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http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITzv000015012007
不思議です。日本は昔からとっくに実質的な「ホワイトカラー・エグゼンプション」になっているのになぜ今になってそれをわざと制度化する議論が起きるのでしょうか。
内容をはっきりさせたくない言葉をわざとカタカナ英語にする傾向が戦後の日本社会にあります。「ホワイトカラー・エグゼンプション」を「ホワイトカラー免除」と表現すれば、人々は何を免除するのか自然に関心を持つはずです。
経団連が提言したこの「ホワイトカラー免除」とは、ホワイトカラーの労働時間への規制を免除するという意味です。もっと分かりやすくいえば、残業させても残業代を払わずに済むという制度です。
十数年前に私がソフトブレーンを創業した頃、札幌の地元の有力企業に就職した留学生の知人から相談を受けました。残業が多いうえ、残業代も払わないというのです。正直に残業時間を申請したところ「お前、残業申請はちゃんと書けよ、先輩のやり方を勉強しろ」と課長に怒られたそうです。
後で分かりましたが、残業代をきちんと払っている会社はまだ「良い会社」です。残業しても「残業代をゼロにしろ」という会社もあるのです。基本給を安くし残業代を稼がないと生活が成り立たない会社もあります。これらのことを考えれば、日本は昔から「ホワイトカラー・エグゼンプション」だったと言えます。
しかし、近年、日本にもグローバル化の波が押し寄せ、労働基準法の順守が厳しくなりました。多くの著名企業が未払い残業代を強制的に払わされたという報道があったことは、読者の皆さんの記憶にも新しいと思います。労働基準監督署の人員に限りがあるためサービス残業を摘発できたのは氷山の一角に過ぎませんが、サービス残業を経営の基本条件に組み込んだ多くの経営者にとってこれはまさに「経営危機」でした。
その既存のホワイトカラーのサービス残業に法的根拠を与えるには「ホワイトカラー・エグゼンプション」は手っ取り早い方法です。こういう時に限って経済界の方々は遠慮なくアメリカの基準とやり方の無条件導入を主張するのです。
同じ経済界の人達は同じ時期にアメリカの株式交換による企業買収の「三角合併」に反対し、日本に合わないとこれあれ制約条件を付けています。面白いことにこの時の言葉はちゃんと分かりやすい日本語の「三角合併」を使っているのです。
労働時間規制の撤廃に抗議する労働組合員ら=12月27日、東京・霞が関の厚労省前〔共同〕
「残業は日本的ワークスタイル」「文化の一部」「日本人の独特な労働感」などという議論に私は賛成できません。労働者の方々に直接を話をしていただきたいと思います。先にも述べたような基本給をわざと安くし、残業しないと現在の生活を維持できないのは一種の強制残業に過ぎません。
それでも残業代を払ってくれる大手企業は「良い企業」です。「ホワイトカラー・エグゼンプション」を合法化すればその「良い企業」もなくなるのです。
「子供に会いたくない。家族と一緒に居たくない。自分の時間を持ちたくない」と考える日本人は少ないはずです。残業しなくてもこれまでの収入がもらえるならば、反対する労働者はどのくらいいるでしょうか。「収入は同じでも長い時間働きたい」というほど、果たして日本の文化は「特殊」でしょうか。
私は「ホワイトカラー・エグゼンプション」の理想自体には賛成です。ただし、その前提はサービス残業に法的根拠を提供しないことです。もっと簡単にいえば、労働条件をさらに悪化させないための具体的条件を付けるべきです。たとえば残業代で確保していた生活費をちゃんと別の形で年収に反映させ、結果的に社会全体の分配率を下げないようにすべきです。
日本は世界的にみて労働時間の最も長い国に属しているという調査データはたくさんあります。日本の働く親は最も子供達と会う時間が少ないのです。経済界が本当に「豊かな社会」を目指しているならば、まずサービス残業がなくても成長する経済の自己改革を先に示していただきたいと思います。
そして社員の一人ひとりは、労働意識を持ち、サービス残業に従わない勇気を持つことが経営側の自己改革を促す早道であることをお忘れなく。
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