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□西村真悟の時事通信(平成19年6月20日号)
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件名:西村真悟の時事通信(平成19年6月20日号)
日本の大きな闇もしくは空洞
No.292 平成19年 6月20日(水)
西 村 眞 悟
六月になってから、梅雨入り前後の湿った新緑の清々しい風情を眺めることができる。そして、四季の移ろいのありがたさを感じる。
他方、我が国の政界を中心とする世界に目を転ずれば、見えてきたものは、おぞましい闇もしくは空洞だ。何かが麻痺した闇である。
最近は、社会保険庁における五千万件にのぼる記録がどう処理されたのか分からないと大騒ぎになっている。
私の直感は、「これはかつての『国鉄』と同じだ、労使の問題にメスを入れれば見えてくる」というものだった。
案の定、国民の支払い記録を電磁記録に入力する作業における社会保険庁労使の取り決め(協定)の内容は、例えば四十五分働いて十五分休むとか、職員が一日たたくキーの数は○○○○回以内だとか、延々と多項目にわたっていた。一体、誰のための役所だったのか分からない。この状態では、記録を入力したのかしてないのか分からなくなるはずだ。
その上で、理事者側は、地元や政治家の要望に応えてなのか、勝手にか、全国各所に人の金に任せて○○ランドという贅沢で高額で役に立たない施設を建てていた。無責任きわまりない。
ここにおいて、民間の労働組合である同盟系の仲間と以前に懇談したときの会話を思い出した。つまり、かつての官公労も加わった連合という組織に関して、「税金を払っているのと、税金で食っているのとが、同じ連合にいて共存できるのか」と言った。
今、連合の中で、「お前ら何してたんや。俺らがそんなことをしてたら、倒産してるんやぞ」と言うぐらいの討議が起こっても不思議ではないのに。
さて、これで大騒ぎをしている時に、私は「月刊日本」という雑誌の来月号に掲載する台湾に関する原稿と日本人拉致問題に関する政府への「質問主意書」を書いていたのだが、不思議な思いをしていた。この大騒ぎは、バランスを欠いているのではないかという思いだ。
つまり、年金で大騒ぎするなら、もっと大騒ぎしてもよいことが今まであったではないかと、眺めていたわけである。
国民にとって、年金の行方不明は驚きだが、それが生み出された構造を見れば、どちらかの党が一方的に鬼の首を取ったように騒ぐ問題ではない。
「年金の行方不明」も、戦後政治の病根を示すものであるが、それ以上に深刻な「人間の行方不明」つまり北朝鮮による数百人の日本人拉致に関しては、今のような大騒ぎをする党派もなく長年放置された。何故であろうか。
その時、社会保険庁どころではなく、もっと大きなサボタージュの闇が見えてくるはずだと友人と語り合った。
そのような折り、朝鮮総連東京本部の建物敷地の所有権移転登記が発覚した。
依頼者から、財産保全を頼まれればその為に法的手段をとるのが弁護士である。この観点からするならば、弁護士が、まさに財産保全を頼まれてそれをやったのであろう。
しかし、問題は、その手段と登場人物である。
先ず、財産保全の手段が違法もしくは犯罪であってはならない。これは当然のことである。
この点に関して、登記名義を移す側と移される側の二人の弁護士が記者会見で明確に次のように語っていた。
即ち、朝鮮総連に対するRCC(整理回収機構)からの約六百二十七億円の返還請求から総連本部の建物敷地を守るために所有権移転手続きをした。何故なら、在日朝鮮人は気の毒な立場であり朝鮮総連の本部建物は彼らの拠り所であり、その拠り所が無くなってはならないからである。
つまり、これは、所有権を保全するために所有権移転登記の手続きをしたと矛盾した説明をしている訳だ。所有権移転登記とは所有権が移転されたからするのである。保全するためにするのではない。全く説明になっていない。即ち、登記簿上で所有権が移転されたという仮装(虚偽)をしてRCCからの差し押さえを免れようとしたことは明白である。
登記簿上で虚偽の事実を仮装すれば、刑法百五十七条、公正証書原本不実記載罪に該当する。つまり、手段として二人の弁護士がとった行為は、ほぼ刑法百五十七条に該当すると「疑うに足りる相当な理由」がある(刑事訴訟法百九十九条)。
もっとも、支払い請求を受けている者が不動産を売り払って現金(売買代金)に換え、現金を隠してしまうことはありうる。このような場合は真実売買して所有権を移転しているから売買代金が支払われるのであり、刑法百五十七条には該当しない。債権者としては売買代金を差し押さえるという手段が残されている。
しかし、この度の朝鮮総連本部の所有権移転に関しては、売買代金が何時支払われるのか、全く目処が立っていない。
都心の一等地の土地建物の売買に於いて、数十億の代金をこれから不特定多数から集めますという相手に、集まる目処も立たないうちに早々と所有権移転登記をしてしまうことなどあり得ない。完全な偽装である。
次に、極め付けが登場人物である。
所有権移転登記を仕掛けた朝鮮総連側は、許宗萬責任副議長という人物。この人物はここ数年にわたる北朝鮮及び朝鮮総連の動きの中で実質ナンバーワンの実力者として登場してくる。
そして、朝鮮総連の代理人が元日本弁護士連合会会長、買い受けた会社の代表者は元公安調査庁長官また元検事長である。
元日本弁護士連合会の会長が、朝鮮総連の顧問弁護士であったことに唖然とした国民は多いと思う。しかし、この人が、北朝鮮による日本人拉致問題に蓋をする側であったり憲法九条の会の代表格であったり左翼的な思想傾向の持ち主であったことが報道されるに及んで、さもありなん、弁護士会とは偏った団体だなーと唖然とするだけで済む。
弁護士会においては、弁護士の名誉と社会的地位を守るために何か声明をだすのかなーと眺めておこう。
唖然とするだけでは済まないのは、所有権移転登記を受けた者が、元公安調査庁長官であり検察の最高幹部の一人であったことである。
言うまでもなく、公安調査庁の要調査対象団体は、朝鮮総連である。この公安調査庁の元長官が、名義移転を仮装してまでも朝鮮総連本部を保全することが社会正義であるかのように記者会見で説明している。
公安調査庁の要調査団体であるかつてのオウム真理教の本部は信者の拠り所であるから、それを保全することが社会正義であると、元公安調査庁長官が思い込んでいるのと同じではないか。
このような事態において、公安調査庁の情報が朝鮮総連に筒抜けだったということを誰が否定できるのか。
公安調査庁は、政界からは勿論、あらゆる情報を集めている。各政治家の思想傾向、地元や各所の集会で話していた内容、私的交友関係など。この情報を公安調査庁から受けた朝鮮総連が、あの責任副議長の指揮の下で効率的な政界工作を行っていたとすれば、我が国政界で長年拉致問題が封印されていたカラクリも説明がつく。
社会保険庁の解体どころではない。我が国の情報収集機関の存在意義の崩壊である。公安調査庁は無用なのではなく、もはや国益に反する機関になり果てているのではないか。我が国の存立を危うくしかねない事態ではないか。この度の登場人物が垣間見せてくれた闇は、ここまでの危機につながるのではないだろうか。
以上で本日の入力を終えたいと思う。別に、社会保険庁の労使協定を見習う訳ではない。拉致された日本人の救出に関する質問主意書に対する答弁書を観て考えたいからである。
今のところ言えることは、平成九年二月の橋本内閣が提出した答弁書から感じられた「国家の重大問題」という質問者と答弁者が共有した感受性・認識が、失われたのではないかという感慨である。
この度の答弁書は、総理大臣が拉致問題対策本部長になってからの答弁書である。この対策本部により、官邸の組織が整い、担当の役人も増えた。しかし、この政府からでた答弁は、かえってあまりにも官僚的になり、拉致問題が政治の領域から官僚機構のなかの血もかよわない無機質のルーティーンワークの闇に絡めとられつつあるかのような思いがする。
この度の答弁書に関しては、先ず、特定失踪者問題調査会の荒木和博さんが、コメントをするので(雑誌「諸君」や彼のブログで)参照されたい。
次に、今我が国の政界もマスコミも、極めて内向きである。東アジアの情勢は関係ないが如くである。
しかし、本年末から来年早々には、我が国に重大な影響を与える台湾の総統選挙、韓国の大統領選挙が控えている。そして、アメリカ大統領選挙と続く。ロシアの大統領は交代する。北京オリンピックを抱える中国の内部は、「のたうち回っている」というほどの情勢である。
そして、我が国の参議院選挙は、これらアジアの重大な地鳴りと地滑りの兆候に関して目を閉ざしながら行われるであろう。
しかし、読者諸兄姉、どうか、この深刻なアジアの動乱を乗り切る政治を創建する切っ掛けを見いだすための国政選挙であるという問題意識をもって臨んで頂きたい。
(了)