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あなたの暮らし:クローズアップ’06 生活保護費削減 母子加算廃止、弱者を直撃
政府は年末の07年度予算案編成で、社会保障費削減の主な手段に生活保護を選んだ。保護費のうち、子育てをしているひとり親に一律支給している母子加算を08年度末までで廃止するのが柱で、反対の声が上がりにくい分野を標的にしたといえる。生活保護は「最後のよりどころ」のはずなのに、しわ寄せを受けるのは最も社会的に弱い人たちだ。【玉木達也、吉田啓志】
◆「国は実態よく見て」
◇長男は高校中退、湯船・クーラー我慢
母子加算(最高月額2万3260円)は、18歳以下の子を持つひとり親に支給する生活保護費の一種で、受給者は約9万6200世帯。政府は20日、15歳以下の子を持つ親に上乗せしている母子加算を来年4月から毎年3分の1ずつ減らし、08年度末までで廃止する方針を打ち出した。
一方、16〜18歳の子を持つ親への支給は05年4月から減額が始まっており、06年度いっぱいで打ち切る。続けて15歳以下の減額をスタートさせ、08年度末をもって母子加算全廃というのが政府の計画。そのうち05年4月からの先行減額に苦しんでいるのが、埼玉県南部に住む田村隆子さん(47)=仮名=のケースだ。
5年前、3人の子どもを抱えて離婚した田村さんは、生活保護を申請して受給を始めた。いまは長女(23)が独立し、築20年以上、2DKの古アパート1階に、板金工の長男(18)、高校1年の二女(16)と暮らす。
家計は長男の収入と児童扶養手当、生活保護費でまかなう。田村さんは8年前、自宅の階段から落ち骨盤を骨折した。その影響で体調が悪化し、働くことが難しい。腕から背中全体に激痛が走って眠れず、睡眠薬を服用することもある。
生活保護費は、生活、教育、住宅など8種の扶助があり、それぞれ基準額が決まっている。必要に応じて各扶助を組み合わせる仕組みで、それを合計したものが生活保護基準額となる。そこから収入を差し引いた額が、生活保護費として支給される。
田村さん世帯の生活保護基準額は約26万円。長男の収入などを差し引いた保護費は約7万8000円で、うち母子加算額は7750円。05年3月には2万3260円あったのが1万5510円減った。それが来年4月にはゼロになる。
家計を支えようと長男は高校1年で中退し、工賃全額を田村さんに渡すようになった。二女は高校進学後「大学に行きたい」と漏らした。それでも、生活保護を受けながら子どもを大学にやるのは難しい。無力感にさいなまれながらも、娘には「お母さんには、あなたを大学に行かせる力はない。どうしても行きたいなら自分の力で」と伝えざるを得なかった。二女は部活動をやめ、アルバイトを始めた。
「もっと生活費を減らさないと」。そんな思いから今年の夏、家族の中に「どんなに暑くともクーラーをつけない」という暗黙のルールができた。しかし、あまりの暑さに田村さんは体調を崩し3日間寝込んだ。炎天下の仕事から帰ってくる長男のことも考え、午後6時以降はクーラーをつけることにはしたが、風呂に湯は張らず、短時間のシャワーで済ませる習慣に変わりはない。
◆受給世帯100万突破
◇抑制さらに拡大、持ち家の高齢者も停止へ−−厚労省
景気回復を横目に、急速に進む高齢化、所得格差の開きを反映し、生活保護受給世帯は13年連続で増えている。05年度の月平均は104万1508世帯で、初めて100万世帯を突破した。給付費もこの10年で1・7倍の2兆5000億円に達した。厚生労働省は、70歳以上の人に一律1万7000円前後を支給していた老齢加算を04年度から段階的に廃止した。これを皮切りに給付をじわじわ減らしている。
母子加算の廃止もその一環だ。加算を受ける世帯の平均的保護費は月約14万円。働きながら1人で子育てをしている非保護世帯の平均支出は12万円程度で、不公平を解消する必要がある−−というのが厚労省の言い分。同省は加算の廃止に代わり、働くひとり親へ保育費などの支援を始めるものの、水準は母子加算以下に抑える。
厚労省が生活保護費の一層の削減へと踏み出したきっかけは、今年6月に閣議決定された経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針06)だ。方針には、07〜11年度で1・1兆円の社会保障費抑制を目指す考えが盛り込まれた。
07年度一般会計の社会保障費は約21兆円。他の予算が軒並み前年度を下回る中、常に5000億〜6000億円ずつ伸びている。財務省は「5年で1・1兆円削減」の目標を達成すべく、厚労省に医療や介護費の削減を迫った。しかし厚生族議員らの抵抗で実現のメドは立たず、急きょ差し出されたのが、自民党の抵抗が小さい生活保護だった。
厚労省は07年度、母子加算の縮小に加え、持ち家に住む65歳以上の生活保護受給者への支給を停止し、自宅を担保に生活資金を貸し付ける「リバースモーゲージ」制度も導入する。これらによって07年度は生活保護費を420億円圧縮する。
これで終わるわけではない。08年度以降、生活保護制度の中心である医療扶助や生活扶助などの削減に踏み込もうというのが厚労省の意向だ。07年度はむしろ、今後もくろむ大幅給付抑制への序章となりかねない。
真に援助を必要としている人が救済の網から漏れていく。そう思うと、受給している自分がモノを言えば「甘えるな」と批判されるのでは−−そんな不安が田村さんの頭をかすめる。それでも、訴えずにはいられない。「生活保護は最後のセーフティーネット。国は実態をよく見て、削減を決める前に最低限の生活を維持できるかをよく考えてほしい」
毎日新聞 2006年12月24日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/archive/news/2006/12/24/20061224ddm003040085000c.html
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