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(回答先: 植草氏よりお預かりしましたのでコラムを掲載させていただきます(AAA植草一秀氏を応援するブログAAA) 投稿者 天木ファン 日時 2007 年 1 月 27 日 00:54:17)
1月17、18日の日本銀行政策委員会・金融政策決定会合が予想通り揺れ動いた。結局、6対3の多数決で利上げは見送られた。福井俊彦総裁と2名の副総裁が利上げ見送りに賛成して決着した。6名の審議委員は3対3の票決となり、意見が完全に二分される異例の会合になった。
私は日銀による小幅利上げ政策と所得税減税等による緊縮財政政策緩和の組み合わせが望ましいと提唱しているが、財政政策の方針に変化が見られない現状では、今回の利上げ見送りは妥当な選択であったと考える。
前回コラム執筆時点と比較して経済環境の最大の相違点は原油価格である。原油価格の国際指標であるWTI は1月18日のNY市場で一時1バレル=50ドルを割り込んだ。暖冬の影響で石油製品の在庫が増えていることと、OPEC(石油輸出国機構)の減産が想定ほど進んでいないことが背景である。
この結果、米国ではインフレ懸念が後退し、長期金利も落ち着いて推移している。日本においても金利引上げを急ぐ必然性が低下した。日本政府は日銀の利上げ実施に反対しており、利上げ実施後に株価下落や景気悪化が表面化する場合、今後の金融政策運営において、日本銀行の政策決定に対する政府の介入が一段と強まる懸念が生じる。この意味で今回の利上げ見送りは懸命な選択であったと考える。
今後の最大の焦点は、米国経済と原油市況の動向となる。三つのケースを想定しておく必要がある。@第一は、原油価格下落が持続し、同時に米国経済の減速が強まるケース、A第二は、原油価格は下落するが、米国経済は堅調に推移するケース、B第三は、米国経済が堅調に推移し、原油価格も下げ止まり、反転上昇するケースである。
第一のケースでは、日本の利上げは不要となる。米国では本年春以降に金利引下げが検討されることになる。為替市場では、円高傾向が優勢になり、日本経済の先行きにも不透明感が生じることになる。このケースでは、昨年の日銀による量的金融緩和政策解除、ゼロ金利政策解除が適切でなかったとの批判が政府から発せられることも予想され、日銀の独立性が再び脅かされることも考えられる。
第二のケースが日本経済にとっては最も望ましいケースである。米国経済の堅調が持続し、NY株価も堅調に推移する。日本の株価も連動して上昇し、昨年4月7日の日経平均株価終値17,563円を上回る展開が予想される。
それでも、このケースでは原油価格下落が長期に持続する可能性は低いと考えられる。米国経済の堅調から原油価格はいずれ下げ止まり、反転強含み上昇の動きに変わると予想される。原油価格下落の影響で米国貿易収支は改善し、ドルは上昇圧力を受けることになる。
この段階で、日本は利上げを迫られることになる。利上げは3月ないし4月に実施されると予想される。日本の利上げが2、3ヶ月先送りされるシナリオである。財政政策が緊縮路線を維持し続ければ、日本経済の先行きには徐々に黄信号が灯ることになる。
第三のケースでは、第二のケースでの展開が前倒しで表面化することになる。米国経済の先行きおよび原油価格動向が明瞭でない現状では、この二点を注視することがまずは重要と考えられる。
米国の住宅投資、個人消費動向が重要だが、現状では、第二、第三のケースが現実化する可能性が高いのではないかと考えられる。7月22日が参議院選挙投票日になる可能性が高いなかで、3、4月時点での利上げ実施は、政府・日銀間のより強い緊張関係を生み出す可能性が高い。
第二のシナリオに沿って、経済、金融情勢が推移する場合には、当面は良好な経済、金融情勢が予想されるが、春の波乱に備える必要があると考えられる。
いまひとつ、中期的テーマとして考察しておくことが避けられないテーマが「中国人民元切上げ」問題だ。すでに中国は世界最大の貿易黒字国、外貨準備保有国になっている。
第二次大戦後、日本が国際経済社会に復帰し、永らく1ドル=360円の為替レートで保護されたが、日本製品の国際価格競争力が強まり、日本の貿易収支も黒字化し、円/ドルレートは1971年に1ドル=308円に切上げられ、その後、1973年以降、変動相場制に移行し、円高が進行した。
中国人民元はいずれ大幅に切上げられることになる。どのような形での切上げになるかにより、影響発生の形態も異なってくるが、いくつかのシミュレーションを用意しておくべきである。
人民元は円に対しても切上げられることになると考えられるが、円はドルに対して上昇する可能性が高い。中国に進出している日本企業の中国での輸出採算は大幅に悪化する。中国経済は一時的な減速を避けられないだろう。当然、日本経済にもマイナスの影響が発生する。
2007年以降のリスクファクターであるが、今後十分に検討を重ねてゆく必要がある。米国のFCR(米国外交問題評議会)が発行しているForeign Affairs誌2006年11/12月号では、エコノミストのスティーブン・ローチ氏とデスモンド・ラックマン氏による中国人民元問題についての対論が掲載されているので、関心のある方は参照すべきと思われる。
国内政局では1月25日に通常国会が召集され、安倍首相が施政方針演説を行なう。「政治とカネ」の問題がクローズ・アップされることになると思われる。
2月4日には与野党対決の構図で愛知県知事選挙が投票日を迎える。7月の参院選に向けての第一の前哨戦となるだけに強い関心を集めることになる。
安倍政権の内閣支持率が上昇に転じるかどうかも大きな注目点である。政治情勢も本年の重要な注目事項である。
2007年1月21日執筆
植草一秀
http://yuutama.exblog.jp/5037966/
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