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□政治は「揺り戻し」の中にある [国会TV]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070115-01-0601.html
2007年1月15日
政治は「揺り戻し」の中にある
2007年初の「言いたい放題・金曜ナイト」は、谷藤悦史早稲田大学教授に日本政治の課題を語ってもらったが、キーワードは「揺り戻し」だった。
まず外交であるが、つい最近までの世界はアメリカを中心としたグローバリゼーションの流れの中にあった。20世紀末、旧ソ連の崩壊によって唯一の超大国となったアメリカは、世界最強の軍事力、経済力、情報力を武器に、世界を一極集中的に管理しようとした。20世紀末から21世紀初頭の世界にはグローバリゼーションの波が押し寄せた。ワシントンにある世界銀行、国際通貨基金が世界経済を主導し、ホワイトハウスが世界の政治地図を作製した。ワシントンで世界の全てが決められた。
2001年に誕生した小泉政権はアメリカとの関係を外交の最優先にしたことで、グローバリゼーションの流れに乗った政権だったと言える。
しかしその後、EUに代表されるように地域利益の確保を優先する地域主義の流れが出てきた。南米では南米共同体が作られようとしており、アジアでも東アジア共同体構想や地域の連携を深めようとする動きが出てきている。グローバリゼーションに対する「揺り戻し」が起きてきているのだ。ロシアの資源ナショナリズムもこうした動きを象徴している。こうした世界の変化を考えるとき、安倍政権が小泉政治の継承を謳うことにどれほどの意味があるのだろうか。
そこで谷藤教授は興味深い事例を紹介した。昨年12月12日に安倍総理はオーストラリアのハワード首相との間で経済連携協定(EPA)の交渉を開始することに合意した。交渉は今年から始まる。この案件も小泉時代から進められてきたもので、小泉外交の継承の一環と言える。しかし日豪のEPAが実現し、牛肉、乳製品、小麦、砂糖の関税が撤廃され、それが豪州以外にも拡大することになると、日本産の小麦の99%、砂糖の100%、乳製品の44%、牛肉の60%が犠牲になると見られる。日豪EPAの日本にとっての利益は資源エネルギーの安定的確保と安全保障関係の強化だと言われるが、先進国中最下位の食料自給率はさらに低下することになる。国際的な連携を強化することは結構だが、そのために自国の農業に壊滅的打撃を与えることが許されて良いのだろうか。
協定で最も影響を受ける地域は北海道と沖縄だが、北海道だけで1兆円を超える打撃を受けると北海道庁では試算している。
世界の流れが小泉時代と変わってきていることを自覚するならば、安倍政権の外交姿勢も小泉政治とは異なるものになるはずだ。自国の農業に壊滅的打撃を与えることが「美しい国」をつくることになるとは思えない。ところがこの問題に対して政治の世界もメディアもほとんど関心を払っていないのはどうしたことだろうか。
野党が参議院選挙の争点にすべき話だと谷藤教授は言った。
内政面における小泉政治は「都市」の政治だった。バブル崩壊以降先進国の中で唯一低迷から抜けられないでいた日本経済を立て直すため、小泉政治は都市の再開発に力を入れ、土地の利用可能性を高め地価の下げ止まりを図った。それは成功したが、その結果、いわば東京の一人勝ち現象が起きて地方が置き去られた。ここにも政治の「揺り戻し」が必要とされている。
平成の大合併によって3200あった自治体数は1800にまで減少した。富山市などは県の面積の30%を占めるまでに拡大した。市の均質性はなくなり、様々な業種、様々な階層を抱えるようになった。しかし行政需要は減らないのに公務員数も財源も減らされている。一方で基礎自治体数が20以下になった県が出てきた。県の役割とは何なのか分からなくなってきている。
夕張市の財政破綻ばかりがまるで人身御供のように報道されているが、同じ状況の自治体は他にも数多くあり、いずれ顕在化する。県民所得は東北では軒並み下がっている。
県知事が汚職事件で相次いで逮捕され、知事制度が問われている。直接県民から選ばれる知事は大統領型の権力者だが、大統領制は議会との緊張関係がないと独裁になりやすい。しかし日本では知事も県民党を名乗り、議会もオール与党体制になっている県が多く、とても緊張関係があるとは思えない。地方政治の制度をどうするか根本的に考えなければならない状況が出てきている。内政の課題の第一は「地方」をどうするかという問題である。
次いで「格差」の問題がある。資本主義は格差を生み出すものである。その格差をどこまで許容するかは民主主義の問題。日本の民主主義がどこまでの格差を認めるかが今問われている。
かつて一億総中流と言われた日本の貧困率はOECD加盟国の中で5位になってしまった。労働分配率もアメリカより悪い。そうした中で失業問題ではなく、雇用問題が初めて政治課題になろうとしている。非正規雇用の問題、ホワイトカラーエグゼンプションなど雇用のあり方が問われることになった。
格差、雇用の問題は社会保障とも絡む事になる。格差、雇用、社会保障問題で各政党がどのようなメッセージを国民に発することが出来るか、そのことが今年の選挙の帰趨を決する。
与党は国民に向けて「景気は良くなっている」と言い続ける。「もうすぐ実感できる」と言い続けるだろう。その一方で民主党に対する選挙戦略としてホワイトカラーエグゼンプションを打ち出し、連合と取引をする可能性がある。自治労対策としては公務員制度改革を打ち出すだろう。
これに対して民主党がどのようなメッセージを国民に発するか、まだメッセージは国民に届いていない。
いずれにしても日本政治は小泉時代とは異なる「揺り戻し」の中にあり、与党も野党もそのことを理解しないと、選挙で「有権者の反乱」に遭う可能性がある。
国民にメッセージを届けることが出来るのは、25日から始まる通常国会が最大の舞台となる。
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