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1月4日の年頭記者会見で、安倍晋三首相は“憲法改正”を夏の参院選の争点にする意向を明らかにした。
これを受けて同日、小沢一郎・民主党代表は「国民生活に身近なもの」に的をしぼり、改憲を争点化しない意向を示唆した。
「戦後レジウムからの脱却」を揚げて登場した安倍首相は、任期内での憲法改正の実現に強い意欲を持つ。しかも衆議院は現在与党が3分の2を占めている。首相がまたとない機会だと考えるのは不思議ではない。
しかし、改憲が参院選の争点になるだろうか。民主党が争点化を拒み、与党の公明党も慎重論に立つ。争点にすること自体がきわめて困難だ。
たとえ争点になったとしても、それで与党が勝てるだろうか。それはさらに難しい。
改憲派の3つの流れ
冷戦が終結し、55年体制も崩壊した。言うまでもなく、現行憲法をめぐる環境は激変している。憲法改正に抵抗感が少なくなり、改憲賛正派も年々増えている。
ただ改憲論は同床異夢。総論は賛成でも各論(改正内容)となると千差万別だ。改憲論を大別すると次の3つの流れがある。
1)まず、制定当初から現行憲法を受け容れず、一貫して改正を主張してきた人たち。いわゆる“自主改憲派”。
現行憲法はマッカーサー司令部からの“押しつけ憲法”であると規定。独立国として、憲法は自主的に自分たちの言葉で、自分たちの筆で書き直すべきだとする。
かつて、改憲論の旗頭であった故稲葉修・元法相は、私に「極端に言えば、きちんとした日本語で自主的に書き直せば、内容が同じでもかまわない」と言ったことがある。「自主」に徹底的にこだわるのがこの流れの人たちだ。
2)次は“時代対応派”と呼ぶべき人たち。
半世紀もたてば、どんなに優れた憲法でも時代状況に適応しない部分が出てくる。また、経験的に不要な個所や不備なところも目立ってくる。二院制の是非や環境権の創設をめぐる議論はその典型例。この人たちの多くは、憲法9条などの根幹部分は手を着けず、新たに必要となった条項を追加しようとする。
3)もう1つは、「集団的自衛権の行使を可能にする」ための改憲を目指す流れ。最も緊急の必要性を感じているのはこの人たちだ。
これはアメリカからの要請に応えようとする面が強い点で、(日米)“同盟強化派”と名づけることができる。ただし、“米国追随派”という面も強い。
さて、いわゆる「個別的自衛権」の行使については、現行憲法下においても可能であるとの解釈が既に定着している。だが、これを憲法に明記すべき、とする意見も根強くある。小泉純一郎・前首相の改憲論はこれに類するもの。これは1)、2)、3)の改憲論に共通するものと言ってもよい。
これらの3つの流れは複雑に絡み合って、改憲賛成派・容認派を構成。改憲支持の流れを大きくしてきた。
この中で2)の人たちは改憲意欲が比較的弱く、「何が何でも改憲」という人は少ない。改憲への強力な推進力は1)と3)の中にある。
また、2)の“時代対応派”の多くは、長い間現行憲法を尊重してきた人たちと言えるだろう。3)の中にもそういう人たちが少なくない。「憲法を改正する」ことは「家を改築する」ことと同じだ。当然「どこをどのように改築するのか」と問われる。多くの人が家を改築することに賛成であっても、改築すべきところはそれぞれ大きく違う。居間を直せという人もあれば玄関と応接間だと言う人もいる。風呂、台所、洗面所が時代遅れだから、それだけ改築するなら賛成の人もいる。だから難しいのである。
ところで安倍首相の改憲論は3)の立場に立つものに違いない。当初は祖父である岸信介・元首相の影響で1)の“自主改憲”の色合いが強かったが、今では3)が突出しているように思われる。
だが、首相が3)の立場を明確に打ち出せば、現状ではとても多くの国民の支持が得られるとは思えない。改憲賛成派の足並みをそろえることも至難の技だ。
結局、この夏の参院選で憲法改正が大きな争点になることはない。行政改革、年金改革、経済格差など「身近な」問題が争点となる。さらに、改憲論の前提となる「集団的自衛権の行使」の是非もかなりの争点になろう。小泉首相は一昨年「郵政改革」という争点をで自らつくって選挙を実施、野党をその土俵に乗せた。その時点で小泉自民党は勝勢に立った。
今年の参院選が与党の土俵で戦われるのか、それとも野党の土俵で戦われるのか。すなわち、どの党が実質的な争点を決めるのか。そのことが戦局の主導権の行方を決定づけることになる。
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