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『GHQに多大な影響』
斬新な憲法案あった
日本国憲法の誕生から六十年余を経て、連合国軍総司令部(GHQ)が日本政府側に手渡した憲法草案に大きな影響を与えたとされる「憲法研究会」の存在があらためて注目されている。その中心となった憲法学者の鈴木安蔵氏(一九〇四−八三、戦後、静岡大、愛知大教授)を主人公にした映画「日本の青空」も企画され、制作への支援の輪が広がっている。
福島県小高町(現南相馬市)生まれの鈴木氏は、治安維持法適用第一号となった京都帝国大「学連事件」に連座して大学を自主退学。以後、在野で明治初期の自由民権運動やフランス、ドイツの憲法史の研究を続けた。
そして敗戦直後、元東京帝大教授の高野岩三郎氏(後に戦後初のNHK会長)の呼びかけに応じ、早稲田大教授の杉森孝次郎、社会学者の森戸辰男(後に片山・芦田両内閣の文相)の各氏らと憲法研究会を結成した。
六回の会合を経た四五年十二月二十六日、研究会は憲法草案要綱を発表し、新聞各紙は一面で報じた。政府の憲法調査会(松本烝治委員長)の改正草案よりも一カ月以上早い上、明治憲法の手直し程度の政府案とは対照的に斬新な案だった。
「統治権は国民より発す」と国民主権を明示。天皇についても「国民の委任により専ら国家的儀礼を司(つかさど)る」と象徴天皇制に通じる提起をした。「法の前の平等」や「男女の平等」など、現憲法と共通する条文もあった。
この要綱にGHQは素早く反応。翌年一月十一日付でラウエル中佐(民政局法規課長)が詳しい「所見」を書き、国民主権や労働者保護などについて「いちじるしく自由主義的な諸規定」と述べ「憲法草案中に盛られている諸条項は民主主義的で、賛成できるものである」と高く評価した。
こうした経緯やGHQ案との共通性から、この要綱がGHQ案の「下敷き」になったと指摘する研究者は多く、「米国から一方的に押しつけられた」という通説を否定する根拠とされている。
映画プロデューサー小室皓充(てるみつ)さん(69)も憲法制定過程で研究会が果たした役割に注目した一人。要綱を起草した鈴木氏を主人公にした映画を作ろうと決意、国会図書館に一年間通うなどして資料を集めた。
映画は、雑誌の女性編集者が鈴木氏の娘に出会い、日記帳などを手掛かりに新憲法制定の核心に迫るというストーリー。反戦映画を数多く手がけてきた大沢豊さん(71)が監督を務め、鈴木氏の役は高橋和也さん、妻俊子さん役は藤谷美紀さん、編集者役は田丸麻紀さんがそれぞれ演じている。憲法公布六十年に当たる十一月三日にクランクインし、二十日に撮影が終了する。
小室さんは「憲法はGHQに押しつけられたと信じる人は多いが、要綱はGHQに大きな影響を与えた。映画を通して、憲法を考える材料を提供したい」と意気込む。
映画は来年三月から各地で自主上映される。制作費約二億円は制作協力券の販売(一口十万円)でまかなわれ、協力団体・個人は映画のフィルムに名前が出る。既に各地で制作を支援する会が生まれている。問い合わせは電03(3524)1565=「日本の青空」製作委員会まで。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20061220/eve_____sya_____002.shtml
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