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◇元日、手帳に「都民との十の約束」
東京都知事選の告示まで1カ月。なのに、3選をめざす石原慎太郎氏(74)の対抗馬が出そろわない。候補者として名前の挙がったジャーナリスト、鳥越俊太郎氏(66)が首都決戦について語った。一時は出馬を決意してまとめた「都民との十の約束」を明かした。【坂巻士朗、大槻英二】
◇一時、「やろう」と思った。がん転移で断念
テレビ朝日系の情報番組「スーパーモーニング」を終えた足で、鳥越さんは都内のホテルに現れた。毎日新聞記者からテレビの報道キャスターに。ニュースの職人は席に着くなり、「都知事選の争点だったよね」と切り出した。
「石原さんが前回と同じだけの票を取れるかどうかでしょう」。石原氏は03年4月の都知事選で308万票を獲得し、圧倒的な強さで再選した。「事実上の信任投票になるかもしれない。投票率がどこまで上がるかを含めて、有権者がどの程度、今の石原さんを評価しているのかというね」
自身は、石原知事をどのように見ているのだろう? 「知事としての8年間は成功したと言えるのか。外形標準課税の導入は裁判になったし、都が出資してつくった銀行もうまくいっていない。東京オリンピックを開催できるあてはない。むしろ最近は、税金を無駄遣いしているとは知らなかったという人が増えている」
昨年末の都議会で石原氏が指摘されたのは、高額な海外出張や、四男で画家の延啓(のぶひろ)氏(40)が関与した事業への公費負担問題だった。「ワンマン体制で、トップダウンの権力集中型の都政をやると、だれもストップをかけられなくなる。それが都民に次第に分かってきた」
石原氏の政治姿勢への評価は厳しい。では、出馬は考えなかったのか。民主党から打診があったと伝えられたが。
「去年の暮れに、菅(直人党代表代行)さんと、円(より子都連会長)さんに会い、立候補を打診されました。その席では、イエスもノーも言わずに考えたんです。そして、一時期ね、やろうと思った」
そう言って鳥越さんは、手帳を開いた。1月1日。そこには赤字で「東京都民との十の約束」と書かれていた。
「マニフェストです。東京が世界でナンバーワンというのを10個ぐらい掲げてやろうと思いました」と、少し読み上げた。「環境でナンバーワン、非核でナンバーワン、治安・安全で世界一。そして少子化対策、教育・芸術・文化、女性を生かす、アジアとの連携、中小企業の力……」。続いて、具体策を語る。
「米国は京都議定書から離脱したけど、ニューヨークやシカゴを巻き込めば、東京が環境問題のリーダーシップをとれる。非核問題も、核保有国が『核を持つな』という状態の中で、唯一の被爆国の首都・東京が音頭を取ってやる。若者が、日本のものづくりを支えてきた町工場の職人を目指すような制度も……」
“鳥越候補”は誕生寸前だったのだ。「正月にね、そういうメッセージを考えました。そうすれば、『品格ある都市』になると。もしおれが知事になったら、それができると思いました」。しかし、決断をあきらめざるを得ない事態が起きる。「1月4日に、主治医から『がんが転移している』と言われて」。鳥越さんは05年10月、直腸がんの手術を受けた。「妻は出馬すれば離婚するというし、娘たちも絶対に反対。僕も、勝てたとしても4年間はちょっと無理だと」。民主党に断りを入れた。
◇漂流始めた「無党派」
政治アナリスト、伊藤惇夫(あつお)さんは「鳥越さんが、石原さんを上回る存在感を示せているとは思いませんが、午前中の情報番組に出ているなど、主婦層にはかなりの人気があったはず」と指摘する。その上で、候補者擁立に手間取る民主党に「参院選に向けて大きなはずみをつけるためにも、都知事選は極めて大切な選挙。党内からの候補では勝機は極めて低く、消化試合にならざるを得ない。それを避けるには、菅さんの引責出馬しかないでしょう」と注文をつける。折しも民主党都議団は「菅氏出馬要請」でまとまった。
宮崎県知事選で、東国原(ひがしこくばる)英夫氏が政党に頼らずに当選したように、首長選の行方は無党派が握った感がある。伊藤さんは「無党派が漂流し始めています。小泉政権の時には、無党派の3、4割は自民党を支持した。しかし、今は自民離れを起こしている。ところが民主党が受け皿になっていない」と話す。
鳥越さんも「石原さんが自民党の推薦をためらったのも、無党派を取り込まなくてはという危機感を持ったからでは。僕が立候補していたとしても、民主党に推薦を頼むことはなかったでしょう。ただ、石原さんは実質的には自民党。民主党は時間をかけて都政奪還の基本戦略を立てるべきでした」と注文を出す。
現職知事の対抗馬が出そろわない。その現実が都政の閉そく感を象徴している。
◇問答無用に疑問符広がる−−03年都知事選に挑んだ評論家・樋口恵子さん
前回の都知事選で、308万票を集めた石原氏ばかりが注目を浴びて、ほとんど無名だった私が実質、わずか半月ほどの選挙期間で81万もの批判票を集めたことが評価を受けなかったのは残念です。この話で取材を受けたのは4年間で、初めて。負けると分かっていても、あえて出て、「軍国おじさんと平和ボケばあさん」という対立軸を示しました。それなりの役割を果たしたと思っています。
問答無用で、側近だけで決める密室政治が石原氏の政治手法。五輪招致を叫んでいるようですが、国際都市・東京といえども、1200万都民の生活の場であって、広く都民の知恵を結集して、あらゆる世代に居場所と出番があるような舞台装置をつくるのが、一地方自治体としての役割だと思います。
都民が石原氏の強引な手法に飽きて、疑問符がたくさんついてきました。一方で、この4年間に所得格差が広がり、本当に生活に困っている人たちというのは、考える力を失い、強い者に頼りたいと思っているような風潮も感じます。
宮崎県の「そのまんま東現象」を見ても、無党派の風は吹いていますが、都知事選は最大野党である民主党が中心となって対立候補を立てるべきだと思います。4年前、石原都政が許せないと思ったから蛮勇を振るったわけで、おじゃまでなかったら、応援演説のひとつぐらいはさせていただきますよ。
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ファクス03・3212・0279
毎日新聞 2007年2月22日 東京夕刊
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