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http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20070223k0000e040033000c.html
「真実は勝つ」−−。03年鹿児島県議選買収事件で23日、中山信一元県議(61)ら12被告全員を無罪とした鹿児島地裁判決。支え続けた家族や住民の目も歓喜の涙にぬれた。3年8カ月に及んだ裁判ではもう1人、無罪を叫んだ人がいた。05年5月に被告のまま77歳で亡くなった山中鶴雄さん。「自白」の責任を感じ、死の前日も病床で裁判官に「やってない」と訴えた。判決は山中さんの自白も真実でないと認定したが、家族が味わった悔しさは消えることはない。【内田久光】
「(警察官に)言っても、取り上げてくれんとですよ。全然、もう……。『警察が正しいんだ』と、その一辺倒……」
山中さんが病院の個室で裁判所の出張尋問を受けたのは、死の前日だった。その1週間前、弁護人と尋問内容の確認をした姿が、ビデオテープに残っている。
精かんさを感じさせる顔立ち。鼻に栄養チューブをつながれたまま、逮捕された2年前の記憶をたどる。ベッドに横たわったままうつろな表情が続いたが、取調官の態度に話が及ぶと、目を見開き、強い口調に変わった。
03年4月13日の県議選から3日後、警察に呼ばれて人生が一変した。終わりの見えない過酷な聴取。署に向かう途中に自動車事故を起こし、首をけがしたが、翌々日には入院先から任意同行を求められた。5月13日には逮捕され、9月に保釈されるまで、取り調べは計595時間に及んだ。訴えが届かない絶望から、言われるがままに「自白」してしまった、という。
一方で山中さんは、13人の被告の中でただ一人、当初から自発的に取り調べの状況を書き留めていた。後に弁護人の間で「山中ノート」と呼ばれる日記だ。「無罪の証拠はないものかと思って……。何とか残しておかないといけないと思った」。公判で否認に転じた理由を尋ねられ、はっきりと「弁護士の先生と、裁判ではうそは言わないと決めていた」と答えた。
半ば開き直ったような「自白」は、本人だけでなく家族も苦しめた。「父が自白し、それが基になったと周りに言われた。最初は犯人扱い。父はうそを言う人でなく、もう、それが悔しくて……」。山中さんを支え続けた四女(46)は忘れたい過去を思い出しながら、当時の心情を打ち明ける。
今月17日、被告たちの支援者が地元で営んだ山中さんの追悼法要に家族の姿はなく、この日も傍聴には来なかった。「本当に疲れました。何十年分ものエネルギーを使った感じです」。傷はまだ癒えない。
毎日新聞 2007年2月23日 13時07分
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