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http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0711/200711_096.html
自分が地球に残された最後の1人になったら──という空想は誰しもが一度は抱くのではないだろうか。だが,もし全人類が突然いなくなったらどうなるだろう?作家でアリゾナ大学准教授のワイズマン(Alan Weisman)の新刊『私たちのいない世界』(The World without Us;邦訳は早川書房より来春刊行予定)は,そんな仮想世界の物語だ。この壮大な思考実験において,人類が消えた原因は特に触れられていない。そうした状況を単に想定し,それから数年後,数十年後,数世紀後までの各時代に起こるとみられる出来事を予想している。
もし明日,全人類がいなくなったら,マンハッタンの摩天楼が姿を消す日もそう遠くはない。ニューヨークのコンクリートジャングルがどのようにして本物の森に還るのか,ワイズマンの筆はその過程を描き出す。ワイズマンいわく「道路やビルなどインフラの大部分は人類が消えた直後から崩壊が始まる」。道路の清掃や維持管理をする人が消えると,大通りや高速道路は数カ月のうちにひび割れ,ゆがみ始める。数十年たつと,多くの住宅やオフィスビルは倒壊する。
一方,ありふれた物の中には驚くほど長い間朽ちないものもある。ステンレス製ポットは数千年たってもそのままかもしれず,かつて台所だった雑草茂る小山に埋まっていれば,よりよく保存される。プラスチックの中には数十万年後も無傷のものもある。微生物が進化し,それらを分解して“エサ”とする種が登場するまで,変わらぬ姿を保つだろう。
人がいなくなった地球について考察することは実益がある。「そうすることで環境問題に新しい角度から光を当てることができる」とワイズマンは言う。
著者(語り手)
Alan Weisman
最新刊の『The World without Us』(St. Martin's Press,2007)を含めて5冊の著作がある。雑誌への寄稿も多い。これまでにハーパースやニューヨーク・タイムズ・マガジンをはじめロサンゼルス・タイムズ・マガジン,ディスカバー,アトランティック・マンスリー,コンデナスト・トラベラー,オリオン,マザー・ジョーンズなどに執筆記事が掲載された。ナショナル・パブリック・ラジオやパブリック・ラジオ・インターナショナルに出演,パブリックラジオのドキュメンタリーシリーズを制作する独立系ジャーナリズム集団「ホームランズ・プロダクション」のシニアプロデューサーでもある。アリゾナ大学では国際ジャーナリズム学の教鞭をとる。
原題名
An Earth without People(SCIENTIFIC AMERICAN July 2007)
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