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暮れも押し詰まると、掛け売りの代金の回収に「掛け取り」が走り回り、俳句の季語にもなっているが、この一年三カ月なかった死刑執行が、二十五日、東京、大阪、広島の拘置所で一挙四件行われた。まるで命の掛け取りだ
▼真宗大谷派の門徒で、死刑執行命令書の署名を拒否していた杉浦正健前法相が九月に退任。安倍新内閣の長勢甚遠法相が、年内執行にこだわる法務省の強い要請で、国会閉会後と、天皇誕生日後のタイミングを狙って署名したようだ
▼杉浦前法相の署名拒否は、かつて一九九〇年から一年、署名拒否を続けた左藤恵氏以来で、犯罪被害者らの批判は強かったが、死刑制度廃止論者からは制度への問題提起になると歓迎されていた。これで見直しの機運は一気に遠のいた
▼最近の厳罰化を求める世論を反映してか、二〇〇四年以降、死刑確定者数は年間十人以上となり、今年は二十人を超えた。未執行の確定死刑囚は百人に迫って制度の矛盾が露呈していた。法務省は、時の法相の信条によって執行されたりされなかったりでは国民の不信を招き、制度の根幹が揺らぐと「年間執行ゼロ」だけは避けたかったらしい
▼世界の潮流は廃止に向かっており、先進国で死刑制度を残すのは日本と米国だけなのに、増え続ける確定死刑囚を、執行で減らせば済む問題ではないのは明らかだ
▼日弁連によれば欧州の死刑廃止国でその後凶悪犯罪が増えたとのデータはない。統計的に殺人は増えていないのに死刑や無期受刑者は増えるという矯正の矛盾だけが越年する。
http://www.tokyo-np.co.jp/hissen/index.shtml
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