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□すきま風 [国会TV]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070314-01-0601.html
2007年3月14日
すきま風
不思議なコメントだった。3月7日夜、安倍総理と小泉前総理、中川幹事長が帝国ホテルで食事を共にした後の中川幹事長のコメントである。官邸と党の間にすきま風が吹いていると言われていることについて、小泉総理は「俺が総理の時は暴風雨だった。官邸と党が一体となってどんどん大きな台風を吹き荒れさせたらいい」と言ったというのである。そう言われて安心したような口振りの中川幹事長に誰もが首をかしげたのではないか。
小泉時代の自民党と官邸の間には確かに嵐が吹き荒れていた。小泉政権の5年間は自民党抵抗勢力との闘いの連続だった。その結果「小泉前総理は改革者である」というイメージを国民に抱かせる事が出来た。抵抗勢力がいなければあれほどの国民的人気は得られなかっただろう。「自民党をぶっ壊す」という小泉前総理のその言葉に国民は熱い期待を寄せた。自民党は反小泉を象徴する悪役だった。しかしそうした時でも自民党の幹事長は常に小泉前総理に絶対服従であった。
小泉政権がスタートしたとき、小泉総理は党内の少数派で、群れることの嫌いな一匹狼には仲間も子分もいなかった。唯一心を許せたのは山崎拓幹事長で、その山崎氏は小泉前総理の前で直立不動の姿勢を取る絶対服従の幹事長だった。だから反小泉勢力は陰に陽に山崎幹事長の失脚を狙った。自民党内が森元総理まで含めて山崎幹事長の続投を認めない包囲網を敷き、それに抵抗できないと思ったとき、小泉前総理は山崎幹事長を副総裁に棚上げし、安倍官房副長官を幹事長に抜擢する人事を行って周囲を驚かせた。安倍幹事長もまた小泉総理には絶対服従である。というより安倍幹事長は表向きの顔で、事実上党内の取り仕切りは山崎副総裁が行ったと私は思う。そして安倍幹事長の次はこれも誰もが驚く武部幹事長の登場だった。本人も認めるように小泉前総理のイエスマンであることだけが取り柄の人物だ。
だから自民党と小泉前総理の間に嵐が吹き荒れていても、幹事長と総理の間にはすきま風など吹くはずがなかった。ところが今問題になっているのは安倍総理と中川幹事長の間に吹いているすきま風のことである。まさか小泉前総理がそれを台風にしろと言ったわけではあるまい。
安倍政権にはそもそも成り立ちからして小泉前政権の時のような抵抗勢力はいない。しかし最近の支持率低下に伴って党内に不満がくすぶり始めた。小泉前総理がそのことを指して言ったのだとすれば、それは今言われているすきま風とは違う話である。
総理を辞めて以来一切表に出ないことで、これまでの総理経験者とは違うある種の美学を感じさせてきた小泉前総理がなぜこの時期にこのようなパフォーマンスに付き合わなければならないのか。
私はかつて予想外の選挙大勝が小泉前総理に総裁任期の延長よりも裏にまわっての政界再編工作の仕掛けを決意させたのではないかと書いたことがある(「小泉二代目政権」)。
だから若い安倍総理を表に立て、自分は裏にいてじっと政局の行方に目をこらす。考えるのは自民、民主両党の分裂と再編である。小さな政府と大きな政府、成長重視と分配重視、単独外交と国際協調、そうした形で二大政党制をもう一度やり直す。言い換えれば小沢一郎主導で始まった二大政党制の流れを消して、小泉純一郎が主導する二大政党制の流れを作る。そうした作業を行うために表から姿を隠して裏にまわる。そう予想した。しかし重大な節目には必ず姿を現す筈で、それがいつ、どのような形で登場するかに注目しているとも書いた(「見えない二人」)。
そう書いた時には時期は参議院選挙の直前で、しかも劇的な形で登場するのではないかと予想していた。しかしシナリオに狂いが出るほど安倍政権がピンチに立てばその限りではない。どうもそのような事態が訪れてきたように思う。
2月7日の赤坂「津やま」での中川幹事長、竹中平蔵氏との会食、2月20日の国会内での塩崎官房長官、中川幹事長との会談、これらはいずれも中川幹事長からの要請によるものであった。今回の会食も、表向き安倍総理が呼びかけたとされているが、しかし最もその必要があったのはやはり中川幹事長である。そして小泉総理にもその必要があった。
安倍総理の小泉頼みという見方があるが、私は逆だと思う。今の時点で安倍総理に小泉総理から激励される姿を国民に見せる必要があったとは思えない。支持率が低下している事は気にしているだろう。しかしだからこそ最近の安倍総理は自分の思い通りに強気に事を進めるパフォーマンスを繰り広げているのである。
国会では、最重要法案と位置づけられた国民投票法案で、与党は昨年まで民主党との協力関係を何よりも優先していた。民主党の要求を丸飲みするのもやぶさかではなく、民主党も5月3日までの成立を暗黙のうちに了解していた。ところが独自色を打ち出したい安倍総理は憲法改正を参議院選挙の争点にすると表明した。選挙の争点と言われれば野党もすんなり協力するわけにはいかない。さらに与党は国民投票法案の単独採決も辞さないと言い出した。こうなると国会では他の法案も含めてことごとく数の力で押し切ろうとする構えに見える。
国会運営だけではない。人事でも柳沢厚生労働大臣の辞任要求をはねのけたのに続いて、今度は松岡農林水産大臣が光熱水費の説明を拒んでいる問題で、安倍総理はこれも養護する姿勢を示した。
さらに衛藤晟一氏の復党問題では、自民党党紀委員会が10対7という僅差で認めた事について、「(党内に)不満なんかくすぶってませんよ。誰がいます? いないですよね。いないんです」とコメントしてみせた。
驚くほどの強気である。その安倍総理が何故マスコミ注視の中で小泉総理から激励を受けるパフォーマンスをして見せなければならないのか。
夕食の席で小泉総理は「万が一参議院選挙に負けたからと言って、政権選択の選挙ではない。堂々と胸を張って、野党の主張にも耳を傾けてやりますと言えば良い」と述べたと中川幹事長はコメントした。安倍総理は黙って聞いていたという。中川幹事長のコメントによると、安倍総理が選挙の帰趨を心配して小泉総理に助言を求めたかのように聞こえるが、選挙の帰趨を最も心配しているのはむしろ中川幹事長の方ではないか。ウイングを左に広げることで幅広い支持を獲得し、選挙を有利に進めようとした戦略が、安倍総理によって否定されつつある。
おそらく小泉前総理からすれば、初めは慎重すぎるほどの安全運転をしていた安倍総理が、支持率低下を契機に急にスピードを上げて走り出し、それが自分が考えていたのとは違う方向に暴走する可能性が出てきたので、まずは平常心を取り戻せと諌める必要を感じたのではないか。
いずれにしても中川幹事長のコメントはこれまでその一つ一つが安倍総理のひ弱なイメージを国民に向けて発信するものであった。それが安倍総理と中川幹事長のすきま風の一因であり、そのため逆に安倍総理は強気一辺倒を打ち出すことになった。これが続いていくとすきま風は本当に暴風雨になる可能性がある。
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