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2006/12/26(Tue)
平和に貢献する日本外交ではなかったのか(天木)
平和に貢献する日本外交ではなかったのか
天木直人
日本外交の目指すところは一体何だったのか。それを根本的に疑わせる記事を最近の新聞に見つけた。
一つは12月18日付毎日新聞夕刊の、「クラスター爆弾禁止」に関する国際会議への日本不参加である。主催国のノルウェー政府がクラスター爆弾禁止に積極的な国や被害国「有志」を集めて35カ国と市民団体に招待状を送ったらしい。しかしその招待国の中に、クラスター爆弾禁止に消極的な日本や、クラスター爆弾を生産・使用している米・中・露、イスラエルは含まれていないという。
招待されるまでもなく日本こそ率先してこのような会議を呼びかけるべきではないのか。百歩ゆずって自ら主催国にならないまでも、ノルウェーが呼びかけたこの会議へ参加を、「招待されていない」からといって参加しないのであれば「平和に貢献する日本」は嘘だという事になる。
有志国や非政府組織の主導で条約づくりが進められた例として96年にカナダと市民団体がイニシアチブを取った対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)がある。日本はこの時も最初は消極的だった。地雷を製造している国内業者(天下り先)の利益を損ねるとする防衛庁の反対があったからだ。これを知った小渕首相(当時)の一声で方向転換し、あわてて条約に署名した経緯がある。これが小渕首相の手柄であると語り継がれている。官僚は態度を豹変し、恥知らずにも今度はこれを「平和に貢献する日本」の宣伝に使ったのだ。
それならば問う。クラスター爆弾は地雷以上に非人道的な武器だ。米国・イスラエルがイラクやレバノンで使ったクラスター爆弾を、日本はなぜ禁止すべきだと世界に働きかけないのか。
もう一つの記事は米国とインドの原子力協力法が成立したという12月19日の日経新聞の記事だ。それによるとブッシュ大統領は、核拡散防止条約に未加盟のインド、従って国際原子力機関の査察下にないインドに対し、米国企業による原子力関連物資の輸出を可能にする法案(米インド平和原子力協力法案)に署名するという。
問題はこれに対する日本政府の対応である。米国がインドに輸出を始める為には日本も参加している原子力供給グループのルール改正が必要である。被爆国の日本はルール改正に反対であるべきだ。それはそうだろう。核不拡散こそ日本が一貫して言い続けてきた国是なのだから。
しかし日本は米国の手前反対とは言えない。従っていまだに態度を留保している。しかしブッシュ大統領が協力法案に署名してしまえば、早晩態度を明らかにしなければならない。そして日本がルール改正に反対して米国企業の対インド核物資の輸出を妨げることなどできる訳はない。またしても日本の非核政策が後退するのだ。
三番目の記事は12月19日付の朝日新聞一面にある特集「日本と国連」に書かれているPKO(国連平和維持活動)に関する日本の対応だ。
防衛省の格上げを決めた一連の自衛隊法改正において、自衛隊の海外派遣が補助的業務から本来業務に変更された。これは本来であれば国連の平和維持活動にこれからはもっと積極的に貢献するという宣言である。ところが日本政府の念頭にあるのはPKO活動の強化ではなく米国の戦争への協力なのである。
朝日新聞の記事は、シリア、スーダン、カンボジア、東テイモール、レバノンなどのPKO活動に対するわが国の貢献が皆無ないしは先細りとなっている事をいみじくも指摘している。そしてその理由が、イラクへの自衛隊派遣やインド洋での給油など米国の「対テロ戦争」への協力が優先された為だと喝破している。中国が犠牲者を出しながらも中東やアフリカへ軍人や警官を送ってPKOの主要な要員提供国となりつつある事とあまりにも対照的なのだ。
この三つの新聞記事が意味するところは何か。それは日本の平和外交は米国追従外交の為に最後は捨てさられてしまうという否定できない現実である。屈辱的な対米従属外交は日本の外務官僚のやる気をその根底のところで崩壊させてきた。張り切って対米従属を繰り返しているのは出世した、あるいは出世を目の前にしている、一部の幹部だけである。彼らは「対米従属」という卑屈な外交を「日米同盟重視」という言葉で欺いているのである。その他大勢の外務官僚たちは、そんな外交に疑問を持ちつつ黙って従うだけである。そんな外務省に国民を守る力強い外交が出来るはずはない。
http://www.tembosha.com/kd_diary/kd_diary.cgi?20061226
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