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ここまで隠せる 政治と金 カラクリの全貌 [AERA]
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投稿者 white 日時 2007 年 1 月 23 日 16:47:04: QYBiAyr6jr5Ac
 

□ここまで隠せる 政治と金 カラクリの全貌 [AERA]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070122-02-0101.html

2007年1月23日
ここまで隠せる 政治と金 カラクリの全貌
政治資金規正法は、ざる法の王様だ。
収支報告書は、ずさんさの極み。
隠す、ごまかす、知らんぷり。
渦中の伊吹センセイのを見ながら、
その実態をお勉強すると――。
「政治資金の使途に不適切な会計処理があった」
 昨年末、佐田玄一郎行政改革担当相はこう言って閣僚を辞めた。当選6回、渇望した大臣の座を「不適切な処理」で棒に振った。
 だが、実態は「不適切」というより「虚偽」に見える。佐田氏の政治団体は10年間に家賃などで8000万円近くを使ったと報告した。ところが、ビル側とは賃貸契約もなく、政治団体の実体がほとんどなかったと疑われている。
 要するに、領収書のない裏金に消えたものを、もっともらしく支払ったように装った。そんな疑いがつきまとうのだ。
 年間300億円を超す税金が政党に渡されているという緊張感など、まったくない(注1)。

領収書がいらない
 年が明けると、松岡利勝農林水産相と伊吹文明文部科学相にも「不適切な経理」が発覚した。
 ともに、家賃無料の議員会館を事務所にしている政治団体が、年間数千万円の「事務所費」を計上していたのだ。
 緊急会見した伊吹氏は裏金疑惑を否定したが、真相は藪の中としか言いようがない。収支報告書から浮かぶ「不自然さ」を、客観的に確認する方法がないのだ。
 なぜ、こんなずさんさがまかり通るのか。
 伊吹文科相の資金管理団体(注2)の収支報告書=65ページ写真=を例に見てみよう(注3)。
 支出欄は経常経費と政治活動費に大別されている。経常経費の中の事務所費は約4146万円とある。家賃は無料なのに、何に使っているのか。明細はどうなっているのかな、と探してみるが……、どこにも書いていない。
 伊吹氏は、議員会館以外にも事務所があり、その家賃などが含まれると説明したが、あいまいな部分が残っている。それでも違法性はないと主張できるのは、政治資金規正法が経常経費について、その明細と領収書の添付を義務づけていないからだ。
 ということは、領収書のない支出を「事務所費」として経常経費に紛れ込ませても、だれにもわからない。とんでもなく極端な話をすれば、政治家が競馬で100万円すってしまっても、事務所費に使ったことにしておけば、ばれないということだ。
 日常的にかかる経常経費の使途は常識の範囲内だろう。だから、煩雑な事務手続きは省略してもいい。そんな法解釈には、悪用の余地が大あり、なのだ。

消えた15億円
 一方の政治活動費は、1件5万円以上の細目を書き込み、領収書の写しを添付する決まりだ。伊吹氏はみずからの派閥の議員らへの寄付金などを列挙している。
 だが、ここも抜け道だらけだ。5万円未満は明細を記載しなくていいのだ。だから、ほとんどを5万円未満の出費として項目を記載しない政治家も多い。
 伊吹氏にも「組織活動費(交際費)、318万円」とだけ報告したページがある。いつ、だれに使ったかは不明だ。
 収支報告書の前半には「収入」項目が並ぶ。伊吹氏もパーティーや寄付などを載せている。
 年間5万円以上の寄付は、その氏名、住所の記載も義務づけられている。度重なる金権スキャンダルを受け、法改正が重ねられてきた結果だ(注4)。
 だが、大穴がある。「繰越額」という項目だ。伊吹氏も約1億2000万円を前年から繰り越していたと報告している。しかし、それを確認できる手立ては何もない。
 自民党旧橋本派の裏金疑惑を思い出す。03年分の報告書の「翌年への繰越額」は18億円を超えていた。それがヤミ献金事件の捜査をはさんで、04年分の「前年からの繰越額」は2億9720万円に減っていた。ざっと15億5000万円が闇に消えた。
 長い年月、じゃぶじゃぶと裏金を支出してきた。領収書がないので、「繰越金」として手元にあるように装ってきたが、捜査で実態が暴かれた格好だった。
 こんなやり口は、収支報告書に金融機関の「残高証明」を付けるだけで防げる。なのに、自民党はその法制化に踏み切らない。

国会議員は一括報告を
 報告書の穴にあきれる前にも、もっと腹が立つことがある。
 政治家は資金管理団体のほかにも、企業献金の窓口になる政党支部や、パーティー収入などが入る複数の政治団体を持ち、それらを使い分けている例が多い。
 とくに目を引くのが、企業献金を受けとれる政党支部の乱立だ。衆院小選挙区は300なのに、政党支部は自民党だけで7000を数える。政治家が政党支部を「財布代わり」に使って、企業献金を集めている証しだろう。
 おまけに、政治団体ごとに報告する役所が違う。県境をまたいで活動する政治団体は総務省に、それ以外は所在地の都道府県に届ける仕組みなのだ。
 政治家は複数の政治団体を駆使して、その団体間で資金のやりとりを多くしているため、ある政治家が総額でいくら集め、どれほど使ったのかを調べるのは至難の業になっている。
 国民が納税する際には、副収入も一括して申告する。この国民の正直さに比べて、政治家はいかにも身勝手だ。少なくとも国会議員は自分の政治団体を名寄せして、資金の流れを一本化して公表するのが筋だ。
 このほか、迂回献金もモヤモヤ感たっぷりだ。05年、日本歯科医師連盟の一連のヤミ献金事件の裁判で、その存在が証言された。
 ある政治家に金を渡したいときに、まず党本部向けに献金する。その際に、実際に届けたい政治家を指名し、党本部から支給した形式にする手法だ。
 金に色がついていないことを利用し、いったん党を通すことで、だれからだれに渡ったのかをあいまいにする。政治家にすれば、党に専用の献金受け取り口座を持っているようなものだ。
 献金する業界団体や企業にとっては、たとえ賄賂でも、党本部を通すことで「浄財」を装うことができる。「党ぐるみの賄賂隠し」といわれても仕方あるまい。
 当然、国会でも問題になり、最近の法改正論議(注5)の焦点のひとつになったが、自民党は最後まで迂回献金そのものの存在を否定し続けた。
「政治資金は政治の母乳である」。こんな言葉がある。正しい金の使い方をすることが民主政治を育てるという意味だという。
 だが、あるべき政治資金の姿、政治家と金の関係と、現状はかけ離れている。
 もともと、政党交付金という税金を投入したときは、企業・団体献金をなくしていく方向だった。
 しかし、自民党などは企業献金に頼る体質から抜けきれない。
 その一方で、個人献金は伸び悩む。何に使われるのかが見えなければ、身銭を寄付して応援する気になれないのも当然だろう。
論説委員 坪井ゆづる
政治資金とは
 企業、団体、個人献金のほか、パーティー収入や政党交付金という税金もある。政党交付金創設にあたっては企業献金の禁止が検討されたが実現していない。法律名が「規制」ではなく、「規正」(悪い所を正しく直す)なのは、政治資金は正しく扱われているという前提と、政治活動の自由を縛らない、という考え方があるからだ。
(1)政党交付金
政党助成法に基づき、1995年に施行された制度。国会議員が5人以上いることなどが要件で、05年実績の総額は317億円。自民党は157億7951万円で党収入の60%、民主党は117億6530万円で、党収入の83%を占める。まるで官製政党の様相だ。共産党は当初から受け取りを拒否している。
(2)資金管理団体
政治団体には4種類ある。(1)政党、(2)政党のために資金援助する目的で政党がつくる「政治資金団体」、(3)政治家が資金を取り扱う目的で指定する「資金管理団体」、(4)政治家の個人後援会のような「その他の政治団体」。ここに引用する伊吹氏の報告書は資金管理団体「明風会」のものだ。
(3)政治資金収支報告書
 の見方
インターネットで読める。総務省のホームページで、「政策・政策評価」→「選挙・政治資金制度」→「政治資金収支報告書及び政党交付金使途等報告書の公開」と進む。政党名などとともに、50音別に資金管理団体が並ぶ。伊吹氏の団体が「イ」の欄にあるとは限らない。名称が「明風会」なので「メ」にある。具体的な団体名を知らなければ、たどりつけないという不親切さなのだ。安倍首相の団体は「晋和会」なので「シ」にある。
(4)政治資金規正法の
 改正
法律は1948年に制定された。「黒い霧事件」を契機とした75年改正、「ロッキード事件」などを受けた80年改正、「リクルート事件」をきっかけとした92年改正、94年改正などがある。この間に、政治家個人が企業・団体献金を受け取れなくなり、政党を受け皿にする方式が確立された。
(5)最近の法改正論議
05年の改正では、政治団体間の寄付に5000万円の上限を設けた。06年には、外資50%超の企業による政治献金を条件付きで認めるよう改正した。いずれも、政治資金の透明度の向上には役立っていない。逆に、自民党には公開基準を引き上げ、透明度の低下を望む意見もある。

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