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社説 (2007/2/23)
イラク支援 これが主張する外交?
安倍晋三首相はチェイニー米副大統領との会談で、イラク支援の継続を約束した。「主張する外交」というなら、二万人もの部隊増派を柱とした米国の新戦略の詳細をただすのが先だろう。
副大統領の訪日理由がいまだにはっきりしない。「双方の約束」だからと、詳しい会談の中身も明らかにされなかった。結局、北朝鮮問題などで首相に恩を売って、自衛隊のイラク派遣の継続に念を押すのが目的だったような印象が残る。
会談の中心は北朝鮮問題だったようだ。副大統領は「日本は六カ国協議で米国の重要なパートナー。日本の拉致被害者の悲劇の解決も共通の課題だ」と、拉致問題を重視する安倍政権の立場に理解を示した。
折しも国会では、北朝鮮へのエネルギー支援を明記した六カ国協議の合意を受けて、野党は「拉致問題にこだわりすぎると、日本は孤立するのではないか」などと批判を強めていた。副大統領の言葉は格好の「助け舟」となったに違いない。
二人は強固な日米同盟の重要さを確認した。久間章生防衛相が米国のイラク開戦の判断について「間違っていた」などと発言し、日米関係悪化を危ぶむ見方があっただけに、それを打ち消す意味もあっただろう。
副大統領は自衛隊の制服組トップと顔を合わせながら、久間氏とは会わなかった。そうして不快感を示す一方、会談では言及せず、日米蜜月だけを強調した。支持率続落に悩む首相にとって、側面支援になったはずだ。
副大統領の“配慮”への見返りがイラク支援継続の約束だったのか。政府は、七月末に期限が切れるイラク特措法を延長する方針を固めているが、最終決断は示していない。にもかかわらず、首相は「航空自衛隊の(空輸)活動や政府開発援助(ODA)を通じて支えていく」と、既定路線であるかのように表明した。
イラク情勢は泥沼化し、英国軍の一部撤退も伝えられる。米国でも賛否の割れるイラク新戦略の真意をただすことも、国民への説明もなく、支援継続と言ってもらっては困る。
首相は二十二日、記者団から特措法の延長について問われると、「日本が独自に判断して決めていく。現段階では何も決まっていない」と述べた。相手によって発言を使い分けているとみられても仕方ない。
首相は先の施政方針演説で「真にアジアと世界の平和に貢献する『主張する外交』を推し進める」と語っていた。これが「主張する外交」なのだろうか。
http://www.tokyo-np.co.jp/sha/
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