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http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070312/usa070312001.htm
【ワシントン=渡辺浩生】米メリーランド州で先月末、12歳の貧しい黒人少年が虫歯を悪化させ死亡した。貧困層が最低限の医療さえ受けられない格差社会の現実を浮き彫りにした。
デーモンド・ドライバー君は今年1月、ひどい歯痛を母親に訴えた。病院に運ばれたとき虫歯の黴菌(ばいきん)が脳に回っていた。2度手術を受けたが、先月25日死亡した。
「80ドルのお決まりの抜歯で彼は救われたに違いない」と、28日付のワシントン・ポスト紙は報じた。なぜ虫歯の治療が受けられなかったのか。
一家はマイホームを持っておらず、定職のない母親は無保険。低所得者向け公的医療保険「メディケイド」に加入していたものの、失効させていた。母親は6本も虫歯があるデーモンド君の弟に治療を受けさせるのがやっとだった。
米国には日本と同じような国民皆保険制度がなく、低所得者と身体障害者にメディケイド、高齢者向けにはメディケアという公的医療保険制度が設けられている。しかし同州の5500の歯科医のうちメディケイドの患者を受け付ける医師は900しかいないのが実情だ。母親も「歯科医を探すのは難しかった」と打ち明ける。
デーモンド君の死はCNNや米議会でも取り上げられた。「医療保険制度の欠陥から学び二度と起きぬよう行動する必要がある」。同州のカーディン上院議員(民主)はすべての子供が良質の歯科治療を受けられるよう4000万ドル(約47億3500万円)規模を補助する法案を提案した。
医療保険に加入していない国民は4660万人(16%)。公的保険の負担が増えれば政府の財政が圧迫されるジレンマがある。
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