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【タラワ(キリバス)=仲川高志】地球温暖化に伴う海面上昇により、国土が水没の危機にひんしている太平洋の島国キリバスのアノテ・トン大統領(55)は本紙と会見し、「我が国は早晩、海に沈むだろう」と明言。
国家水没を前提とした上で、国民の脱出を職業訓練などの形で側面支援するよう、日本など先進各国に要請した。
首都タラワの大統領官邸で、30日、インタビューに応じたトン大統領は、キリバスの水没は不可避との見方を強調、「小さな我が国には海面上昇を防ぐ手だてなどなく、どうしようもない」と述べた。国際社会の取り組みについても、「温暖化は進んでおり、国際社会が(2013年以降のポスト京都議定書の枠組みなどで)今後、どんな決定をしても、もはや手遅れだ」と明確に悲観論を展開した。
また大統領は、温暖化に伴う海面上昇について「国民の平穏な生活を奪う『環境テロ』」と強く非難。京都議定書に参加しない米国、オーストラリアを名指しで挙げ、「我が国は存亡の危機にひんしているのに、高い経済水準を保とうとしており、極めて利己的だ」と批判した。
大統領は、10万人近くに上る国民すべての移住政策を、政府がすでに本格的に検討していることも明らかにした。大統領は、「たとえ受け入れ国で人気のない職業でも構わない。『環境難民』ではなく『熟練労働者』として移住させたい」と希望を表明。そのためには、まず、キリバス国内で職業訓練や語学習得を行う必要があるとして、日本や米国、オーストラリアなどに支援を訴えた。
側近によると、トン大統領は、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第4次評価報告書を重視。今世紀末に世界の平均海面水位が最大59センチ上昇するなどとした同報告書を「根拠」に、見通しを立てているという。
◆キリバス
太平洋の赤道直下、東西約3900キロ・メートルにわたって点在する33の環礁から成る。ほとんどが海抜3.5メートル以下。人口は約9万9000人(2005年推計)。
(2007年9月1日9時57分 読売新聞)
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