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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=249
法務大臣 殿
アムネスティ・インターナショナルおよびアジア死刑廃止ネットワーク(ADPAN)を代表し、昨年12月25日におこなわれた4人の死刑囚(広島の日高広明さん(44)、大阪の福岡道雄さん(64)、東京の秋山芳光さん(77)、藤波芳夫さん(75))に対する死刑執行について、私どもの懸念をお伝えしたくお便りします。
今回の執行は、世界的な人権擁護に背く歩みであり、死刑を用いるのをやめようとする国際的な流れに抗うものです。死刑を執行している国は決して多くありません。アムネスティが取り急ぎ把握している数字では、国連加盟国193カ国のうち、2006年中に処刑を行った国は20カ国しかありません。今回の日本での処刑は15カ月間執行がなかった後に行われたものですが、アジア太平洋地域の各国に対する残念な知らせとなることでしょう。アジアの他の国ぐに、例えば韓国や台湾などは、むしろ死刑廃止を検討しているところなのです。
2005年10月に前任の杉浦正建法務大臣は就任された際、自分の信念に基づいて死刑執行命令書に署名を拒否されました。法務大臣が絞首刑の執行を拒否したのは、それが最初ではありません。左藤恵元法務大臣も、自らの宗教的信念から執行命令への署名を拒否されました。
4 年間にわたる死刑執行停止期間が1989年から1993年にかけてありましたが、その時期、日本の殺人の件数は近代以降最低の水準にありました。1991 年には殺人の件数は1215件でしたが、2004年には1419件となっています。この結果は死刑には凶悪犯罪を抑止する効果がある、という主張に反しています。他国での経験からも処刑が行われないからといって殺人件数が増えることはない、という結果が出ています。
12月25日の4人の処刑は、死刑廃止と執行数の減少という国際的な潮流に逆行するものであり、死刑適用を回避する国際的な傾向については、2006年7月に発表した『今日が最期?日本の死刑』(AI Index: ASA 22/006/2006) 報告書で述べたとおりです。カンボジア、ネパール、東チモールではすでに死刑が廃止されており、最近ではフィリピンが廃止しました。韓国の国会では死刑廃止について真剣に討議しており、台湾当局は国内法から死刑の条項を削除したい意向を表明しています。日本は国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指していますが、死刑廃止に向けた措置をとることで日本が人権擁護に積極的であり、この重要な課題について強力なリーダーシップを発揮することを示すことになるでしょう。
「日本の約8割の国民が死刑存置に異論がない」というマスコミへの貴殿のコメントを拝見いたしました。アムネスティは、30年以上にわたって死刑を研究してまいりました。その結果、一般の人びとが死刑を支持するのは、犯罪をなくしたいという期待と、死刑執行が殺人を抑止する、という誤った考え方に大幅に依拠しているからであるとアムネスティは考えます。アムネスティは、市民には自分たちが選んだ代表によって法整備をする権利があることを認識しております。しかし、そのような法律は人権を尊重しつつ策定されなければなりません。歴史上多数派の支持により数々の人権侵害が引き起こされてきましたが、近代はこの悲惨さを認識しているのです。奴隷や人種差別、私刑は、それが行われた社会の中では大きな支持を得ていました。しかし、そうした人権侵害の被害者に対して、甚大な被害を及ぼしたのです。最近でも、ボスニア、ルワンダ、東チモールなどで起こった大規模な人権侵害は、そこの社会では広い支持を得ていました。しかし、民衆から支持されているからといってそのような人権侵害を受け入れることはできません。
アムネスティは死刑に反対していますが、暴力的な犯罪の犠牲者やその遺族への同情をいかなる形でも減じるものではありません。人権侵害の被害者のために活動する団体として、アムネスティは暴力的な犯罪が惹き起こす被害を十分に理解しています。アムネスティは、社会の誰もが暴力的な犯罪を減少させるために尽力しなければならないと考えます。また、殺人、強かんなどのひどい犯罪行為の被害を受けたあらゆる人びとは、そのような精神的外傷の後に生活を立て直すことができるべく、支援や援助を受けるべきであると考えます。
アムネスティとアジア死刑廃止ネットワーク (ADPAN)は日本政府に以下を要請します:
· これ以上死刑を執行しない;
· あらゆる死刑判決を減刑し、ただちに死刑を廃止するまで死刑の執行停止を導入する;
· 死刑の適用にまつわる秘密主義に終止符を打ち、死刑の適用に関するあらゆる情報を開示し、死刑廃止に向けて、一般社会と国会の両方で議論を開始する;
· 生きる権利ための手続的な保障措置を実施し、被拘禁者の処遇を改善し、死刑囚への家族・友人・弁護士からの大幅な接見交通を許し、医療施設へのアクセスを保障する。
この重要な課題についてのご意見をお待ちしております。
敬具
アイリーン・カーン
事務総長
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