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2007年01月08日16時37分
フランスで「屋根の下で暮らす権利」が、教育や医療を受ける権利と並ぶ国民の基本的な権利に加わることになった。ホームレスと支援団体が、広場や遊歩道などにテントを並べて市民に路上生活を体験してもらい、住宅政策の貧困さをアピールする運動が全国の約20都市に拡大。政府が居住権を保障する法案提出を約束した。ホームレスパワーが国を動かした形だ。
シラク大統領は5日、「繁栄のそばに極度の貧困がある現実と戦うために居住権を基本的な権利に据える必要がある」と演説。ドビルパン首相はこれに先だち、ホームレスや母子家庭は08年、一般国民は12年から、人間的な生活が営める住宅にアクセスできなければ、裁判所が、国や自治体に住居の提供を命じることができる法案を、近く提出する方針を発表した。
約10万人いるホームレスをなくすのが目標。居住権の保障を政府に強制する法律は、欧州では他に英スコットランド地方にあるだけとされる。きっかけは、パリのホームレス支援団体「ドンキホーテの子供たち」の奇抜なアイデアだった。
「子供たち」は12月中旬、200のテントをパリのサンマルタン運河沿いに並べ、市民にホームレスと一緒に路上生活を体験してもらう活動を始めた。体験を希望する市民や著名人が続出。中部リヨンや南部ニースなど全国に広がった。急速な関心の高まりに、左右の各政党は相次いでホームレス対策を春の大統領選の公約に掲げた。
「三面記事ニュースとたかをくくっていた政治家たちが、あわてて支援表明に来始めた」と「子供たち」の活動家マルコさん(42)。運河沿いのテントで、ホームレスの女性ナビラさん(38)は「公園で野宿するか、売春で稼いで簡易ホテルに泊まる生活を10年続けてきた。次のクリスマスは少しは良くなっているかも」と期待する。
不動産の高騰や雇用の不安定化で、自分もホームレスになるかもしれないという不安が市民に強まっていることも、関心が広がった理由とみられる。昨年12月の世論調査で35〜49歳の62%が「ホームレスになる不安がある」と回答。ホームレス激励に運河を訪れたエルガさん(68)は「10年前まではホームレスは自ら路上生活を選んだ仙人のイメージがあったけど、今はひとごとと思えません」とため息をついた。
http://www.asahi.com/international/update/0108/005.html
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