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米軍再編「別枠」は祝儀の香り?
政治部 山田宏逸(12月25日)
2007年度予算の財務省原案が各省庁に内示された。「4兆7785億円、今年度比0.3%減」「4兆7983億円、今年度比0.3%減」。このうち、防衛関係費は場所の違いによって2種類の数字が存在する。約200億円の差は、日米特別行動委員会(SACO)関係費と新しく発生した在日米軍再編経費(計72億円)を含めるかどうか。いわゆる「別枠化」の問題と結びつく。
「皆様のご尽力もあり、再編経費は別枠となりました。本当に助かりました」。20日夕、内示を受けた久間章生防衛庁長官は自民党の国防関係合同部会で頭を下げた。出席議員は久間氏を拍手で迎え、あちこちから「よくやった」との声が上がった。当然ながら、防衛庁が部会で示した数字は2種類の数字のうち前者。「米軍再編経費は除く」との注意書きを丁寧に添えていた。
財務省には、米軍再編の経費を「別枠」として扱う気など毛頭ない。主計局は「防衛庁が勝手に便宜上使っているだけだ」と「別枠」という用語自体が非公式なものだと強調する。この問題が、07年度予算だけで決着を見ていないことは明らかだ。
そもそも、この「別枠」。特に財源が別に用意されている訳でもなければ、予算の所管官庁が防衛庁以外になる訳でもない。防衛庁にとっては、米軍再編問題も一緒に議論することで、再編に関する米国との交渉権を確保しようとしている思惑さえある。政府関係者は「自衛隊の人員や装備の増減を見極めやすくなる指標でしかない」と言い切る。一般的な防衛費と切り離して説明できたことで、自民党国防族のメンツは一応保った。
「まあ、今回はご祝儀みたいなものですから」。防衛庁幹部の耳には、財務省との折衝の去り際に告げられた、負け惜しみとも本音ともとれる一言が今も残る。
確かに来年度予算は、北朝鮮のミサイル発射や核実験といった半ば不測の事態を受けたもの。さらに1月9日に発足する「防衛省」にとって初めての予算。米軍再編を巡っても、5月に日米両政府で計画に合意したばかり。初年度の予算計上が小規模にとどまったことで、「別枠」を巡る折衝がそれほど脚光を浴びることなく、玉虫色決着をみた面は否定できない。再編経費の内訳を見ても、再編交付金(50億円)、米軍普天間基地の移設の調査費(10億円)、沖縄駐留海兵隊のグアムへの移転に関する調査費(1億円)といずれも小粒にとどまる。
しかし、米軍再編は「総額3兆円」との試算もある巨額のプロジェクトだということは忘れてはいけない。完了目標の2014年までまだ時間があるとはいえ、本格的に工事を進めようとすれば、自動的に経費は膨らんでいく。一方で、政府が7月に閣議決定した「骨太の方針」では、防衛関係費も向こう5年間は「前年度以下」に抑えると明記。2つの目標に折り合いをつけるのは至難の業だ。
「別枠」の理屈の通じない財務省が、今後の米軍再編予算の膨張を見据え、陸海空各自衛隊の装備購入計画を定めた中期防衛力整備計画(05―09年度、総額24兆2400億円)の見直しに、圧力を強めてくるのは間違いない。過去の例に従えば、数千億円規模の減額が確実視されている。「防衛予算本体が無傷でいられる保証はどこにもない」。内情を把握し始めた防衛庁・自衛隊は代償の大きさを感じ始めている。
こうした状況下にあって、防衛庁は予算編成を通じて、もう1つだけ仕掛けを施した。今年度の補正予算に目をつけ、同庁として過去最大の711億円を滑り込ませたのだ。今年は米軍再編経費は含めてはいないが、膨張する再編経費に補正枠を活用していけば、防衛費の「傷口」は自然と浅くなる。「今後の布石をうてた」と会計担当者。本当の「別枠」は補正予算枠にあり。そう言いたげだ。
ただ、税収の増加分を財源とする補正予算は、景気動向に左右されやすい性質を持つ。さらに予算計上の条件となる「緊急性を伴うものどうか」を巡っても、関係自治体との調整の進ちょく度合いによることは間違いない。足元に目を向ければ、米軍普天間基地の移設を巡っては、沖縄県側が移設に難色を示す実情に依然変わりない。自治体の説得と並行した「3兆円問題」の解決。厳しい財政事情のなかで、発足する「防衛省」は深い悩みを抱えたままの船出になる。
http://www.nikkei.co.jp/seiji/column.html
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