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http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-December/010820.html から転載。
[AML 11234] 反戦の視点・その44
加賀谷いそみ QZF01055 at nifty.ne.jp
2006年 12月 30日 (土) 22:15:03 JST
反戦の視点・その44
この国を米国との共同戦争に向かわせない努力をいっそう強化しよう!!
井上澄夫(市民の意見30の会・東京)
2006年12月30日
フセイン処刑の目的について
イラクのサッダーム・フセイン元大統領が12月30日、処刑された。判決
確定からわずか4日後のことだ。誰がフセインを殺させたのか。ブッシュ米大
統領である。
2003年3月、イラク侵略開始にあたってブッシュ大統領が掲げた、イラ
クによる「大量破壊兵器の保有」と「テロリスト支援」という大義はいずれも
真っ赤なウソだった。そこでひねり出された新たな大義は、「イラク攻撃でフ
セインの独裁を打倒した」というものだった。結果を大義(目的)にすり替え
る薄汚い手法だが、先の米上下院中間選挙は米国内で、もうそういう理屈が通
用しないことを証明した。
現在のイラクの内戦は明らかに米・英の侵略がもたらしたのだが、ブッシュ
は、フセインはイラクの新しい民主主義を妨げる要因であり、イラクの混乱を
招いた責任があるとして、フセインを急いで消そうとした。処刑直後ブッシュ
が発した歓迎声明は、処刑は「イラクの民主化において重要な節目となる」と
のべている。独裁者はいなくなった、米軍がイラク軍に権限を引き継ぐことで
「混乱」は終結し、イラクは民主主義を実現する、というわけだ。
「フセイン裁判」がおよそ裁判の名に値しない政治芝居だったことは疑う余
地がない。だがブッシュがフセインの処刑を急いだのは、独裁の終焉を印象づ
けるためだけではない。フセインが大統領に就任し権力を掌握したのは197
9年だが、翌年始まったイラン・イラク戦争(1980〜1988)は、米政
府がフセインをそそのかしてやらせた戦争だった。1979年に起きたイラン
・イスラム革命が自国に輸出されることを恐れるサウジアラビアやクウェート
などのアラブ諸国が、米政府にイランを叩くことを求めた。そこで米政府はフ
セインに全面的な支援を約束してイラクを攻撃させたのである。米政府はイラ
クに武器を提供し財政支援を続けた。イラク軍による化学兵器の使用さえ黙認
した。
イラクが中東の軍事大国になったのは米政府の支援のおかげである。独裁者
フセインの強権を育てたのは、実は米政府自身なのだ。しかしイラン・イラク
戦争が終結すると、強力になりすぎたフセイン政権が米政府の中東政策にとっ
て邪魔になり、イラク軍のクウェート侵略を機に父ブッシュが湾岸戦争を起こ
したが、フセイン体制はつぶれなかった。そこで息子ブッシュがイラクの石油
資源を独占するという目的を隠して(今や世界が周知していることだが)、ウ
ソで固められた大義を掲げイラクを侵略した。だから息子ブッシュにはフセイ
ンの処刑を急ぐ理由があった。フセインは米政府に都合の悪い〈すべて〉を知
っていた。息子ブッシュは、フセインの口を早く封じて自らの口を拭いたかっ
たのである。
2006年12月28日、イラク駐留米軍の死者数は開戦以来、2988人
になった。同月中の死者数はすでに100人である(AP通信)。フセイン処
刑でそういう事実から米国民の目をそらせたいという思惑もブッシュにはあっ
ただろう。だが現ブッシュ大統領には、もはや「出口戦略」などない。あるの
は、石油利権をあきらめてイラクから逃げ出す道だけである。
しかしそういうブッシュ米政権になおも従属し続けようというのが、「闘う
政治家」でありたいと公言する安倍晋三首相である。政府は12月28日、イ
ラク復興支援特措法の2007年7月31日までの期限を延長する改正案を来
年の通常国会に提出する方針を固めた(12・29付『読売新聞』)。航空自
衛隊による米軍支援をさらに継続しようというのだ。
日米同盟の地球的規模化について
先の臨時国会で「改正」教育基本法と防衛庁「省」格上げ関連法案が成立さ
せられた。
安倍首相のいう「戦後レジームからの脱却」が始まったのだ。(それについて
は、本稿の末尾に添付する「市民の意見30の会・東京」の抗議声明を参考に
してほしい。)
2007年1月9日、防衛庁は防衛省になる。エージェンシー(庁)からミ
ニストリー(省)になるのである。防衛大臣は閣議の召集を要求でき、予算を
財務相に要求し執行できるようになる。これだけでも、自衛隊は戦前の軍部に
近い存在になる。だが今回「改正」されたのは、防衛庁設置法だけではない。
それと連動して自衛隊法も「改正」され、これまで「付随的な任務」とされて
きたPKO(国連平和維持活動)協力法に基づく海外派兵、テロ対策特措法と
イラク復興支援特措法に基づく海外派兵、さらに周辺事態法による米軍の「後
方支援」までが「本来任務」にされた。直接侵略および間接侵略への対処、す
なわち防衛出動と治安出動に並んで、海外派兵が「本務」とされたのである。
海外派兵は自衛隊法の第8章・雑則から同法第3条の「自衛隊の任務」に移さ
れた。
2003年5月22日〜23日に行なわれたブッシュ大統領と小泉首相の会
談で小泉首相は「世界の中の日米同盟」という言葉を用いて、日米同盟の新た
な強化を表現した。そしてこの言葉は、本年(2006年)6月29日に行な
われたブッシュ・小泉会談でまとめられた共同文書「新世紀の日米同盟」で文
書化された。「世界の中の日米同盟」は英語では「US―ジャパン・グローバ
ル・アライアンス」である。つまり日米同盟は単に「世界の中の同盟」という
より、グローバル・アライアンス、「地球的規模の同盟」に脱皮させられたの
である。(末尾の注参照)
今回の防衛庁設置法と自衛隊法の「改正」は、「地球的規模の日米同盟」へ
の転換に対応する動きであり、軍事の現場でそれを推進しているのがいわゆる
「米軍再編」(正確にいえば「米日両軍それぞれの再編を伴う軍事一体化」)
であることは言うまでもない。
PKO協力法に基づく海外派兵を〈助走〉段階とすれば、テロ対策特措法や
イラク復興支援特措法に基づく派兵は〈離陸〉に当たる。しかしこれからは、
自衛隊は〈離陸〉から〈高空に向けての飛翔〉のためにエンジンを吹かすこと
になるといわねばならない。むろん、あってはならないことだが。
本年最後の「反戦の視点」として、読者に以下の記事に注目するよう呼びか
けたい。
〈日米両政府は12月22日、それぞれが把握している世界各国の地形や水
路などの地理情報を提供し合うための「地理空間情報の協力に関する書簡」を
交換した。〉
これは本年12月23日付『毎日新聞』の記事である。同記事には「中国や
朝鮮半島周辺の海図情報なども含まれ、日米防衛協力強化の一環となる措置と
みられる。」とあり、さらに「日米共同でのデータ収集も行う方針という」と
ある。
小さな記事だが、意味するところは深刻で重大である。日米両政府は、「地
球的規模の日米同盟」を機能させること、すなわち米日共同戦争を世界に広げ
る準備に着手したのである。
2007年は戦争と9条改憲を阻止する努力をいっそう強化することを訴え
たい。
注 この件については、松尾高志氏の「小泉・ブッシュ会談が示したもの―日
米同盟の変革(アライアンス・トランスフォーメーション)の宣言」(『平和
運動』2006・11月号)に示唆を受けた。
【参考資料】
第165回臨時国会での「改正」教育基本法と防衛庁「省」格上げ関連法の成
立強行について、安倍政権に強く抗議し、内閣総辞職を求める声明
市民の意見30の会・東京
2006年12月21日
第165回臨時国会の参院本会議で12月15日、「改正」教育基本法と防
衛庁「省」格上げ関連法が成立しました。前者は与党の賛成多数で、後者は自
民、民主、公明などの賛成で可決、成立しました。
私たちはこの事態を時代を画する暴挙と受け止め、強い怒りをこめて、安倍
内閣に抗議します。
安倍首相が今臨時国会の最優先課題とした教育基本法「改正」は、公権力に
よる教育への介入を大幅に認め、「公共の精神を尊ぶ」ことを強調して教育に
よる国民統制をめざすものです。それは、現行教育基本法の前文から、「われ
らは、さきに、日本国憲法を確定し」、それに基づく「理想の実現」を「根本
において教育の力にまつ」という現憲法と教育基本法との関係を明示する規定
を削除し、「教育の目標」に日本の「伝統と文化をはぐくんできた我が国と郷
土を愛する態度を養う」と、愛国心を書き入れて強調したことに露骨に表われ
ています。子どもたちに愛国心を植え込み、個人ではなく「公共の精神」を尊
重させることは、国家に尽くす人材を養成することです。「国のため」なら命
を投げ出す覚悟のある国民を無数に生み出すことに他なりません。
教育行政についても現行法の「国民全体に対し直接に責任を負つて行われる」
という規定を「国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公
正かつ適正に行われねばならない」に入れ替え、教育の主権者が国民であるこ
とを否定しました。また今回の「改正」は、いわゆる「規正緩和(撤廃)」を
教育現場に持ち込む安倍首相の「教育の構造改革」を反映し、能力主義による
選別、経済格差による機会不均等、思想・信条の自由の抑圧、国籍による差別、
男女平等の後退など、すでに進行している「改革」をより強力に後押しするも
のです。改正法が「基本法」として、学校教育の民営化や教育への経営効率や
競争原理の導入に道を拓くことを深く憂慮せざるを得ません。
教育基本法とともに成立した防衛庁「省」格上げ関連法は、防衛庁・自衛隊
が戦前の軍部に近い姿に脱皮することを許しました。防衛省は、防衛大臣が閣
議を開くことを求め、軍事予算の請求・執行を内閣府を通さず直接行なう権限
を手に入れました。トップの防衛大臣が文民であることは変わりませんが、新
たな防衛省体制で軍人である「制服組」が大きな力を発揮するようになること
は明らかです。さらに防衛庁設置法「改正」と共になされた自衛隊法「改正」
では、これまでは「付随的な任務」とされてきた国連平和維持活動、テロ対策
特措法とイラク復興支援特措法に基づく派兵、そして周辺事態法に基づく後方
支援などが「本来任務」とされました。これは、米日両軍それぞれの再編を伴
う軍事一体化をベースとする「世界の中の日米同盟」(地球的規模の同盟)に
向けた動きであり、何か起きる度に特別措置法を作って対応するのではない海
外派兵恒久法を成立させることを目的としていることは明らかです。
上記二つの動きは、この国を「戦争をする国」「戦争ができる国」にするた
めの高いハードルを一気に踏み越えることでした。日本の戦争国家化は、「国
のため」に死ねる国民教育の制度化と、常備軍(自衛隊)を支える機構整備の
面で大きく前進させられました。この事態が安倍首相の言う「戦後レジーム
(体制)からの船出(脱却)」であることは言うまでもありません。
しかし私たちは、愛国心植え込み教育を許さない活動を教育現場の人びとと
共に進めます。保護者の立場でも、戦争を支持したり、戦争に協力したり、戦
争に参加することを拒否する子どもたちを育てる努力を続けます。国の意思で
はなく、個人(自分)の良心に従って生きていく子どもたちを育てようと、あ
らためて決意します。
あれこれの脅威を煽り立てて軍事予算を増大させたり、防衛省が治安出動を
ちらつかせて戦争に反対する人びとを脅したり、防衛省が突出して民主主義体
制を踏みにじることを許さないため、日々の反戦の活動を強化します。
来年1月末召集予定の通常国会で改憲のための国民投票法案が成立すれば、
自衛隊を「自衛軍」とし集団的自衛権の行使を無制限に許す9条改憲が急速に
近づきます。そんなことはどうあっても阻まねばなりません。
安倍政権の支持率が急速に低下する中、国会であえて強行された暴挙をアジ
ア近隣諸国の人びとが息をひそめて見守っていることを私たちは痛烈に自覚し、
噴出する安倍政権への怒りをエネルギーに変えて、いささかもひるむことなく、
9条改憲を許さない反戦の活動を強めることを宣言します。そこに立って安倍
政権に内閣総辞職を強く要求します。
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