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「科学的社会主義」(社会主義協会)07年1月号(第105号)
今月の展望「学習とたたかいが現実を切り開く」より抜粋
※社会主義協会は現在佐藤代表(佐藤協会)と坂牛代表(坂牛協会)に分裂していますが、この文章は坂牛代表側の機関誌「科学的社会主義」に掲載されたものです。
なお坂牛協会のサイトは
http://www5.ocn.ne.jp/~sksgkk/
佐藤協会のサイトは
http://www.kyokai.gr.jp/
となっています。
・・・
社会主義協会代表 坂牛哲郎
http://www5.ocn.ne.jp/~sksgkk/tenbou.html
日本人は闘わない人種か
「日本人はヨーロッパ人と人種がちがう、もともと争いを好まない人種なのだ」という俗論が国民の間に浸透している。特に戦争を知らない若い人に多い。著名な文化人類学者梅棹忠夫氏や哲学者梅原猛氏の「日本文化特殊論」は、この風潮の根拠となり、「和を以て貴しとなす」(聖徳太子、十七条憲法)が日本人本来の思想だと説く学者が後をたたない。
果たしてそうなのか。日本人は「和」を愛し支配階級の横暴に対しても闘わない特殊な民族なのか。これほどばかげた話はない。古代社会は奴隷の反乱により、その土台をくずされ中世封建社会に移行し、封建社会は農奴の闘争により資本主義社会に移行した。これは人類史の普遍的現象であり、歴史的事実である。
日本中世史の科学的研究は、戦後、石母田、永原、佐々木、安良城、網野氏等により深められてきた。
特に私の関心を引いたのは、藤木久志の実証研究である。私の利用している東武東上線沿線の埼玉県比企丘陸地帯の発掘が〇一年から進められ、貴重な資料が次々に発見されている。これによると、十五世紀から十六世紀にかけて、この地方は領主の戦争にまきこまれ、一村潰滅するという被害にあっている。収穫物は根こそぎ略奪され、農民は男女をとわずとらわれ、奴隷として売られ、家屋は焼きはらわれた。このため農民は山城をつくり、その周辺に村をつくり、武装して武士と闘ったのである。これは「比企形山城」といわれ、二三もの山城が密集し、全国山城研究の手がかりとなっている。彼等は侵略軍と闘うだけでなく領主に対しても年貢の減免を要求し、村村連携し武力を以てたたかった。この現象は全国的現象であり、北陸では一向一揆が領主を追放し、農民共和国をつくったのである。
織豊政権を経て、徳川政権に至り封建社会は確立した。しかし三〇〇年後再び大規模な農民闘争が発生し、封建社会の土台はくだかれ、明治維新による資本主義社会が成立するのである。ここで注目すべきは、一揆は山村等の貧困地帯でなく産業交通の要所等、全国情報を把握し易い地帯に発生していることである(横山十四男研究)。しかも一揆の中心には、国学、儒学の篤学者が存在し、その要求には、年貢減免だけではなく、「世直し」という革命的要求も含まれていたことを見逃してはならない。
戦前の労働・社会主義運動については省略するが、世界にも例をみない、凶暴な弾圧体制下で、多くの社会主義者、労働運動指導者は虐殺された。しかしその伝統があったればこそ、戦後、労働・社会主義運動は一挙に開花したのである。
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