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何を変え 何を守るか*2*格差と貧困への対策急務(1月3日)―「北海道新聞」社説
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投稿者 天木ファン 日時 2007 年 1 月 03 日 13:08:50: 2nLReFHhGZ7P6
 

何を変え 何を守るか*2*格差と貧困への対策急務(1月3日)

 嫌な言葉だが「勝ち組・負け組」、「下流社会」が流行語となり、すっかり定着してしまった。
 格差は小泉純一郎前首相が進めた構造改革の「負の遺産」としてさまざまな分野で拡大した。安倍晋三政権になってもその傾向は変わらず、むしろ深刻になっている。

 かつて「マル金(金持ち)」「マルビ(貧乏)」という言葉がはやったことがある。一九八○年代半ば、日本経済はバブルの絶頂期に向かって突き進んでいた。

 そのころから国民の意識は変化していたのだろう。だが、当時と大きく違うのは社会のひずみが若者に集中してあらわれていることだ。

 広がる格差とどう向き合い、どう是正すればいいのか。日本社会のあり方が問われている。

*現実を直視することから

 東京都内のネットカフェは、フリーターが寝泊まりする場となっているところも少なくない。

 パソコンとリクライニングシートがあるだけの狭い部屋だが、深夜に入店すれば朝まで千円ちょっとで過ごせる。

 住む家のない若者らが昼間は派遣やパートで働き、夜になると戻ってくる。常連も多い。

 ある民間研究機関の推計によると、フリーターの平均年収は百六万円にすぎない。

 いくら働いても生活保護水準に満たない収入しか得られない。残酷な言葉だが「ワーキングプア」(働く貧困層)だ。これでは独立して生活するのは難しいだろう。

 格差問題はいまや高所得者と低所得者の階層分化ではすまず、貧困問題としてとらえなければならないところまできている。

 この現実をしっかりと直視することが、格差是正に向けた議論の出発点になるのではないか。

 フリーターの多くは、九○年代後半の就職氷河期に定職に就けなかった人たちだ。

 能力が十分あるのに正規雇用されなかった人もいて、企業にとっては都合のいいときだけ使える雇用の緩衝材となっている。

 戦後最長といわれる景気拡大で、一部の大学では「バブル期並み」の売り手市場となっている。だが、企業は新卒の採用には意欲的でも、フリーターなどの正社員化には極めて消極的だ。

 四百万人ともいわれるフリーターがこのまま四十代、五十代を迎えたら、日本はいったいどんな社会になるのだろう。

 大企業はここ数年、空前の好決算に沸いている。企業の社会的責任として、雇用システムの見直しを真剣に検討すべきときだ。

*問われるべき政府の姿勢

 「格差が出ることは悪いことではない」。小泉前首相は国会で、格差を容認する発言を繰り返した。経済効率を高めるために所得格差の拡大はやむを得ない、という信念からだったのだろう。

 ライブドア前社長の堀江貴文被告も同じようなことをいっている。「それで将来格差がひらいたっていいじゃありませんか。みんなエリートに食べさせてもらえば」。その著書「儲(もう)け方入門」での発言だ。

 ニートやフリーターが社会問題となる一方で、東京・六本木の高層ビルにオフィスを構えた堀江被告らはヒルズ族と呼ばれ、派手な生活が一部でもてはやされた。

 小泉政権ではこうした人たちが持ち上げられ、格差を助長するような政策がとられてきた。

 確かに経済の活性化には一定の競争は必要だが、だからといって格差拡大を放置していいということにはならない。社会から貧困をなくすことは政府の役割のはずだ。

 安倍首相になって所信表明演説で「格差を感じる人に光を当てるのが政治の役割だ」と述べるなど、方向転換したかにみえた。

 だが、新年度予算案に盛り込まれた再チャレンジ支援策は、相談窓口の増設など既存の政策の焼き直しばかりだ。そこには格差問題を真正面から受け止めようという姿勢はまったくみられない。

*「機会の平等」をどう確保

 昨年末の政府税制調査会総会でのことだ。

 一部の委員から格差問題への対応が提起されたが、結局は成長重視の声にかき消され、答申にはほとんど反映されなかった。

 税を通じた高所得者から低所得者への所得再配分が、格差是正への有効な手段であることは間違いない。

 ところが日本ではこの二十年間で所得税の最高税率が大幅に引き下げられ、高所得者が優遇される一方で低所得者には不利な税制に移行している。再配分機能は低下しており、見直しは必要だ。

 政府の役割でもう一つ重要なのは「機会の平等」の確保だ。

 高所得者の子供しかいい教育を受けられないのでは、格差は固定化してしまう。努力や能力次第で進学できるよう、公立学校や奨学金制度の充実が急がれる。

 格差を完全になくすことは難しいだろう。だが、低所得でも安心して働き暮らせるような社会をつくることは、緊急の課題だ。

 政府は自らに課せられた責任の重さを自覚してほしい。

http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032

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