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http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070209_osomatsu/index.html から転載。
第97回
お粗末大臣のクビを切れない
安倍内閣の「弱さの理由」
2007年2月9日
先に、安倍内閣の最大の欠陥の一つが、的場順三内閣官房副長官にあると書いた。内閣官房副長官というのは、官僚機構のいちばんの要(かなめ)役といっていいポストだから、ここに人を得るかどうかで、その内閣がどれだけ官僚機構をうまく使えるかが決まるといってよい。
ところが安倍首相は、ここに的場順三という、大蔵官僚OBで国土庁事務次官経験者ではあるが、民間に出て長く(大和総研理事長ほか)、現役の官僚たちにニラミがきくとも思えない人物を、単に個人的によく知っているというだけの理由で抜擢してあてたため、官僚を使うどころか官僚に使われる内閣になってしまっている。
“カゲの官房副長官”石原信雄
安倍首相も、ようやく的場では官僚全体を仕切ることなどとても無理ということに気がついたらしく、最近は、なにかというととっくに引退したはずの石原信雄元内閣官房副長官を呼び出して、相談役にしており、いまでは大きな問題になると、石原がカゲの官房副長官として的場の頭ごしで官僚機構をリモコン操作しているのだという。
石原信雄といえば、竹下内閣から村山内閣と7代にわたって内閣官房を仕切り、古川貞次郎に次ぐ史上2番目に長い副長官経験者だから、その影響力はいまも全官僚機構に及んでおり、カゲの官房副長官として立派にその役割を果たしていると聞く。
安倍内閣が不祥事の連続でボロボロになり、支持率がガタ落ちで早くもポスト安倍の話がチラホラ出るような状況になっている。「週刊新潮」などは「『麻生総理』が見えてきた!」なんて記事まで書いている(ちなみにこの記事は羊頭狗肉の典型のような記事である)。
それでもこの内閣がなんとかそれなりに機能しているのは、中川幹事長、塩崎官房長官、5人の内閣補佐官などの側近のおかげではなく、もっぱらカゲの官房副長官である石原のおかげだというのが、霞ヶ関のカゲの声だ。
あまりに変則的な石原元内閣官房副長官の起用
この話高級官僚OBについ最近聞いたが、彼は、
「石原さんが出てくれば、官僚はピシッとしますから、安倍内閣ももう大丈夫です。あの人は、官僚を遠ざけようとして、高級官僚とサシでは会わないなんてルールを作ってしまったために、官僚機構が動かなくなっていた。多分高級官僚とサシで会うと、情報力でも政策力でも、対面交渉能力でも圧倒されてしまうので会いたくなかったのでしょうが、官僚を避けていたら国家機構が動かないのだという、初歩の初歩のところがやっとわかってきたんでしょう」
といっていた。
だけど、これはあまりにも変則的状況である。第一、的場の立場がない。官僚の世界で大切なのは、ルールであり、筋目である。立場をなくした的場がそっぽを向いたら、これまたやっかいなことになる。それにこういう人事をしてしまった安倍首相はすでに、面目を大いに失っている。
すでに、柳沢厚労相の失言問題、松岡農水相、伊吹文科相などの事務所経費問題、久間防衛相の失言問題等で、内閣改造を早期に行うべしの議論があちこちで出ている。私はそのようなお粗末大臣の処理のためというより、官房副長官問題の筋目をキッチリつけるためにも、内閣改造は早く行うべきだと思っている。
内閣官房副長官問題は国家の営みに直結
そういっては何だが、いろいろ名前があがっているお粗末大臣連中をクビにしようとどうしようと、天下国家の問題に直結するわけではないが、内閣官房副長官のポストを正常に機能するようにできるかどうかは、国家の営みそのものに直結する問題なのである。
マスコミ報道でにぎやかな部分より、表面的なマスコミ報道を追うだけではよく見えない部分に、安倍内閣の最も大きな弱い環がある。
もっといえば、安倍内閣の最も大きな弱点は、安倍首相その人にあるのかもしれない。
いま参院で内閣改造をすぐにでもやるべし(柳沢のクビは即刻切るべし)の議論の先頭に立っているのは、舛添要一(政策審議会長)で、先の愛知県知事選、北九州市長選があった当日に安倍首相の政治日程が秋田県の農業事情を視察するなどというトンチンカンなものになっていたことを批判して、このままでは、この内閣は参院選まで持たないのではないかとまで極論していた。
たしかにあの日の夕方のニュースで、秋田県を視察している安倍首相の姿をみて、この人の政治カンは狂っていると思わずにはいられなかった。
美辞麗句に酔う女学生趣味はおやめなさい
柳沢厚労相は、「女は子供を産む機械」論につづけて、「子供2人が健全」論で、まただいぶ叩かれているようだが、こういう発言が続出するのは、この人の日本語能力に基本的に欠けているところがあるからだろう。
日本語能力の基本に欠けているところがあるのは、安倍首相も同じだろう。
そもそもこの人が大好きな「美しい国」というスローガンがおかしい。そのような、内容が曖昧で、使う人によって意味が全くちがってくる主観性100%の形容詞を政治目標にかかげること自体がおかしいのである。そのおかしさにいまでも気がつかず、何度も何度もこの表現を使うたびに自己陶酔しきった表情を見せる安倍首相の顔を見るたびに、
「おいおい、しっかりしろよ。いいかげんに美辞麗句に酔う女学生趣味をやめないと、笑われるぞ」
といいたくなる。
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立花 隆
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月-2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。
著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌—香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
【関連投稿】
「女性は子供を産む機械」発言で湧き出る安倍「大政奉還」論(立花隆のメディア ソシオ-ポリティクス)
http://www.asyura2.com/07/senkyo30/msg/533.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 2 月 02 日 21:24:49
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