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近聞遠見:まだ四つに組んでない=岩見隆夫
年初から、両者にらみ合いの写真、映像が繰り返し新聞、テレビに登場している。今年に懸ける主役2人だ。
しかし、まだ時期が早いせいか、がっぷり四つ、という感じがいまひとつ伝わってこない。双方、足場をしっかり固め、攻撃をかけるところまでいっていないからだ。
自民党の安倍晋三総裁(首相)は人気のかげりに悩んでいる。支持率ばん回の妙案がない。長老の一人からは、
「党、内閣とも顔ぶれが暗くていかん。もうキーマンは渡辺喜美(新行革担当相)しかいない。父親譲りの軽妙なおしゃべりがブレークすれば、内閣の人気は上がるが、逆に脱線して舌禍事件を起こすおそれもあるからなあ」
と新入り閣僚頼みの珍説まで出る始末だ。一方、民主党の小沢一郎代表は政権奪取の意気込みを語るが、自民党首脳はこんな言い方をした。
「暮れの衆院本会議場で、菅さん(直人・代表代行)が内閣不信任案の賛成演説をぶっているときに、代表が議場にいないんだから。あの党、どうなってるの」
結束の悪さを言おうとしている。こぞって、<小沢首相>を実現させようとする熱気が感じ取れないという。小沢も政権交代は言うが、
「私が首相をやる」
といったセリフはあまり口にしない。
参院選の投票日(7月22日予定)が近づくにつれ、非難合戦は日々激しくなりそうで、月末からの通常国会も、民主党幹部は、
「スキャンダルの材料はありすぎるくらいだ。あと何人か閣僚の首を取れる」
などと言う。
だが、そうした政党間のせめぎ合いの一方で、党首戦の行方が気にかかる。一昨年の衆院選では、劇場路線の小泉純一郎自民党総裁が、まじめ路線の岡田克也民主党代表を退けた。ベテランと少壮の戦いでもあった。
今回はそれがそっくり入れ替わる。小泉63歳・当選11回、岡田52歳・5回(当時)に対して安倍52歳・5回、小沢64歳・13回の組み合わせだ。
アクの強さも入れ替わった。小泉、小沢のほうが岡田、安倍よりも性格がどぎつい。しかし、アクもいろいろなので、安倍・小沢の争いにどう響くかは未知数だ。
人物分析で一つヒントになるのは、安倍も読んで、
「面白かった」
と感想をもらしたという「嫉妬(しっと)の世界史」(山内昌之東大教授・新潮新書)である。世界史に登場する人物、ライバルの間に介在する<男の嫉妬>のあれこれを描いた興味しんしんの著作だが、有権者から嫉妬心(ねたみ、そねみ)を抱かれるかどうかは、リーダーにとって決定的かもしれない。
山内教授の結論はこうだ。
<注意すべきは、一時の嫉妬を恐れるあまり、自分が国を愛することでは人後に落ちず金銭の誘惑にも負けない人間だと、威厳や赤心(真心、誠意)を示すのを忘れてしまうことである。
時には勇気をもっておのれを語らなくてはならない。そこには、ごまかしや空虚さや名誉欲がつけいる余地はない。反対に、高潔な精神やすぐれた性格が見事に示されるだろう>
おのれを語る勇気、言うべくしてやさしいことではない。安倍と小沢のどちらがより多く勇気を持ち合わせているか。あるいは、有権者がどちらだと感じるか。
語らないことには四つに組めない。語る量ではなく中身である。2人ともまだ言葉が不足しているように思われる。(敬称略)=毎週土曜日に掲載
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岩見隆夫のホームページはhttp://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/iwami/kinbun/
毎日新聞 2007年1月6日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/iwami/kinbun/
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