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□小沢を阻む「3ず」の川 [AERA]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070101-01-0101.html
2007年1月9日
小沢を阻む「3ず」の川
復党に道路財源、やらせ、そして税調会長辞任。安倍内閣は「自滅のもぐらたたき」状態なのに。
選挙の候補者を決められ「ず」、支持率上がら「ず」、政策もぱっとせ「ず」……。
風邪気味なのだろうか。2006年12月18日、マスクを着けて記者会見に現れた小沢一郎代表は表情も、言葉も、さえなかった。
「人間個人の人生でもそうだが、目標と理想を達成できるかどうかは分からない。だが、理想に向かって努力することが、尊いのではないでしょうか」
知事選と政令指定市の市長選では、自民党と相乗りはしない。小沢氏は代表に就いて間もなくの5月、そんな方針を打ち出した。
小沢氏の視線の先には、安倍自民党と雌雄を決する07年夏の参院選挙がある。
国政では自民党との対決を叫んでも、自治体では馴れ合う。そんなオール与党では、有権者の信用は得られない。党の足腰も弱まる一方だ――。選挙を知り尽くした小沢氏ならではの「目標と理想」は、全くの正論と言うほかない。
官製談合や汚職事件で各地の保守系知事の逮捕が相次ぐ今こそ、この小沢イズムの見せどころ――のはずなのだが、いかんせん民主党の地力が追いつかない。
年明け早々の1月21日には山梨と愛媛、宮崎の3知事選がある。なのに山梨、愛媛では独自候補擁立を断念し、宮崎でも人選は難航を極めている。
「これでは3知事選とも不戦敗になりかねませんが……」
そう問うた記者への答えが冒頭の小沢氏の嘆き節だったのだ。
参院選での与野党逆転を、自らの政権への「ラストチャンス」と意気込む小沢氏は、三つの布石を打ってきた。
一つは「野党共闘」である。
共産、社民両党から、郵政民営化に反対した自民党離党組の国民新党まで。国会対策や選挙協力で幅広い野党勢力を「反自民」の1点で結集する。首長選での「相乗り禁止」もその一環だ。
二つ目は「自民党化」である。
議員や候補者に徹底して地元を歩く、自民党顔負けの「ドブ板選挙」を求める。小沢氏自身も、各地で企業や農協、漁協など自民党の支持組織を回って切り崩す。
三つ目は、党の基本政策の確立である。
旧社会党出身者からバリバリのタカ派まで。寄り合い所帯のゆえに、民主党は「政策がバラバラ」と批判を浴びてきた。独自の基本政策作りは長年の課題であった。
参院選左右する悲劇
野党共闘のスタートダッシュは鮮やかだった。
談合事件による前知事の辞職を受けた06年11月12日の福島県知事選は民主、社民推薦の候補が自民、公明推薦候補を大差で破った。小沢氏肝いりの「相乗り禁止」の華々しいデビューである。
意気あがる小沢氏は翌週19日の沖縄県知事選に賭けた。民主、共産、社民、国民新党、新党日本に地域政党を加えた「オール野党vs.自公連合」の構図だったが、あえなく敗北。野党共闘はわずか1週間で失速の憂き目に遭ったのだ。
福島と沖縄の勝敗を分けたのは結局、民主党の地力の差だった。
福島は「民主党の水戸黄門」こと、渡部恒三前国対委員長のお膝元。もともと強い保守地盤をまとめたことが最大の勝因だった。
一方で、民主党の基盤が弱い地方では候補者擁立すら困難なことは、冒頭に触れた山梨、愛媛、宮崎の各知事選の現状や、12月17日の和歌山県知事選での不戦敗を見ても明らかである。
多くの議員がこれまで「風」頼みで勝ち上がってきた民主党にとって、「自民党化」は一朝一夕で進むはずもないのだ。
小沢氏にとっての悲劇は、民主党の基盤の弱い地域が、小沢氏自身が「参院選の帰趨を決める」と力を傾けてきた全国29の一人区に集中していることである。
実際、山梨、愛媛、宮崎、和歌山はすべて一人区だ。そこでの不戦敗は、参院選に向けた前哨戦をみすみす棒に振ることに等しい。
相乗り禁止はいい。だが、対決の構図を描けなければ「もうひとつの選択肢」を有権者に示すことはできないし、民主党の「顔」を見せることもできない。
参院選に向けて、国民の耳目が集まるセミファイナルは4月の首都決戦、東京都知事選だろう。
豪勢な海外出張や四男への公費支出によって、3選をめざす石原慎太郎知事のイメージは大きく傷ついている。石原氏は今回、初めて自民党の支援を受ける方針だ。ならば民主党も強力候補で迎え撃ちたい――はずなのに、ここでも民主党の顔は見えそうもない。
民主党にとって「最強の候補」が菅直人代表代行であることは疑いようもない。だが、菅氏本人は「全く考えていない」と言う。
「石原氏が相手なら、菅氏でも勝てない。それに菅氏は万が一、民主党政権ができた時、心臓病の小沢氏から首相を任されることに夢をつないでいる」(菅氏周辺)
やむなく、海江田万里元衆院議員や女性国会議員、田中康夫前長野県知事らが取りざたされているが、いずれも石原氏のライバルとしては力不足というほかない。
政策の「自民党化」
政策面でも影は薄い。
民主党は12月18日、「政策マグナカルタ」なる基本政策を決めた。
歴代の代表が実現できなかった基本政策作りが、ようやく実を結んだことはよかった。問題はその中身がパンチを欠くことだ。
看板政策の年金改革を見てみよう。公的年金の基礎部分は「全額を税でまかなう」としたのは、従来のマニフェストと同じだ。
異なるのは、マニフェストが年金の財源として消費税を3%引き上げるとしていたのを撤回し、現行の税率5%を「維持する」と一変させたことである。
これで財源の帳尻はどう合うのか。小沢氏は「政治・行政・財政制度の抜本的な改革でムダを省けば財源は生み出せる」と語るが、それだけでこの政策を買う国民がどれほどいるだろうか。
小沢氏は、税率維持に転じた理由を、正直にこう説明している。
「小泉内閣で10兆円近い国民負担が増え、格差も広がっている。消費税の値上げは、私自身の政治判断として受け入れられにくい状況にある。07年は選挙だし……」
安倍自民党が消費税アップの議論を参院選後に先送りしたのに、民主党がアップを訴えれば、参院選で特に格差感の強い一人区での戦いが不利になる。そう現実的に割り切ったということだろう。
だがそれは、岡田克也代表時代の04年の参院選で「年金目的消費税の導入」を掲げ、自民党を上回る議席を勝ち取った「旗」を自ら下ろすことを意味する。
いわば政策の「自民党化」である。これでは自民党への対立軸にはならないし、民主党ならではの政策の顔は見えない。
八方気配りであいまい
問題はもう一つある。消費税アップに反対する共産、社民両党との共闘を壊さないためにも「税率維持」が望ましかった。そんな舞台裏が読み取れることだ。
そういえば、両党が反対する憲法改正については記述がないし、連合が嫌がる公務員改革についてもほとんど触れていない。八方に気を配った末のあいまい政策が迫力を欠くのは当然だろう。
安倍政権はいま、発足3カ月で早くも青息吐息だ。
郵政造反議員の復党と道路特定財源の一般財源化のあいまい決着で「改革後退」を印象づけた。さらにタウンミーティングのやらせ質問、本間正明政府税調会長の辞任と打撃が続く。
朝日新聞の世論調査によると、内閣支持率は当初の63%から急落し、47%まで落ち込んでいる。
民主党には、願ってもないチャンス到来だ。自民党がダメなら、野党第一党の支持率がぐんと上がってもおかしくないはず――なのに、民主党支持率は4回連続で14%という低位安定ぶりである。
民主党が、民意の受け皿になり得ていないのだ。なぜなのか。理由はもう明らかだろう。
選挙と政策の両面で、民主党の対応が生煮えだからだ。
民主党の代表になって8カ月、小沢氏は「剛腕」「壊し屋」の専横ぶりは表に出さず、党内融和と野党共闘に意を用いてきた。
乏しい力を何とかかき集め、とにもかくにも政権交代にこぎつければ、理屈や政策は後から付いてくる。「政権交代こそ真の改革」という小沢氏の持論からは、そんなニュアンスが伝わってくる。
だがその結果、民主党がどんな顔をしているのか、何をめざしているのか、多くの国民が明確な像を描けなくなってしまっている。
参院選まであと半年余。政権交代可能な二大政党制という小沢氏の「目標と理想」はかなうのか。それとも「尊い努力」で終わるのか。決戦のときが近づく。
論説委員 恵村順一郎
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