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□<近聞遠見>佐藤政権の「黒い霧」以来=岩見隆夫 [毎日新聞]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070203-01-0301.html
2007年2月5日
<近聞遠見>佐藤政権の「黒い霧」以来=岩見隆夫
政治家の失言・放言集は、戦後だけでもゆうに1冊の本になる。それで職を去った人、切り抜けた人、数限りない。
スキャンダルと放言が抱き合わせになると、これは始末が悪い。典型例が、古い話になるが、1966年9月、新任の荒船清十郎運輸相が引き起こした急行停車事件だった。
10月からの国鉄ダイヤ改正で、荒船は選挙区(旧埼玉3区)の深谷駅に上越、信越両線の急行上下4本をむりやり停車させたのである。これだけでもひんしゅくものなのに、記者団から質問されると、
「どうして悪いんだよ。そんなに問題にすることないじゃないか」
と憤然と言い放った。この開き直りが致命傷になる。佐藤栄作首相は、
「大臣がゴリ押しするとは、天下の一大事だ」
と一喝し、首になった。
荒船事件の年、上林山栄吉防衛庁長官の自衛隊機によるお国入りなど、閣僚の不祥事が頻発、政権2年目の佐藤を悩ます。短命説が流れた。今回とよく似ている。
だれが名付けたのか、世間は<黒い霧事件>と呼んで騒ぎ、街には<ブラック・ミスト>という店名のスナックまで現れたりした。
そんなある夜、愛知揆一官房長官が私邸の記者懇談で、連続スキャンダルに業を煮やしたのか、突然、
「新聞が悪い」
と言い出した。まだ駆け出し政治記者だった筆者が、
「それはおかしい」
と反論すると、愛知はさらに激高して言い争いになり、ついに、
「表に出ろっ!」
「よし、出よう」
の騒動に発展した。仲裁が入って一応収まったが、ひとしきり<表に出ろ事件>が話題にされた。
ところで、こんな閣僚の不祥事続きは、40年前の<黒い霧事件>以来だ。政治資金をめぐる佐田玄一郎行革担当相の辞任についで、柳沢伯夫厚生労働相の大失言、さらに何人かの閣僚が取りざたされている。
不良閣僚を抱え込んだ点では、佐藤と安倍晋三首相は同じだった。しかし、佐藤は66年暮れ、通称<黒い霧解散>に打って出て乗り切り、7年8カ月に及ぶ輝かしい最長不倒記録を残すのに成功したのだ。
安倍政権の運命は未知数だが、安倍と佐藤の違いがぼんやりと浮き出てきた。一つは、閣僚の失態程度ではぐらつかない政権の心棒を、佐藤はがっちり据えていたのだ。
<佐藤長期政権は沖縄で始まり、沖縄で終わった>
と言われたが、沖縄返還交渉は当時、実現不可能とみられていた。沖縄に取り組めば政権はつぶれる、という意味で、<佐藤の焼身自殺>と評した学者もいる。
なぜ、無謀ともみえた沖縄返還を政権の中心課題にしたかは謎の部分もあるが、とにかく佐藤の一種のすごみを思わせた。安倍にとって、<教育と憲法>はまだすごみの領域に至っていない。
いま一つは、失敗を重ねながらも、<人事の佐藤>の神通力がいかんなく発揮された。それは、新聞などにしばしば書かれた、
<佐藤首相は文学書よりも何よりも「国会要覧」というポケット判の本を愛読している。ひまさえあればこれを眺め、国会議員の経歴に精通している点、党内で右に出るものがいない>
というエピソードに尽きる。安倍人事はまだ雑だ。
安倍の祖父、岸信介元首相の実弟である佐藤は、岸ほどのキレ者ではなかったが、政治手法が卓越していた。安倍は範とすべきだ。(敬称略)
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