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「チャイナリスク」は温暖化でも現れる〜日本の向き合い方を考える
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投稿者 あっくん 日時 2008 年 3 月 29 日 18:04:21: hhGgKkD30Q.3.
 

http://news.livedoor.com/article/detail/3571590/

「チャイナリスク」は温暖化でも現れる〜日本の向き合い方を考える
2008年03月27日11時44分コメント(2) トラックバック(0) ブックマーク
(これまでの 石井孝明の「温暖化とケイザイをめぐって」はこちら)

■中国の「世界一」の危うさ

中国のチベットで騒乱が発生しました。一日も早い沈静化を望み、亡くなった方のご冥福を祈ります。事態の評価は見る立場によって異なりますが、中国政府のチベット政策の負の部分が現れたものであり、また人権を抑圧した政策の結果であることは疑いありません。

実は、温暖化問題でも中国の行く末は世界に影響を与えます。

中国の二つの「世界一」をご存じでしょうか。一つは「貿易輸出高」、もう一つはCO2を中心とする温暖化ガスの一国当たり排出量です。2007年にはアメリカを追いぬいたという推計が出ています。

この状況は当面続くでしょう。IEA(国際エネルギー機関)の発表したエネルギー需給見通しでは、現状が続いた場合の「基準シナリオ」を示しています。そこでIEAは、2030年までに05年比で世界のエネルギー供給は55%増加、CO2の排出量は57%増加すると予測しています。世界全体で増加するエネルギーとCO2排出量のうち、60%は中国とインドによるものと推定しています。

中国の貿易と、CO2排出量の二つの世界一は、世界からの指弾を浴びそうです。今、アメリカとヨーロッパでは、「温暖化対策をしない国に対する貿易規制を行う」という政策が検討されています。アメリカ議会で審議の進む、規制色の強い「気候変動法案(リーバーマン・ウォーナー法案)」、またEUでも現在検討が進む2013年以降の温暖化対策案で、こうした制裁措置が盛り込まれているのです。

安全性から中国製品の不買運動「チャイナ・フリー」が世界に広がり、中国政府は対応に苦慮しています。「毒入り餃子」問題でも、日本の消費者の中国製品への懸念が広がりました。消費者を中心とした問題が、CO2でも起こりかねません。

もちろん、中国政府はそのことを知っています。07年に中国は、初の温暖化対策を公表。温暖化はこれまでCO2を排出してきた先進国の責務と強調します。一方で、主要政策として、中国は2010年までにエネルギー効率を20%まで向上させると誓約している。再生可能エネルギーの割合を引き上げるとしています。

■「平成三十年」に起こる?「中国発」酸性雨問題

ただ中国政府の意向通りになるかは分かりません。年率10%前後の経済成長の拡大に伴って工業生産が急増しているためです。

世界の鉄鋼の生産は1990年代には700万トン台でした。ところが2006年には1242万トンに急拡大しました。その理由は中国の鉄鋼の生産が01年の150万トンから06年に490万トンに急拡大したためです。鉄をはじめとした急速な工業化が、温室効果ガスの急増の一因となりました。

正確な数字は明らかではないのですが、エネルギー効率は、日本と中国ではまったく違います。日本と中国の製鉄所のエネルギー消費量(原単位)を比べると、日本を1とした場合、中国は楽観的にみて1.2、悪いケースでは1・5以上になります。GDP当たりのエネルギー使用量では、日本を1とした場合に、中国は8・5という数字です(いずれも05年推計)。中国のエネルギー効率が悪すぎるのです。

中国の経済成長を手放しで喜ぶ議論がありますが、その成長は環境面から見ると、非常に危険なものです。エネルギー効率の悪さは、化石燃料の大量使用を生みます。CO2の排出の急増だけではありません。中国のエネルギー需要の増加は、世界的な燃料価格の高騰、さらに大気汚染の一因にもなっています。

中国の環境問題は、一国だけの問題ではありません。広い視野で考えると、日本の九州地方には光化学スモッグなど、中国の大気汚染の影響が出始めました。エネルギー問題以外にも、海洋汚染、ゴミの漂着、黄砂の被害は西日本全体に及び始めています。作家の堺屋太一氏が近未来小説『平成三十年』で中国の大気汚染からくる酸性雨によって、日本の農業にダメージを与えるという予想をしていました。これが現実の問題になりつつあります。

■「協力」だけでいいのだろうか

温暖化問題、そしてそれと密接にリンクした中国のエネルギー・環境問題に日本はどのように向き合うべきでしょうか。「日本政府と産業界は、中国の産業の環境効率を改善するべきだ」。こうした簡単な答えを言うことはできます。

しかし、日本の協力は、中国の経済力の一段の強化をもたらすでしょう。また、環境技術は日本の産業界にとって、世界に優位を保つ道具です。これをライバルに、協力の形で渡すべきか、問題が起こります。
 
そして、中国は日本の協力を大切に受け止めるかは疑問です。二十世紀のアメリカの中国政策を描いた「失敗したアメリカの中国政策」(朝日新聞社)で、歴史家のバーバラ・タックマンが、次の言葉を最後に残していたと記憶しています。「彼らはアメリカが来ようと、来なかろうと、自らの道を歩んだ」。協力での善意を彼らが額面通り受け止めてくれるとは限りません。

中国に対して、私は複雑な感情を持ちます。これまで個人として、また私生活で、中国の方に大変お世話になり、個人としての中国人にはよい印象しかありません。「論語」などの偉大な文化にも親しみ、親近感を持ちます。そして日中戦争という両国の過去に対しても悲しみを持ちます。

一方、国家としての中華人民共和国に対しては、その政治体制の問題、軍事力の拡大に危惧を抱きます。そして、05年の上海暴動のような日本への敵意を見ると、戸惑いと恐怖を感じます。私のような感情は、平均的な日本人の感覚ではないでしょうか。こうした感情によって、環境協力での中国との向き合い方にも、複雑な思いを抱きます。

京都議定書の定めるクリーン開発メカニズム(CDM)という形を通じて、中国の環境改善のために、すでに日本のお金が中国に渡されはじめています。この資金の流れを太くするべきか、それとも日本の政治的意思をからめるのか、止めてしまうのか。私は現時点で正しい方向の判断ができません。読者の皆さまはどのようにお考えでしょうか。


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