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2007年2月16日 (第1、第3金曜日更新)
第24回 「日本封じ込め」の時代
分析・先読みできれば、マーケットで勝ち残る可能性がある
闇の中でも真実は一つしかない
このコラムを書いていると、読者の方々からしばしば次のような質問をいただくことがある。
「同じコーナーの他のコラムニストの方々の文章を見ると、より具体的な投資指南が書いてある場合が多い。それなのに、なぜ原田武夫の文章だけは国際情勢の分析が主体で、小難しい内容なのか」
その理由をすでにおわかりいただいている方の数が続々と増えていることは重々承知しているのだが、ここであらためて簡単にご説明しておきたいと思う。
最近、めきめきと才能を発揮されている作家の一人に石田衣良氏がいる。その作品の中で、ぜひ読んでいただきたいのが「波のうえの魔術師」(文藝春秋)である。この本の中で、ある登場人物が、マーケットの展開を「波」にたとえ、それを適時的確つかまえる方法を会得することこそ、マーケットで生き残っていくために必要な技であることを説くシーンがある。最近、この本をあらためて読み直してみて、「まさにそのとおりだ」と思った次第である。
地理的および時間的な差を利用して生じた「価値」を巡って、売ったり買ったりのマネーの動きが生じる。はじめは「さざなみ」のごとく、そしてついには「大波」のように。その波の動きが目指す方向が変わる瞬間のことを「潮目」と呼ぶ。一般に、この「潮目」は自然にできるものだと思われている。なぜなら、マーケットは「神の手」によって動かされていると学校で教えられるからである。
しかし、実際には違う。今や国境が事実上取り払われたオープン・マーケットでは、国家をまたいで次々に投資を行い、回収していく企業・団体がいる。あるときはファンド、またある時は投資銀行であったりする、こうしたいわゆる「越境する投資主体」こそが、「潮目」をつくる張本人なのである。彼らは「潮目」をつくるために手段を選ばない。経済のみならず、外交、軍事、内政、文化、あるいはハイテクなどあらゆる手段を用いて、狙いを定めた方向へとマーケットを誘導し、その後押しをするための舞台設定を行うのだ。
そしてこうした「越境する投資主体」が国家そのものとなった国、それが米国なのである。したがって、米国の外交・軍事政策、とりわけ日本およびその周辺の東アジアにおけるその展開を見れば、「越境する投資主体」たちが一体今何を目指しているかがわかる。国際情勢分析が、日本の個人投資家にとって不可欠なのはそのせいなのである。なぜなら、世界最大の覇権国であり、ファンド国家である米国とそれを支える国々の動きを分析し、先読みすることができれば、当然、彼らより先回りして勝ち残る可能性が出てくるからなのだ。このことに政治家や外交官たちが気付かない国に生きなければならないのであれば、なおさらそうした能力を身につけなければ、個人投資家として、さらには市民として生き残ることはできず、米国とその一味の「カモ」にされるだけである。
私が繰り返し訴えてきた5つの「隠された事実」が示すもの
このコラムを書いている最中に、そうした「真実」を露骨に示す一つの出来事が起きた。2月13日午後、中国・北京において北朝鮮を巡る六か国協議が閉幕したのである。
私はこのコラムにおいて、これまで何度となく北朝鮮問題について取り上げてきた(第5回、第10回、第15回、第19回)。その理由は、米国とその一味がまさにそこで「仕掛け」ているからである。そして私は次の5つの「隠された事実」を繰り返し訴えてきた。
第一に、いわゆる「北朝鮮問題」の本質が、北朝鮮という東アジアに残された最後のマーケットを巡る経済利権の分配にあるということ。したがって、一部の日本の大手メディアや「言論人」たちが叫ぶような感情的な議論ではなく、クールな利害計算がそこでのゲームのルールになっている。
第二に、北朝鮮が「極貧国」であることは、未来永劫そうであることを決して意味しないということ。このことは、戦前の日本が行った「朝鮮統治」がなぜ行われたのかを考えれば、実は明らかなことである。当時、日本が朝鮮半島、とりわけその北部にまで進出した最大の理由の一つは、豊富な鉱物資源を確保できるからであった。そうした地質学的な特徴は変わっておらず、いわゆる商品・資源主義が到来している現代であればこそ、各国がそれに目をつけているのが現実である。
第三に、以上を踏まえて、米国、欧州、そして中国、韓国、ロシアなどは、それぞれ北朝鮮との間で経済的に深い関係を築き上げ、またそれを深化させようとひそかに努力しようとしていること。またその意味で、こうした取り組みを邪魔する存在には、一致してあたり、徹底して排除しようとする共通の意思があることにも注意しなければならない。
第四に、各国がもっとも怖れるのは、朝鮮半島を植民地化し、かつての「宗主国」であった日本が北朝鮮と国交を正常化し、北朝鮮にある経済利権を独り占めすることであるということ。したがって、時には日本人の中に散らばっているエージェント(外国勢力との協力者)を大量動員してまで、日朝の離反を画策し、何としてでも国交正常化が進展することを阻止しようとしている。もっとも、日本が気前よくカネを出してくれる都合の良い金づるであることも事実なので、各国は自国の北朝鮮ビジネスに役立つ限りにおいて、何も知らない日本に大量の資金提供をさせようと躍起になるという側面もある。
第五に、こうした事情を北朝鮮はいわばゲームの「胴元」であるかのように、すべて把握して動いている可能性が高いということ。何せ、覇権国であり、ゲームのルールをつくる立場にある米国がこのゲームでの優勝を狙って必死になっているのだ。ゲームの「場」を提供する北朝鮮が米国より情報提供を受け、それと緊密に協力しないわけがないのである。知らぬは、ゲームのルールも知らず、木戸銭だけを支払わされる愚かなプレーヤーだけだ。
封じ込められているのは北朝鮮ではなく日本である
色あせた歴史を思い起こす
さて、今回の六か国協議で採択された声明は一体どうであろうか。―――日本人にとっては不幸なことに、まさにこれら5つの「隠された事実」が露呈する内容となってしまった。
日本代表団は、いわば「お情け」で協議終了直前になって日朝協議に応じてもらったものの、最大の懸案として位置づけてきた拉致問題については、まったくの平行線のままであった。その一方で、各国はというと、議長国・中国をはじめとして最初から「北朝鮮へのエネルギー支援は当然」との姿勢を崩さず、渋る日本ににじり寄った。もっとも、北朝鮮がそれによって、そもそも2002年秋から問題とされてきた「ウラン濃縮型」の核兵器開発を放棄すると明言したならマシなのであるが、まったくそうはなっていない。むしろ、北朝鮮が「宿題」として課されたことはわずかである。それなのに、日本は各国との横並びでエネルギー支援を課され、いわば手ぶらで代表団は東京に戻ってきたのである。一方、北朝鮮のみならず、米国や中国など、他の各国は大満足であり、「歴史的な外交的成果である」とまくしたてている。
そう、そろそろ私たち=日本の個人投資家たちは気づかなければならないのだ。封じ込められているのは北朝鮮ではなく、他ならぬ日本であるということに。私は、これまで行ってきた情報分析の結果、まさにこの2月中旬が北朝鮮情勢を巡る決定的な転換点となり、かつ、そこで日本が封じ込められるとの結論に達していた。そして、そのタイミングにあわせ、一人でも多くの日本の読者の方々に上記の「隠された真実」と、その背景にある米国による対日統治を訴えるべく、一冊の本を準備してきた。それが、去る2月15日に上梓した「『日本封じ込め』の時代 日韓併合から読み解く日米同盟」(PHP新書)である。
投資の世界に首を突っ込んでいると、どうしても「今そこで起きていること」ばかりに気をとられてしまいがちである。しかし、実際に「越境する投資主体」を率いるレベルの人物になればなるほど、国籍を問わず、実はもっともよりどころにしているのが「歴史」であることに気づく。特に「歴史のない国家」である米国であればなおのことである。米国のエリートたちほど、歴史意識を持ち、とりわけ「日本の歴史」について意識的に勉強している連中はいないであろう。
そうした彼らと同じ水準で物事を見てみると、実は今回の北朝鮮を巡る一件が、近代世界がはじまって以来、営々と続けられてきた東アジア、そして日本に対する統治の企ての一ページとして、必然的に仕組まれたことであることがわかるのである。しかし、「未履修問題」で明らかになったとおり、もはや高校ですら自国の歴史をまともに教えなくなった日本に住む私たちは、そうした史実を知らない。その代わりに、「美しい国」「国家の品格」「武士道」、あるいは「プロジェクトX」といった内向きの根性ドラマにだけは感動し、今ある日本は日本人がつくりあげてきたとの虚構に酔いしれるのである。もちろん、そうした言論を垂れ流す大手メディアが、諸外国の勢力による長年にわたる操作を受けていることもまったく知らずにである。
私は、封じ込められた日本を変えていくのは、以上を認識した個人投資家だけではないかと考えている。選挙のためのカネづくりに追われ、利権分配にしか目がない政治家や、ますます利権が削り取られていく中で残された地位にしがみつこうとする官僚たちでもない。はたまた、「社会の木鐸(ぼくたく)」と自称しつつも視聴率に縛られることで企業以上に企業体質がしみついた大手メディアでもない。私たち=日本の個人投資家は、自分たちの手で自らの目を見開かせ、「封じ込まれた日本」を直視する中でそれを取り巻く「潮目」を読み込み、それによって国富を少しずつではあっても守り、増やすことしか方法はないのである。そして、そうやって出来上がる研ぎ澄まされた国際情勢認識と資産的余裕こそが、精神的余裕を生み、やがて「新しい中間層」としてこの国の政治をも変える社会階層をつくりだしていくのである。
日本マーケット急転換の日は近い
さて、これからが次回のコラムまでの皆様への「宿題」である。
「封じ込まれた日本」のマーケットは一体どうなるのか。――ポイントは、ふたたび北朝鮮問題にある。「これで終わり」では決してないのだ。ややシナリオが遅れ気味ではあるが、今回の出来事はこれまで2年ほどかけて米国がつくりあげてきた壮大な演劇の「序曲」に過ぎない。これから少なくとも2か月弱ほどの間、日本の内政も、外交も、そしてマーケットも北朝鮮情勢によって揺さぶられ、翻弄(ほんろう)されていくことになる。何せ、見返りについては「手ぶら」でありながら、エネルギー支援という「実弾の提供」を約束させられたのであるから。これが内政リスクとならないわけがない。
そしてその結果、どうなるのか。そのヒントは、拙著「『日本封じ込め』の時代」に書いておいたつもりである。このところの異常な日本株の高揚もすべてがそこに収れんしてくることに、賢明な読者の方々はすでにお気づきのことであろう。相場の急転換の日は近い。
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