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[希望のトポス]美しい『人間狼』の時代を乗り越えるための論考
http://www.asyura2.com/07/senkyo29/msg/293.html
投稿者 鷹眼乃見物 日時 2006 年 12 月 23 日 20:16:53: YqqS.BdzuYk56
 

■[希望のトポス]美しい『人間狼』の時代を乗り越えるための論考

<注>お手数ですが、画像は下記URLでご覧ください。
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20061223

【画像の説明】

『光のページェント』と年末の仙台市内の夜景を撮りましたので、年末を飾るに相応しい若干の他の画像と併せて、この記事のトップへアップしておきます。

[世界の美しい景観、アラカルト]

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アテネ、アゴラ(古代ギリシア市民の集会所)の列柱
(presented by Photo Library of University of Richmond Department of Classical Studies、http://oncampus.richmond.edu/academics/classics/photos/index.html

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ギリシア、サントリーニの風景
(presented by Photo Library of University of Richmond Department of Classical Studies、http://oncampus.richmond.edu/academics/classics/photos/index.html

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ギリシア、サントリーニの夕陽
(presented by Photo Library of University of Richmond Department of Classical Studies、http://oncampus.richmond.edu/academics/classics/photos/index.html

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Tree、Sunrise、Nothumberland、UK
(presented by Free Photo com.、http://www.freefoto.com/browse.jsp?id=15-19-1l

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Castillo de Loarre、Spain(アラゴン地方に残るローマ時代の古城)
(presented by Castillo de Loarre、http://www.geocities.jp/trv524/spot/aragpn-huesca-loare.htm

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Candle
(presented by bigfoto com.、http://www.bigfoto.com/themes/closeup/

[仙台『光のページェント』の風景、アラカルト]

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・・・・・以下、本論・・・・・

9月に急逝する、その日の朝まで朱を入れていたという阿部謹也氏の遺書(ともいうべき著書)『近代化と日本-私が見たヨーロッパと日本』(朝日新書)の中に、次のような件(くだり)があります。・・・中世(中期以降)の人々が人間狼を恐れたのは彼が犯罪者であるためではなく、人間には制御し得ない死の領域(宇宙に満ちているエントロピーの海)だったからであり、それゆえに人間狼をめぐる様々な伝承が形成されていった。W.E.ポイケルト(Will-Erich Peukert/1819-1969/ドイツの民族・歴史学者)が編集した『ニーダーザクセン伝説集』に多数収録されているように、普段はごく普通の人間がある日、突然、人間狼であることが解り、彼は超人的な行為をした後に姿を消すという話がある。・・・

阿部氏によると、「人間狼」とは我われのような日常生活を送る人々の目には届かない“異界との接点”(=エントロピーの海、つまり混沌で捉え所がない死の世界であり、果てしない宇宙への入り口でもある)で仕事をすると考えられていた人々へ向けられた、ヨーロッパ中世中期以降における「差別・賤視の呼称」のことです。およそ古代から中世頃までの人々の宇宙観の特徴は、ニュートン・デカルト以降の近現代人が持つ均質的・持続的・安定的な空間とは異なっており、我われが住む日常世界は、このような意味での“異界との接点”に取り囲まれているという鋭い感覚(未知の世界に対する畏敬の念)を持つことでした。そして、いずれは死ぬ運命にある我われ自身の肉体も、このような果てしない異界と段階的に繋がっているのだという理解が当たり前でした。そして、現代においても、そのように鋭い感覚と畏怖の念を持ち続けているのが、他でもない幼い子供たちです。このような視点からすると、現代日本の子供たちの中で“サベツやイジメの嵐”が吹き荒れている問題が一筋縄では解けないことが分かります。人間性と宇宙への畏敬の念を忘れ去り、ゴーマン(現代の日本社会を席巻する、歴史を忘れた軽薄なゴーマニズム?)の塊となった政権・連立与党の政治権力者たちが、自らの詐欺的なヤラセ演出で過半の国民を騙し、力づく(小泉・前首相が憲法違反を犯すまでして不当に手に入れた多数の議席数)で無理やり成立させた「教育基本法改正」などでは、到底、この問題には歯が立たないと思います。

ともかくも、このような訳でヨーロッパの古代から中世初期頃までの時代に“異界との接点”での仕事をする人々は、おおむね聖なる職業として崇められていました。ところが、ある意味で論理的な「キリストの受肉」(キリスト教)が普及することによって、人間が自分の肉体を制御し得る宗教があることを理解できた(=近代科学意識の芽生え)ため、今まではひたすら畏れの対象であった“異界の未知・エントロピーの海”(悪)と“神の愛”(善)の違いが多くの人々によって意識されるようになります。また、このような意識の変化の後押しには、12〜13世紀頃に貨幣・交易経済(グローバリズム)活動が活発化し、都市文化(=公共空間の発見)が発達してきたことも貢献しているようです。ともかくも、このような背景の中で次第に“異界”(悪)に接する、言い換えれば、この世とあの世の境界で仕事に携わる職業が蔑視されるようになったのです。阿部氏によると、そのようなプロセスで蔑視・差別・賤視されるようになった職業が刑吏・墓堀人夫・煙突掃除人などであり、「人間狼」は殺人などの重罪を犯して都市や村から森の中へ追放された人間の呼称であるとともに、このような中世〜近現代への過渡期の時代に蔑視・差別・賤視の対象とされた“恐れを知らぬ人間たち”へ向けられる共通観念でもあったようです。

現代の我われに必要な根本認識は、どれほどウェブが進化し、ネットワークとユビキタス社会が深化しても、このような意味での人間性の根本には変わりがないことを忘れてはならぬということです。言い換えれば、我われの周囲に広がる“人間には制御し得ない死の領域”を常に忘れるべきではない(=メメント・モリ)ということです。特に、「進化しつつあるウエブ・ネットワーク」に過度に頼る日常生活は危険だと思います。古代〜中世人の世界観と近現代人の世界観が異なるとは言っても、いずれ死ぬべき運命にある人間性の根本的あり方には変わりがないのです。そして、重要なことは“人間社会というものは約束事としての真実(リアリズム)を共有”してこそ存続できるという厳然たる事実を直視することです。これがリアリズムの意味です。

もっと言えば、我われが日常的に安心して生きていられるのは「論理的真実・歴史的真実・文化的真実」が混合した、謂わば「混合的真実」(因果的真実)を絶えず実感できるからです。「混合的真実」(因果的真実)は「全人格的コミュニケーションの真実」と言った方が分かり易いかも知れません。そして、この「全人格的コミュニケーションの真実」から人間社会の約束事としての「公共空間」が意識されるようになるのです。しかし、「ウエブが進化したネットワーク・ツール」だけでは、信頼できる全人格的なコミュニケーションはできません。今、「Web2.0の世界」(ブログ、SNS、アフェリエイトビジネス、コミュニティ型掲示板、メールビジネスなど)の中で溢れかえり、そこで最も目立つのは詐欺・ヤラセ・擬装・過剰宣伝・美人局など、人間性のカケラもない下卑た人騙し的な犯罪ばかりです。また、この問題は、自民党の加藤紘一氏が新刊の著書『テロルの真犯人』(講談社)で語っている“電子メディアに囲まれて根無し草的に漂うばかりの現代人の心の隙間に巣食う、唯物論と観念論が交錯するような<闇>の問題”にも繋がります。また、同様の問題意識は社会学者・大沢真幸氏も折に触れて述べています(参照、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%BE%A4%E7%9C%9F%E5%B9%B8)。

ところで、このような「下卑た人騙し的な犯罪スレスレの政治」を真っ先に積極的に取り入れたのが「小泉劇場」以降の連立与党の政治権力者たちです。今になって思えば、「B層攻略作戦」はもとより、「キャー、コイズミさん、ステキー!の黄色い声」も、「小泉メルマガ購読者250万件」も、「道路公団改革」も、「郵政民営化」も、そして安倍首相の「美しい国」も、これらは悉くがヤラセを誤魔化すための「目眩ませアドバルーン」に過ぎなかったようです。本来、現代民主主義国家の政治家たる者は、「キリストの受肉」が(悪)と(善)の境界に立つという精妙なメカニズム(精妙な論理構造のバランスの上に立つもの)であったと同様に、自らの政治家としての仕事(責務)が、次の只一点に係わるきわめて危ういもの(フラジャイル)であることを決して忘れてはならないのです。その一点とは“この政治家が主権者(政治の観測者)たる国民の立場に身を置いているかどうか”ということです。もし彼が国民の立場に本当に身を置いているとすれば、それは善政であり、国民の立場を一方的に無視する「ヤラセ・擬装・騙し」などの方へ身を置いた(政治の観測者を騙した)とすれば、それは悪政・暴政ということになります。

つまり、民主主義国家の政治家が「善政」に携わるか、「悪政」に携わるかの違いは、このような意味で、まさに紙一重(絶妙な政治的バランス感覚の産物)なのです。ところで、感受性が鈍化した大人たちは体よく騙せるとしても、古代〜中世人の感覚を残している、言い換えれば善と悪の別を未だ十分に修得できていない子供たちまでは騙せません。今、子供たちの世界で進行しつつある“悲劇”は、「ナルシスト人間狼」(=悪政・暴政の方向へ堕ちた政治家)と化した政治権力者たちの「騙し・ヤラセ・イジメの手法」の被害者または加害者として(=“勝ち組・負け組社会”で生き残る戦略を習得するため)の予防的擬似体験なのかも知れません。あるいは、感受性豊かな子供たちは善悪の区別がつかぬままに、そして“世論誘導”(=善良な国民を騙し続けること)に莫大な国費の無駄遣いをする“おぞましい政治”の姿に漠とした不安を感じながらも、ひたすら、その「悪政」の手法を手本・教材として模倣・学習しつつあるのかも知れません。それが学校現場で蔓延している弱者イジメや差別の原因の一部となっている可能性があります。なぜなら、今の子供たちの多くは、いずれ彼らが大人になった時に、このような「ナルシスト人間狼」たちが跋扈する「騙し・ヤラセ・イジメの日本社会」を生きなければなならいことを彼らなりに直感的に理解しているからです。この意味では、ヤラセと擬装で強引に「教育基本法改正」を強行採決したことによる日本社会への深刻な悪影響が、これから次第に姿を現して来ると思われます。

それにしても過去5年に及び“世論誘導”のために悪徳の限りを尽くし、政治的バランス感覚を失って悪政・暴政へ向かう一線(分水嶺)を踏み越えてしまった「小泉劇場」の罪は重大であり、「小泉劇場型ヤラセ手法=国費を湯水の如く浪費する世論誘導手法」の禅譲を受けた安倍政権の責任も重大です。恐らく、表面化したTM(タウンミーティング)問題などは「小泉劇場型ヤラセ手法」に潜む“悪徳に満ちた国費の無駄遣い”の氷山の一角です。この“膨大な無駄遣いの範囲”は「刺客準備等のための選挙対策費用、メルマガなど小泉劇場の宣伝・広告費用、メディア(マスコミ)篭絡対策費用、御用学者篭絡対策費用、眼くらましのための度が過ぎた外遊費、使途不明の機密費etc」など広範囲に及びます。漸く、一部のメディアから、その費用の一部の見積もり額などが漏れるようになってきましたが、その数字の巨額さには驚くばかりです。結局、小泉首相が5年間でやったことは、200兆円もの国債を増発し(国の借金を600兆円→800兆円へ増やし)、少なくともその約0.01%に当たる約200億円の無駄遣い(独断的な推計ですが・・・ここには選挙の餅代や世論誘導のための経費、御用学者&御用マスコミ篭絡費用等を含みます)をやり、貴重な国民の税金を湯水の如く使いまくって、放蕩三昧に耽ったことです。“竹中元大臣や本間元税調会長”らのお陰で、年金生活者の住民税と介護保険料の増額(今年度/平均年額で約6万円の減収)、定率減税廃止(今年度/年収700万の4人の平均家族で約4万円の増税)、企業向け減価償却優遇策(今年度で約4500億円、次年度以降は約7000億円の減税効果)、事業費330億円の衆議院議員赤坂宿舎(家賃9万円)などを考えると唖然とします。

そして、その巨額な金額がもたらした“世論誘導の効果の大きさ”にも驚かされます。例えば、御用学者対策費用では「本間税調会長・愛人事件の典型事例」に現れたように、ご都合守護の学者ばかりが政権中枢に屯(たむろ)してきたことが分かります。政権を去った竹中平蔵氏に代表される過剰な新自由主義政策への傾斜も、今になって思えば“悪徳に満ちた国費の無駄遣い”の成果だったかも知れません。例えば、新自由主義政策の忠実な実行であったレーガノミックスがその後の米経済成長の基礎を築いたという“まことしやかな神話”が実は正しいことではなく、これが原因となって(現実は逆の話であって・・・)巨額の「税収不足と双子の赤字」が発生し、次いで「貯蓄貸付組合(S&L)の破綻問題」が起こり、最終的には米経済が失速したと見做すべきだ、という現実が今頃になって注目されています(出典:2006.12.20付・日本経済新聞『成長を考える』)。また、税収増によって「政府、基礎収支の黒字化目標の前倒し検討/税収増で国債減額」のヘッドラインが2006.12.20付の各紙一面を飾っていますが、このような政府広報に近い性格のニュースも要注意です。たしかに、企業中心型の景気回復傾向による税収増で基礎収支が想定より早く改善されるかもしれませんが、基礎収支の改善と巨額の国債等発行残高(国債約800兆円、地方債等を含むと約1,000兆円超となる)の解消は全くの別問題です。あと1〜2年の内に、後者の問題に目処(方向性)が付かなければ再び日本経済は失速する可能性が大きいはずです。

唯一の救いは、やっと今ごろになってではありますが、漸く日本の一般国民の目にも“現代日本の政界における、「人間狼」(職業差別の意味ではなく、悪政・暴政の犯人としての意味)の存在がリアルに見えるようになってきたことです。これら政治権力者たちが民主主義社会で「人間」に踏みとどまるか「ナルシスト人間狼」と化すかの境目は、まさに紙一重です。そして、この紙一重のきわどい部分へ大きな力を及ぼすのが、主権者(政治の観測者)たる「国民一人ひとりの選挙・投票行動」と「メディアのチェック姿勢」であることは言うまでもありません。

それにしても、2月17日付・読売新聞の報道(http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20061217i212.htm)によると、17日投開票された「談合」出直し和歌山知事選(自民党推薦の仁坂吉伸氏が初当選)の「投票率=35・21%(前回37・29%)」には驚き、呆れかえるばかりです。こんな有様では、今の日本は民主主義が殆んど機能していません。前にも書きましたが、投票率(回収率)が60%を下回る選挙(アンケート調査)は、その有効性に疑いがあるのです。その上、こんな体たらくでは霞ヶ関のみならず日本国中に、異界の悪魔に魂を売り払った「ナルシスト人間狼」どもが出没しても不思議でありません。このような時代にこそ肝要なのは、政治の観測者としての権利を行使するため、主権者である我われ一般国民が日本国中に出没する「ナルシスト人間狼」たちを“意識的かつ徹底的に蔑視・差別・賤視する”ことです。投票の棄権は「薄汚れて腹黒いカネまみれの人間狼・政治家」を排出するだけです。誤解のないように言い換えれば“肝要なのは、我われが棄権することなく選挙に行き、必ず一票を投ずることによって、政党の別を問わず「ナルシスト人間狼・政治家」たちをことごとく落選させる”ことです。これが「民主主義の根本」です。

最後に、「小泉劇場」や「美しい国」に生息する「文字どおりの現代版・ナルシスト人間狼」については、いささか書き飽きたので、外国の“ナルシスト人間狼の事例”を二つ挙げておきます。

(ジョージ・ウォーカー・ブッシュという名のナルシスト人間狼)

今になって思えば、「ネオコン&キリスト教右派に引きずられたブッシュ大統領」と「カルト的な靖国参拝問題に拘る小泉首相には“ある共通した独特の空気”が漂っていました。端的に言えば、それは幼児的で未成熟な精神環境に囚われた一種の「幼児型ナルシシズム政治」だということです(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20061215)。そして、「特にネオコンに強く引きずられてきたブッシュ政権に漂うナルシシズム政治」の本質を明快に説明し、開陳してくれたのがロバート・ケーガン(Robert Kagan/ブッシュ政権の外交政策を理論的に引っ張ってきた、シンクタンクPNAC(Project for the New American Century/アメリカ新世紀プロジェクト、http://www.newamericancentury.org/)の責任者、http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Kagan)の著書『ネオコンの論理/Paradise and Power、America and Europe in the New World Order』(光文社)です。これは、ブッシュ政権(及び、それを無条件で支持した日本の小泉政権)の愚かしさ、幼児的なバカバカしさを見事に抉った反面教師と言う意味で必読の本です。

(トニー・ブレアという名のナルシスト人間狼)

12月15日の時事通信(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061215-00000006-jij-int)によると、英国・労働党を代表する誠実な政治家との印象が強かったトニー・ブレア首相が与党・労働党への資金融資疑惑で警察の事情聴取を受けています。「第三の道」の提唱者でもあるトニー・ブレアの見識を高く評価してきた向きがある一方で、ブッシュの「イラク戦争」を支持した時のブレアの演説の中に独裁者にも似た“危険な人間狼の臭い”を察知したジャーナリストが多かったことも確かです(参照、http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/blair0303.html)。そして、トニー・ブレアはイスラエル系の某富豪が深く関与している「闇融資事件」に絡んでいるらしいとの噂が流れています。先進的な民主主義国家イギリスでも政治権力者は「人間」と「ナルシスト人間狼」の境界スレスレに生息しているようです。

・・・内容が当記事と関連する部分があるため、以下に最新のコメント・TB&レスを転載しておきます。・・・

to → toxandoriaの日記[美しいアナクロのワナに嵌った安倍政権?]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20061208

[コメントを書く]

イオン 『今日は。先日は再び愚見を取り上げて下さり、有り難うございます。
最近、私が日本の政治・社会・文化情勢を見つつ、漠然と考えていた事を、Toxandria様は見事に文章化され、かつ近代以降の歴史、思想史、芸術史の文脈に位置づけて下さるので、いつも感嘆しております。今回も、1990年代の中頃から日本はこのまま民族主義を昂揚させていけば、世界史上の孤児になると漠然と考えていたことに、見事に枠組を与えて下さった感があります。

さて近代的「民族浄化意識」の祖として15世紀末のスペインのカトリック両王のカトリック純化主義を挙げておられますが、この宗教的民族浄化主義とナチスの疑似生物学的民族(人種)浄化主義との関係には興味がそそられます。というのはスペインの宗教純化主義はイスラーム、ユダヤ両教徒の多数の国外追放とともに、多数の改宗を生み出した訳ですが、16世紀以降(と思いますが)、同国内の各種団体で盛んに「血の純血」(Limpieza de Sangre)、つまり先祖にユダヤ教徒、ムスリムを持たぬ事、をその入会条件とする傾向の発生と流行があるからです。またその時期、隠れユダヤ教徒を探し出すため、スペインではかの「異端審問」が猛威を振るったことはあまりにも有名です。(以上増田四郎『コロンブス』(岩波新書)など)

ところで1940年代と最近の90年代に旧ユーゴスラヴィアではセルビア・クロアチア・ムスリムの三大民族(大きな違いは宗教のみ!)が民族浄化をし合い、40年代にはクロアチア人が自前のファシスト政権のもと、ナチスの後押しもあり、セルビア人収容所を作り、虐殺を行いました。また90年代にはクロアチアのトゥジュマン大統領が「私の家系には一滴もセルビア人の血は入っていない」と述べたようです。(New York Timesなど米紙による)

これらの例から見るとどうも地域や時代によっても様相がかなり異なるでしょうが、民族的、宗教的、人種的という三つの浄化思想は、それぞれの境界が曖昧なように見えます。その宗教上の純血・浄化の思想が生物学上の純血・浄化の思想に転換して行くのは、社会の世俗化以降のことなのでしょう。しかしそれに際しても、例えばナチスに見られるように「キリスト殺しのユダヤ人」という概念や、キリスト教ゲルマン化運動など古い宗教的要素も混合していく傾向もありました。

このあたりの三つの浄化思想の境界間の曖昧さは平田篤胤などの著書を見てもなんとなく感じられます。靖国の思想も実は近代のカルトであると考えると、どうも民族・宗教・人種の境界がはっきりしない浄化思想が、1930年代と40年代に猖獗を極め、また最近復活し日本社会に跋扈してはいないでしょうか。最近の保守・右派系知識人の言説にも、三領域の境界が曖昧な純化・浄化思想が見て取れるでしょうか。
どうもまたもや長文のコメントで失礼しました。最近、だんだんと更新の頻度が増え、かつ内容の濃い記事が多いのに感嘆しております。ますますの御健筆、大いに期待し、応援しております。』(2006/12/14 07:18)

toxandoria 『tokumei_r32さん、TB(http://d.hatena.ne.jp/tokumei_r32/20061214)ありがとうございます。

おっしゃるとおり、今の日本政府は「日本国民の現実の心」から“ますます遠い存在”となりつつあるようです。

日本の小泉・安倍・麻生・中川(昭一)ら「追憶のカルト一派」の舞い上がった精神のおかげで、今の日本(日本政府)は“世界の孤児”への道を着実に歩んでいるように見えます』(2006/12/16 13:50)

toxandoria 『イオンさま、こちらこそです。ありがとうございます。

おっしゃるとおり「民族浄化意識」の問題は追いかけるほどに、つかみ所が見えなくなるようです。

たまたま、新しい記事(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20061215)で“いじめ”の「シカト」(多数派による少数派無視の圧力のこと)に触れたところですが、「民族浄化意識」は根拠が何もないところで起こる、一種の“いじめ(シカト)現象に似たもの”ではないかと思えてきます。

また、ちょうど尊敬する歴史家・阿部謹也氏の絶筆(惜しくも、この9月に急逝されました)となった著書『近代化と世間』(2006年7月・刊、朝日新書)を読んでいたところですが、その中で阿部氏は次のようなことを書かれています。

・・・絶対的な神の所有権を説くキリスト教の影響によるゲルマン社会(モノの所有と人格が不可分であった社会)での贈与慣行の変化が、ヨーロッパ社会に決定的な転換をもたらした。まず11〜12世紀に貨幣経済が成立し、次いでフランドルなどで合理的な交換市場が生まれ、やがてモノと結びついた私的な支配関係を排除することで「公共性の意識」が生まれた。・・・

恐らく、この「民族浄化意識」なるものは、ここで阿部氏が言う「公共性の意識」の対極にあるのではないかと思っています。

現代の日本では、小泉→安倍と繋がる「追憶のカルト&ヤラセ政権」がシャカリキになって「教育基本法改正」をゴリ押し(多くの善良な国民をヤラセで騙して手に入れた、多数の議席数に任せた強行採決)したばかりです。

しかし、ここで彼らが狙っている「公」の押し付け(=上からの愛国心の押し付け)と「公共」はまったく別ものです。このような「公」の押し付けは、太平洋戦争に至ったファシズム国家・日本への先祖帰り以外の何物でもありません。

残念ながら、日本の小泉・安倍・麻生・中川(昭一)ら「追憶のカルト一派」には、このような意味で「公共」への理解力がありません。それを理解しようともしません。

彼らの特異な精神環境は、私的で家産的な支配意識(所有意識)で満たされています。彼らは未だに「カルト化した“似非日本神話”の世界」を彷徨っているのかも知れません。

そして、このように「まるで宙を飛ぶかのように舞い上がった精神環境」こそが「民族浄化意識」にもっとも近いのではないかと思っております。

ついでに言えば、この現代世界における「まるで宙を飛ぶかのように舞い上がった精神環境」には二つのタイプがあると思われます。

その一つは日本の「追憶のカルト一派」に代表される「極右的な精神環境」であり、もう一つは「アメリカ型のグローバル市場原理主義」です。

特に、後者については一般に誤解があるように思っています。つまり、グローバリズムそのものが悪なのではなく、それが「グローバル市場原理主義」と化して、「交易・経済・企業ビジネス活動」そのものが「人間社会」から遊離(分離)する方向へ空高く舞い上がって行くのが「善」だとする、ワシントンコンセンサス(新自由主義思想)の理念そのものの間違いに、少しでも早く多くの人々が気づくべきだと思っています。

世界中の多くの人々がこの根本的な誤りに気づかぬ限り、「地球環境・温暖化・エネルギー・食糧&水資源」などの全地球的な危機に関する有効な対策への取り組みはできないはずです。

いずれにせよ、「ブッシュ政権の二つの間違い」(●<正義>と<善>のための聖戦と位置づけたイラク戦争の強行、●ワシントンコンセンサスの原理主義的な強行)を全面的に支持した「小泉政権の視野狭窄な誤謬政策」をソックリ引き継ぐ安倍政権が、この根本的な誤謬についての反省が全くないまま、更に、その上に「ファシズム国家・日本」へ向かうアナクロ政策を上積みして空高く舞い上がろうとする姿はオゾマシク“悪魔的”でさえあります。

このまま進めば、日本から「公共の意識」と「国民主権の立場」が消滅するのは時間の問題です。つまり、これは“戦後60年の日本の歴史”を無視し、それを全て消し去ろうとする根本的に誤った、まさに悪魔的な所業です。

南米エクアドルで反米の立場から選出されたばかりのコレア新大統領が、ベネズエラのチャベス大統領がブッシュ米大統領を国連演説で“悪魔”と呼んだことを受けて、“世界をひどく傷つけたマヌケなブッシュ氏と比べたのでは、悪魔さまに失礼だ!”とジョークを飛ばしたことが伝えられています。

日本の「小泉→安倍カルト&ヤラセ政権」の遣り方も、“そこまでお株を奪ったら、悪魔さまに失礼だ!”と言えるかもしれません。

このような意味で、今の日本政府(自公・連立政権与党)の【ヤラセで善良な多くの国民を騙し、その騙しで手に入れた議席による強行採決で国会を席巻する】という手法の連発では、日本が“世界の孤児”への道を好き好んで歩んでいるようにしか見えません。

もはや独裁化した「小泉→安倍カルト&ヤラセ政権」は、事実上、日本の主権者たる国民の立場などどうでもよいと言わんばかりです。

ところで、最近は、自分の“過去の記事内容”と“目前の問題意識”を往還しながら新しい記事を書いてきたため、比較的、更新のペースが速くなっています。

しかし、年が変わるのを機会に、少しばかり視点をパンフォーカスへスイッチして、もう少し長い時間をかけながらジックリ書いてみようかとも思っております。

今年は残り少なくなりましたが、新年になってからも、どうぞよろしくお願いします。』(2006/12/17 05:51)

to → [「ナルシシズム政治=小泉・安倍ヤラセ劇場」の重いツケ回しに喘ぐ日本国民]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20061215

kaisetsu 『◆情報共有です。
2006.12.19 Tuesday

本間正明氏⇒日銀総裁が外国人でも良いと言ったそうだが・・・
http://blog.kaisetsu.org/?eid=493281』(2006/12/19 10:15)

toxandoria 『kaisetsuさま、情報のご提供ありがとうございます。

本日の日本経済新聞『経済教室』で、白石 隆氏(政策研究大学院大学副学長)が“これからの日本は、東アジア全体の安定と繁栄に積極貢献するため一層の国内制度改革によってオープンな国を目指すべきだ”と提言し、そのために先ず必要なのは官民の別を問わず情報公開のための「内部統制の完成」を急ぐことであり、その上で日本は東アジアにおける高度人材育成のハブとなるべきだ”と説いています。

このような観点からしても、安倍総理がその重責を承知で任命した本間税調会長の醜聞(臭聞?=責任ある公人の内部統制の不備)は“イタダケ”ません。

しかも、タイミングが悪いことに「教育基本法改正・強行採決」の直後であり、流石に、善良で大人しい大多数の一般国民の心中にも“『美しい国』の教育の理想は、国費(国税)で『愛人』を囲うことなのかい?”という疑問が湧き上がっているはずです。

この状況下では、安倍総理が、判断を誤ることなく早急にキッチリと『つぐない』をつけるべきだと思います(一層の支持率の急降下が気にならないなら別ですが・・・)。

安倍総理や本間先生が、いくら思い入れタップリのカラオケ調で、アジアの歌姫こと故テレサ・テンの『愛人』や『つぐない』を国民に向かって歌って聴かせ“このくらいは大目に見てヨ!”とお願いしても、今回ばかりは善良で大人しい国民も納得はできないと思います。』(2006/12/19 18:11)
kaisetsu 『テレサテンの哀愁に潜む強固な意志、政治的情熱について想いを馳せる時、『愛人』『つぐない』の音色は一層輝きを増すように思えます。これと対照に、本間氏の醜態と、それを庇う安倍氏の『美しからぬ』行為は、風船のように軽く、糠のように掴み所の無い悪臭を放っています。同じ歌も、歌う人によって美・醜に分かれるようです。⇒テレサ・テン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%83%86%E3%83%B3
より⇒1989年6月4日に発生した天安門事件の際には、香港で行われた民主化デモ弾圧に対する抗議集会に参加、民衆の前で歌を披露し、自ら中国大陸の民主化実現を訴えた。中国軍政府を否定したテレサは、中国への返還が近い香港をたち、フランスのパリへ移住した。』(2006/12/20 00:01)

とむ丸 『やはりTBがとおりません。

私のブログの方は設定をちょっと変えて通りやすくなったようです。お試し下さい。

コイズミ純一郎の「ほら」をハメルンの笛吹男に喩えたのに座布団10枚! 

なんであんなに軽薄な男を首相にしたのか? という疑問は、なんでアベ晋三のようにアナクロニズムを奉じる男を首相にしたのか、ということと根っこは同じでしょうね。』(2006/12/21 16:50)

toxandoria 『“とむ丸”さま、toxandoriaです。

連日、多忙(仕事&飲み会?)で外出先(yahoo・B・Bパークのフリー・スペース)で書いています。

今頃になり、漸くアベのペテンも認知されてきたようです。しかし、問題はその批判の凡そ半数がコイズミへの回帰願望であることです。

コイズミがやったことは、200兆円もの国債を増発し(国の借金を600兆円→800兆円へ増やし)、少なくともその約0.01%に当たる約200億円の無駄遣い(独断的な推計ですが・・・ここには選挙の餅代や世論誘導のための経費、御用学者&御用マスコミ篭絡費用等を含みます)をやり、貴重な国民の税金を湯水の如く使いまくって、放蕩三昧に耽ったことです。

年金生活者の住民税と介護保険料の増額(今年度/平均年額で約6万円の減収)、定率減税廃止(今年度/年収700万の4人の平均家族で約4万円の増税)、企業向け減価償却優遇策(今年度で約4500億円、次年度以降は約7000億円の減税効果)、事業費330億円の衆議院議員赤坂宿舎(家賃9万円)などを考えると唖然とします。』(2006/12/23 07:54)

(参考URL)http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/

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