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□「国民投票法案の中身を知っていますか」 [ビデオニュース・ドットコム]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070315-01-0901.html
2007年3月15日
「国民投票法案の中身を知っていますか」
ゲスト:井口秀作氏(大東文化大学法科大学院助教授)
安部政権は憲法改正の手続き上不可欠となる国民投票の方法を定める、いわゆる「国民投票法案」を今国会で成立させる意向を明確に打ち出している。与党側はこの法案を、憲法に定められた手続きを規定するだけの「手続き法」と位置づけ、強行採決も辞さない構えを見せており、最新の世論調査では「賛成」が56.2%、「反対」が24.1%と、世論の支持も好調のようだ。
しかし、憲法学者で各国の国民投票制度に詳しい井口秀作氏は、法案にはいくつかの重大な問題点があり、これを単なる「手続法」と受け止めることには、慎重さが求められると指摘する。
まず、国民投票の方式について、法案では「内容において関連する事項ごとの投票」となっているが、これでは国民は複雑に意見が絡み合う問題でも二者択一の選択を迫られてしまう可能性が高いという。例えば、憲法9条を改正する場合に、自衛権のみを明文化する条文と、集団的自衛権の行使を認める条文が提示されたとすると、 「関連する事項ごとの投票」では両者が区別されず、改正の賛否のみが問われることになる可能性が高いため、自衛権には賛成だが集団的自衛権には反対といった意見が反映されないことになる。与党側は、事項ごとの個別投票では話が複雑になりすぎて国民がついてこられないと主張するが、だとすれば、そもそも国民投票を行う意味は何なのかという問題も出てきそうだ。
また、現在の与党案では、改憲案が国会から発議された後、国民に対して行われる広報については、国会内に設置された広報協議会が実施するとされるが、この協議会のメンバーは国会の議席配分に応じて構成されることになっている。国民投票では本来、賛成、反対の意見が平等に提示される必要があるにも関わらず、現行の与党案では国会内の勢力が広報に反映されてしまうため、中立的な情報提供が行われなくなる危険性があると井口氏は指摘する。
同時に、現行法案では各政党の改憲案に関する広報費用を政府が助成することになっているが、これではメディアが政府から多額の広告料を受け取る立場に置かれることになるため、中立的なメディア報道が担保されるかどうかについても懸念が残る。現時点でさえ、与党が今国会での成立の意志を明確にしているにもかかわらず、法案の問題点を積極的に指摘しようとしないメディアが、助成を受けた上でどのような報道を行うことになるかは目に見えているのかもしれない。
他にも、投票が成立するために必要な最低投票率が設定されていない点や、この法案を「国民投票法」と呼ぶことにも井口氏は注意を喚起する。そもそも「国民投票法案」という呼称自体に、「国民の意思を直接反映させられますよ」といった雰囲気作りをしようという意図を感じるという井口氏は、「実際には、(十人十色の)国民の意思がそのまま投票結果に反映されるなどということはありえない。国民投票で実現されるのは、あくまでも国会が発議した改正案に賛成か反対かの表明のみだ。」と釘を刺す。
それにしても、仮に今回の法案が単なる「手続き法」だとして、憲法の制定以来60年間作られてこなかったものを、なぜ今作る必要があるのだろうか。井口氏は、この法案が定めている「憲法審査会」の設置が大きな意味を持っていると指摘する。改憲の機運が国会内で高まってきたとはいえ、その中身をどのように変えるのかという意見は、自民党内、民主党内でも拡散してしまっているのが現状だ。国会の発議に必要とされる衆院、参院それぞれの3分の2以上の賛成を、一党のみで獲得する可能性はほとんどない。そこで、政党の壁をまたいで上から改憲案を打ち出すことができる「憲法審査会」を設置することによって、国会発議の可能性を大きく広げようとしているというわけだ。そして、それはもちろん憲法改正という目標があってのことだという。
「憲法審査会」の役割はそれだけではない。審査会の持つ「憲法解釈機能」により、「集団的自衛権の行使はできない」という内閣法制局の見解を超えて、実質的な改憲が成し遂げられる可能性もあるというのだ。先に現実のほうを変えて既成事実を作ってしまい、後から改憲案を提出するというような事態になれば、仮にその改憲案が国民投票で否決されても実質的には意味が無いということになる。「こういう方向に行くのが最悪なパターンだし、その最悪なパターンなほうに走り出すという気がする」と井口氏は危機感をあらわにする。
解釈改憲がまかり通ってしまう事態を考えると、現在の「改憲派」は、単に「改憲を成し遂げたという証拠がほしい」という素朴な人たちであったり、改憲を実現することで気分的にすっきりしたい人たちということにもなりかねない。5月3日の憲法記念日までの法案成立が取りざたされる中、憲法調査特別委員会の中山太郎委員長(自民党)と同委員会の委員を務める辻元清美議員(社民党)の主張に耳を傾けながら、「いわゆる国民投票法案」と、その背後にある推進派の真意について井口氏とともに考えた。
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