計画」を策定したと報じられ、「第2次朝鮮戦争、いや、核戦争の始まりだ!」と世界中が震撼した。しかし、フタをあけてみれば、その後、米朝関係は急接近し、「米朝枠組合意」が結ばれ、大団円となったわけである。
マーケットを左右する要素には様々なものがあるが、「上げ」を演出した後に、米国勢が「下げ」を演出するために最近好んで用いるのが「地政学リスク」である。「戦争」それ自体は需要を高めるのでむしろ経済のプラスになる(第一次世界大戦の時の日本を思い出してもらいたい)のだが、戦場となる国およびその周辺からしてみれば、状況は逆である。マネーはリスクの高まった地域から一斉に逃げ出していく。
ポイントは、世界最大の覇権国である米国が、自らの経済力、軍事力、そして情報力を用いて、こうした「リスク」を世界中で演出する能力を現に持っているという点にある。日本では未だにこの事実を直視せず、「陰謀論」だと排除する向きも多いが、そういった反論自体、ただでさえ情報の少ない個人投資家に対する陽動作戦であるので、無視すべきだ。
むしろ、具体的な事例に沿って、米国とその周辺国がどのような動きを示し、それが地政学リスクとしてマーケットの中でどのように演出されていくのかを日々検証していくことこそが、勝ち残るための基本なのである。
イランに急接近するインド
その意味で、今回の衝撃的な報道を背景としたイラン情勢を巡る、最近の世界中の報道をあらためて観察しなおすと一つの重大な事実を発見することができる。それは、こうした緊迫した情勢だというのにインドがイランに急接近しているということである。
2月18日付のチャンネル・ニュース・アジア(シンガポール)は、インドの政府高官が22・23日にパキスタンのイスラマバードを訪問し、13年越しでイランおよびパキスタンと交渉してきた、イランからの天然ガス・パイプライン建設プロジェクトについて協議を行うことを報じた。この協議にはイラン政府側からも高官が出席する予定であり、しかも今年6月にはめでたく調印される段取りになっているのだという(詳しくはメールマガジン『元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る』をご覧ください)。
繰り返しになるが、英国BBCいわく、米国は今、言うことを聞かないイランを空爆しようとしているというのである。イランとの取引は危険きわまりないように見える。しかしその一方で、米国がBRICsの一員と持ち上げ、盛んに宣伝しているインドはというと、そのイランに接近し、非難するどころか、ビジネス・トークに余念がないのだという。しかも、これまでいがみあってきたパキスタンも、パイプラインの経由地としてしっかりと1枚かんでいるというのだから驚きだ。正に「謎の国、インド」である。
最後に得するのは誰か?
中国人と並んで、世界中に商業・情報ネットワークを持ち、活動を展開してきたインド人たちである。そうした彼らの目に狂いがあるとはまず思えない。そうである以上、私たち=日本の個人投資家の方が、まずは考えをあらためる必要があるのではないだろうか。
つまり、「米国がイラン空爆を計画している」「したがって中東情勢は緊迫化する」「原油高になるかもしれない」という発想が、ひょっとしたら仕掛けられたものかもしれないということに気付くべきなのである。もちろん、情勢の更なる展開によって、実際に小競り合いとなり、そのことが演出された短期的な原油高につながっていく可能性は排除できない。
しかし、シナリオはさらに続き、このシナリオの存在に気付いている、あるいはそもそもシナリオの中で役回りを担っている越境する投資主体を抱えた諸国は、実に巧妙に動いているのだ。
こうした流れを見ていると、弊研究所の公式ブログ でも御説明しているとおり、金融マーケットは外交、あるいは軍事と実に表裏一体であるのだなとつくづく思わざるをえない。国を担うエリートたちが政治・経済・軍事・学術の世界を自由に行き来する柔軟な労働市場を米国が維持してきているということがその背景にはある。
そうした事情を知らない日本人が、投資の世界で騙されやすいのはいうまでもない。そこから脱却するには、世界中で見られる潮目に目を配り、「最後に得をするのは誰か?」を24時間考え続けるタフな思考力を育てるしかない。イラン情勢の陰で暗躍するインドは、そのことの大切さを私たちに教えてくれる。
[新世紀人コメント]
イランの指導者達が実は米・英・イスラエルと意が通じている可能性が在る事を私は指摘してきた。
米国を始めとする枢軸は中東地域等で実は、一定限の核拡散が進行することを希望している可能性すらあるものと見ている。北朝鮮の「核」(規模は不明とされている)もその一例であろう。
尤も、これら枢軸とイランとが思惑が同じの同じ穴のムジナと言う訳ではない。
「同床異夢」なのである。
日本人は、国際性豊かなインド人、チャイニーズ(華僑でもよい)、イスラム教徒の行動や意見に常に注目しておく必要があるのだ。
日本人が生き残りたいならばその様に努めるべきであろう。
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