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http://mainichi.jp/select/opinion/kunieda/news/20071015dde012070042000c.html
風に吹かれて:in the U.S.A.
人間だって救ってほしい=國枝すみれ
ニューヨークの不動産王レオナ・ヘルムスレーさん(87)が8月末、愛犬のマルチーズに遺産1200万ドル(約14億円)を残して死んだ。彼女は「意地悪女王」として有名だった上に、強欲でもあった。「税金は庶民が払うもの」と豪語し、実際、脱税罪で19カ月間服役した。
彼女の行為を批判する声はあまり出なかった。米国人は他人からとやかく言われることを極端に嫌う。「自分の金をどう使おうと勝手」と本気で思っている。お金があれば、同じことをする人は多いだろう。米国には6800万匹の犬、7300万匹の猫が飼われている。合計すれば米人口の半分弱。子どもの数より多い。ペット関連市場は410億ドルに拡大している。
シャンプー、ヘアカットで8000円は普通。でも、ブランド服を着せ、マニキュアをする必要はあるのか。ペットホテルで、旅先から電話をかけてきた飼い主の声を流すのはいいとしても、個室のテレビで「101匹わんちゃん大行進」のビデオを流す意味はあるのか。
私は小学生のとき、「人間よりも動物の気持ちの方が分かる」と正直に話し、変人と思われたくらいの動物好きだ。だが、犬猫を可愛がる一方で、人間には異様に冷たい米国社会にはうんざりすることがある。
例えば、サンタモニカの海岸通り。4本の足に赤い靴を履いた飼い犬と散歩する人の脇で、年老いて衰弱した女性が歩道に横たわる。貧困地区の子供は10年前の教科書を使っている。米国人は、同じ町に住む人間ですら「仲間」と認識できない。
米国人の世界は、ますます狭くなっている。06年のデューク大の調査によれば、親友の数は過去20年で3人から2人に減った。「親友はいない」という米国人も2倍に増え、4人に1人に達した。コミュニティーも、友人も、家族も崩壊、最後に残ったのが犬と猫。確かにペットは口答えしないし、離婚もしない……。
今日もテレビで、動物救援組織の広告が流れる。悲しい目をした犬や猫がカメラをじっと見上げ、ナレーションが訴える。「何千匹もの犬猫がいじめられ、捨てられています。彼らにセカンドチャンスを与えてください。毎月たった18ドルの寄付金で救えます」。この広告を見るたび、「人間だって救ってほしいのに」と叫びたくなる。(ロサンゼルス支局)
毎日新聞 2007年10月15日 東京夕刊