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2月23日付・読売社説(1)
[防衛秘密と報道]「今後も『知る権利』に応えたい」
防衛省は、国の安全保障の根幹にかかわる情報を数多く抱えている。厳格な情報管理と服務規律の徹底がなされるのは当然のことだ。
防衛秘密が外国スパイなどに漏れ出して、国益が損なわれるようなことがあってはならない。
だからといって、国民が報道で知るべき公共性の高い情報まで、すべて遮断されるようになって良いはずはない。
防衛省情報本部の1等空佐が読売新聞記者に内部情報を漏らした疑いがあるとして、自衛隊の警務隊が1佐の自宅などを捜索し、任意で事情聴取していた。秘密指定された文書などを外部に漏らした自衛隊法違反容疑だという。
報道をめぐっての、異例ともいえる防衛省の強権的対応には、「取材・報道の自由」「国民の知る権利」との関係で強い懸念を抱かざるを得ない。
問題になったのは、2005年5月の朝刊記事だ。日米両国の防衛筋が確認した話として、中国海軍の潜水艦が南シナ海を潜航中、火災とみられる事故を起こして航行不能になり、海南島に向けて曳航(えいこう)されていることなどを報じている。
防衛庁(当時)は記事に強い不快感を示した。火災の情報が米側からもたらされたものだったためとされる。
報道から半年後、漏洩(ろうえい)の被疑者不詳のまま警務隊に告発している。1佐の強制捜査が行われたのは約1年後の今年初めだ。この間、継続的に内偵捜査が行われていた。
情報漏洩といえば、自衛隊はしばしば不祥事を起こしてきた。2000年には海自3佐による在日ロシア大使館武官への情報漏洩事件が発覚した。昨年も自衛隊員らのパソコンから、防衛関係の情報流出が相次いでいる。
自衛隊法が改正され、秘密漏洩への罰則が強化された。情報流出の抜本対策も昨春、まとめられた。
防衛省には、米側への信義を重んじ、日米の情報協力体制に揺らぎのないことをアピールする狙いがあったのではないか。“見せしめ”的捜査で内部の引き締めを狙ったとの見方も出ている。
こうした対応は、取材対象となる公務員らを委縮させ、結果的に記者の取材・報道をも制約してしまう危険性が高い。国民の知る権利も狭められてしまう。
読売新聞は、今回の取材活動が適正に行われ、法令違反や社会通念を逸脱する行為がなかったことを確認している。
そして、今後も取材源の秘匿を貫き、知る権利に奉仕するため適正な取材・報道を行っていくつもりである。
報道機関の使命を再確認したい。
(2007年2月23日1時31分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070222ig90.htm
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