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タレントのそのまんま東氏が立候補して話題となっている宮崎県知事選は、二十一日の投開票に向けて終盤戦に入った。知名度だけで組織の弱い東氏は苦戦も予想されたが、ふたを開けてみると、マスコミ各社の世論調査でトップ争いを演じている。東氏が意外な健闘を見せる宮崎県の事情とは−。 (片山夏子)
宮崎県知事選は官製談合事件による現職知事の辞任に伴う出直し選挙。東氏のほか、共産党公認で党県委員長の津島忠勝氏、元林野庁長官の川村秀三郎氏、元経済産業省課長の持永哲志氏=自民、公明推薦、元高校教諭の武田信弘氏が立候補している。
自民党は持永氏を推薦したが、県町村会が元林野庁長官の川村氏を支援する分裂選挙。独自候補を立てられなかった民主党は、社民党とともに川村氏支援に回っている。
週明けにマスコミ各社が報じた世論調査結果では、川村氏、東氏がトップを争い、持永氏が追う展開。西日本新聞社の調査では、東氏は無党派層でトップを占め、特に二、三十代の支持が強いという。
「宮崎はこの選挙から新しく変わらにゃいかん」
東氏は十六日午後、遊説先の宮崎県日南市のスーパー駐車場前で、身ぶり手ぶりを交えながら“宮崎弁”で訴えていた。
「私利私欲、権力闘争などで政治が私物化され続け、宮崎は他県から十年、二十年と遅れてきた。新幹線どころかまだ(宮崎道以外)高速も通っちょらんですよ。どげんかせにゃいかん」。鳥インフルエンザからの信頼回復、役人の天下り問題…。次々と宮崎県の問題点を指摘しながら「芸能人でもできることがあるんです。民間人しかできないことがあるんです」。沿道からは「信じてるぞ」「期待してるよ」とたくさんの声が飛び、拍手が起こる。
演説を聞いていた同市のクリーニング店店員海老原京子さん(57)は「あれほど潔白を強調した前知事が逮捕され『選挙に行ったって何になる』という雰囲気があったが、東さんは地道なやる気が見える。ひょっとしたらという期待が上がってきているのでは」と人気の理由を推測。一方で「自民党は二候補の間でもめているし、民主党も独自候補を出さずに何をしてくれるわけでもない。庶民のことを考えていると伝わってくる政治家はいないよ」と嘆く。
同市の山崎弘徳さん(67)も「芸人としての知名度を前面に出せるのに、まじめ一本で訴える姿に新しい風を起こしてくれるのではと感じる。長く自民を支持してきたが裏切られることがありすぎた」。
工場勤務の河野英明さん(32)も「一生懸命な姿勢を信じようと思う。人気は知名度だけではない」という。
出直し知事選の中で、東氏の人気の秘密が透けて見えてくる。
これに対し、他候補は東人気に警戒を強めている。
津島氏陣営の志田貴士雄氏は「自民党が割れ、支持が東氏に流れているが、これから保守も本格始動する。これからが正念場」。
川村氏は同日、宮崎市や延岡市を中心に回った。陣営広報担当の日高和博氏は「東氏は子どもから大人まで知っている強みがある」と警戒しながらも「これからの県政をしっかり考える県民に期待したい」と川村氏の実績を強調。
持永氏陣営の萩原耕三県議も「これからが勝負。経済活性化を中心に訴える。最終的には(世論調査と)違う結果が出る」と強気だ。
県発注の橋設計業務の指名競争入札で談合があったとされる官製談合事件では、前知事の安藤忠恕(ただひろ)被告ら七人の県幹部のほか、元国会議員秘書や落札した業者など計十六人が逮捕された。
県始まって以来の不祥事からの出直し選挙だったが自民党は分裂。今月六日には、自民党県連が主催して市町村長や議長らを集め、菅義偉総務相を招いた懇談会が開かれたが、菅氏が「持永さんを当選させることが宮崎の発展につながる」と発言して川村派の市町村長らが強く反発した。地方交付税の配分に強い影響力をもつ総務相が、特定の候補者の肩入れをし、利益誘導とも受け取られかねないと疑問の声が上がった。
こうした談合の後遺症を引きずる選挙戦だけに、事件の再発防止策については各候補とも「電子入札の一部を郵便入札化し、談合に関与した職員の処分を厳罰化する」(東氏)、「団体献金をやめさせ、県幹部の天下りを廃止する」(津島氏)、「談合が起こりにくいルールづくりと職員の意識改革が必要」(川村氏)、「一般競争入札の拡大と建設業の業種転換による改革」(持永氏)などと主張する。
談合の再発防止策で東氏が抜きんでている印象はない。
むしろ、自民党が内輪もめに明け暮れ、民主党も独自候補擁立を断念するという体たらくの間隙(かんげき)を、東氏がうまくついているように見える。
告示前、東氏を「泡沫(ほうまつ)候補」と見る向きもあった。東氏は出馬表明をした直後に「官製談合は悪だが、一般談合は必要悪」と発言し、すぐに訂正する失態を演じ、タレント時代の不祥事も蒸し返されるなどしたからだ。
しかし、世論調査結果では初当選をうかがうところまで来ている。
「芸名はふざけているが、年がいってから早稲田大学で学び直し、今回故郷に恩返しをするため、知事選に出る決意をしたというまじめさが、宮崎の有権者に受け入れられているのではないか」
政治評論家の森田実氏は、東氏善戦の理由をこう分析する。
評論家の室伏哲郎氏は「スポーツで一生懸命さを見せることが東氏の取りえ。有権者はそこを見ていると思う」という見方だ。スポーツというのは、東氏が何度もフルマラソンを完走していることを指す。テレビ番組の企画で百キロマラソンを走り抜いた実績もある。「マラソンはふざけていたら完走などできないから」(室伏氏)
ところで、タレント候補が「風」を受けて、政党の支援がないまま当選した例はいくつもある。一九九五年には東京都に故青島幸男氏、大阪府に横山ノック氏の両タレント出身知事が誕生した。
また、タレントではないが、九一年にNHK記者だった橋本大二郎氏が高知県知事選に当選した。橋本氏は高知県に縁もゆかりもない、いわゆる落下傘候補だったが、抜群の知名度を武器に他候補を寄せ付けなかった。
「共通するのは、有権者が既存の政党や政治家に絶望したという土壌があること。それと同じような状況がいま、宮崎にある」と森田氏。室伏氏は「既存政党が知事候補に担ぎ上げるのは中央官僚OBばかりで新鮮味がない」という“敵失”も善戦の理由に挙げる。
宮崎県知事選の行方は混沌(こんとん)としているが、森田氏はタレント知事に必要な点を二つ挙げる。
「実務能力を身につけ、有能な人材を周囲に結集することだ。橋本氏はそれを実践したから知事として比較的成功を収めた。今後のタレント知事は人気取りの青島・横山型ではなく、橋本型への脱皮を志すべきだ」
<デスクメモ> 選挙は時として、票読みのプロも予想できない結果を生むことがある。青島都知事誕生もそうだった。都市博中止の公約だけでなく、“政党談合”と呼ばれた候補者調整に対する、無党派層の怒りも原因の一つだった。無党派層は決して「無関心層」ではない。ないがしろにされれば、投票で答えを出すのだ。 (里)
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