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定率減税廃止 サラリーマンの給与はどうなる?(日経BPネット)
http://www.asyura2.com/07/senkyo30/msg/1072.html
投稿者 近藤勇 日時 2007 年 2 月 14 日 09:33:53: 4YWyPg6pohsqI
 

定率減税廃止 サラリーマンの給与はどうなる?
http://headlines.yahoo.co.jp/column/bp/detail/20070207-00000000-nkbp-bus_all.html

(落合 孝裕=税理士)
 1999年に導入された定率減税が廃止となった。減税の廃止、すなわち増税である。会社員の場合、すでに今年1月の給与から措置がスタートしている。ただし、増税を実感している人はどれほどいるだろう? 定率減税廃止を含む税制の変更によってどんな変化が起こるのか、税理士の落合孝裕氏に解説してもらった。

定率減税はそもそも、政府が1999年に景気対策として導入した税額控除制度。個人の所得税と住民税がその対象だった。2005年までは、個人の所得税額の20%相当(控除上限額25万円)、住民税額の15%相当(控除上限額4万円)を軽減した。しかし、その後の税制の変更によって、定率減税の段階的廃止が決まる。2006年には所得税、住民税ともに軽減率が半減。控除額は、所得税が10%相当(上限12万5000円)に、住民税が7.5%相当(上限2万円)に減った。そしてこの2007年には全廃。「事実上の増税」となる。

 一般的な会社員の給与には、いつからどんな変化が起こるのだろうか。気がついていない人もかなりいるようだが、今年1月に支給された給与には変化がすでに表れている。給与明細の「所得税」の項目をチェックしてみよう。年収が300〜500万円程度の人であれば、所得税の負担額が、これまでより数千円ほど「減って」いたはずだ。

 多くの人はここで「?」と感じたに違いない。そう、定率減税が廃止となったにもかかわらず、所得税の負担が「減って」いるのだ。

 この不思議な現象は、定率減税廃止とは別の理由によって生じている。2007年から始まった「国から地方への税源移譲」がその原因だ。地方公共団体はこれまで、国から支給される補助金などで行政サービスの財源を補ってきた。しかし三位一体改革により補助金が削減された。その減少分を補うため、これまで国が集めていた税金の一部を、地方が集めて財源に充てる。具体的には、国が集めていた所得税を3兆円分減らし、地方が集めている住民税を3兆円分増やす。私たち納税者の視点で言い換えれば、所得税負担が減り、その代わり住民税負担が増える。このため、1月の給与明細では所得税負担額が「減って」いたのだ。


税制の変更は、所得税は1月から、住民税が6月

 しかし、ここで新たな「?」が頭に浮かぶはずだ。「住民税負担が、なぜ増えていないのか」

 現実を先に説明すると、今の状態は5月まで続く。そして6月の給与から、大部分の会社員の住民税負担額が増えることになる。すなわち1月から5月まで、給与の手取額がまるで増えたように見えるのだ。

 人によっては、政府に不信を感じるだろう。「負担増によって生じる国民の不満を薄めるために、政府が、あえて5月までは負担増を感じない制度にした」と。しかし、そうではない。このようなタイムラグが起こる原因は、日本ならではの税徴収制度にあるのである。

 日本はほとんどの欧米先進国が採用していない「源泉徴収制度」をとっている。個々の納税者が課税額の計算や納税の手続きを自ら行うのではなく、役所や企業の担当者がこれらの手間を担う。

 所得税については「所得が発生した時点で課税」する。会社員の場合「予定されている年収に応じて毎月の給与から天引きする」先払いスタイルが長年続いている。住民税も、同様に給与天引き。ただし、こちらは「年収が確定してから算出する」スタイルをとっている。大ざっぱな言い方をすれば、所得税は先払いで、住民税は1年半前の確定年収をベースにした後払い。それゆえ、税制度が変更されても、その効果が表れる時期が所得税よりも遅くなるのである。


財源移譲は、個々のビジネスパーソンにどんな影響を与えるか?

 税源移譲による影響の詳細を、ビジネスパーソンの年収ごとに見てみよう。

 これまで住民税は、5〜13%の幅のなかで累進課税方式を採用していた。収入の多い人ほど、より多くの税率を課していた。今年からは、年収の額と関係なく一律10%とする。

 例えば、課税所得が200万円以下の部分は税率が5%だった。それが2007年からは10%に「引き上げられる」。住民税負担が増えるわけだ。いっぽう課税所得700万円超の部分は、これまで13%の税率をかけられていた。したがって、このケースでは住民税負担が「減る」ことになる。

 所得税はどうか。こちらは累進課税は残しつつ、収入別の課税率を改めた。年収400万円程度の人に課す税率は、2006年までは10%だったが、2007年1月からは5%に軽減する。

 ちなみに所得税と住民税の増減額は相殺される仕組みだ。


結局のところ、国民の負担は増える

 さて、以上の説明で、「今年の税制度」を少しは身近に感じてもらえたと思う。しかし、正直なところ「どうしてこんなに分かりづらいのか」とも思ったはずだ。税源移譲に伴う税制変更だけを見れば「個人の負担は変わらない」のだが、所得税と住民税とでは、その変化が表れるのにタイムラグがある。これとは別に定率減税が廃止となる。

 年間を通して見た場合、間違いなく国民の税負担は増える。ところがその理由や難解な仕組みを理解する前に、この「事実上の増税」をつい忘れてしまいかねない。源泉徴収制度による給与天引きに慣れてしまった日本の会社員は、「定率減税廃止」と聞いてもすぐにはピンとこないだろう。

 増税や減税の議論が起こると、私たちは注目をする。しかし、今回の税制変更に象徴されるように、いざ新しい制度が実施となると、制度の分かりにくさが原因となって、実体がつかみにくくなる。

 「負担が増えるか減るか」は非常に大きな問題だが、「その実体を国民がきちんと分かるかどうか」も重要。それゆえ私は、もっと根本的な議論をすべき時期が来ているのではないかと考える。つまり、負担を増やすか減らすかの議論より先に「誰にでも分かるシンプルな制度にしていく」視点での議論をもっとすべきなのだ。

 例えば、アメリカと同様にすべての納税者が自分で確定申告をする制度にする。個々の納税者の手間は増えるだろう。その代わり、皆が税制度のことをきちんと分かった上で納税することになる。ルールが分かりにくかったり、大きな手間がかかるようであれば、その改正を求める声が大きくなり、行政を動かす力になる。

 税制をシンプルにし、省力化する方策はほかに幾通りもあるはずだ。それを探るべきだと思うのだ。「誰もが理解でき、納得のいく税制度」に近づくことが、個人にも国や地方にも最良の道なのである。

 ビジネスパーソンの負担増は「分かりにくい」環境のまま、じわじわと進んでいる。参院選後は消費税増税の議論も本格化するだろう。負担がさらに増えることを懸念するのは当然のこと。しかし、そんな今こそ、根本的な仕組みを改革する議論をすべきかもしれない。「このままではいけない」という視点をもっと持つべきだと落合氏は言うのである。

落合孝裕(おちあい・たかひろ)
落合会計事務所所長。1961年生まれ。大学卒業後、大手食品メーカー、税理士事務所、コンサルティング会社を経て、1996年、落合会計事務所を開業。近著『「会社の税金」「社長の税金」まだまだあなたは払いすぎ!』(フォレスト出版)のほか、『給与明細のカラクリと社会のオキテ』(秀和システム)などの著書がある。

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