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【論説】 道路財源国会 1リットル25円の値下げより1キロ25円の撤廃を ガソリン代も“お得”にする「高速道路の無料化」…山崎養世
ガソリン国会、あるいは、道路財源国会が始まりました。
残念ながら、不毛の争いが続いています。
政府・自民党は、予算を人質に取る作戦に出ています。
ガソリン税などの暫定税率を維持しないと、4月から地方政府の財源に穴が開く、だから、
暫定税率を通せ、と言うのです。
今年の4月に暫定税率が切れてしまうことは、10年前から分かっていたことです。
暫定税率が今後も必要なのか、必要であったとしても、これまでのように道路に使うべき
なのかを議論する時間は十分にあったはずです。それをこれまでサボっておいて、
びっくりしたように、「4月からお金が足りなくなる!」と言うのです。
民間企業なら考えられないことでしょう。今後10年間の大きなお金の使い方の議論は、
2〜3年前から始めるものでしょう。もし、4月からお金がなくなると困りますからとにかく
お金をください、という事業部長がいたら、クビになるでしょう。
■ 年間8兆円の収入を死守したい自民党株式会社
もちろん、政府自民党が、こんな間際になって提案をするのは、議論をさせない
ためでしょう。道路特定財源こそ、戦後政治のビジネスモデルであり、権力の源泉です。
道路整備費が200億円しかなかった1952(昭和27)年に、田中角栄議員が議員立法で作った
道路特定財源は、道路予算が足りない時の臨時措置でした。
56年前の臨時措置が、400倍の年間8兆円ものお金が一般道路と高速道路の建設に
使われる今まで、そのままにされてきたのです。
自民党株式会社は、年間8兆円の収入を死守しようとしている、と考えれば分かりやすい話です。
権力の源泉だからです。ですから、いかに道路にお金がかかるか、いかに道路が必要か、
という説明が繰り返されます。外国はもちろん、民間の工事に比べてはるかにコストが高く
工期が遅いことへのまともな説明などあるはずがないのです。予算最大化が道路の目的だからです。
nikkei BPnet http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080205/146433/
■ 民主党が主張すべきなのはガソリン税の使い道を変えること
一方の民主党の、ガソリンを値下げしろ、という主張はポピュリズムです。
洞爺湖サミットで環境問題を議論する日本が、今年ガソリン税を下げましたと言って、
世界が納得するでしょうか。
環境を大事にする欧州では、日本より高いガソリン税を取っている国が多いのです。
環境と石油資源の有限性から考えて、ガソリンが高いことが、環境と資源の問題への
対応を進める力を持つのです。
その意味では、日本のガソリン税が高い、とは言えないのです。
問題は、ガソリン税などの道路財源が、相変わらず新しい道路を作ることに使われていることです。
そうであれば、民主党が主張すべきなのは、ガソリンの値下げではなくて、
ガソリン税の使い道を変えることです。その中から環境対策に支出するのは当然でしょう。
もっと当然なのが、高速道路無料化に、ガソリン税などの道路財源を使うことです。
年間2兆円の財源があれば、国が道路公団の40兆円の借金をすべて返済することができるからです。
借金を引き受けた時点で、高速道路無料化が実現できます。今は、高速道路ユーザーが
払っている年間2兆円のガソリン税などの税金が、一般道路の建設に流用されていて
高速道路に使われていないのです。その分を使って、高速道路無料化を実現するだけの話です。
そうせずに、国営のペーパーカンパニーと言える日本高速道路保有・債務返済機構なる組織は、
今後20兆円もの新たな借金をして今まで通り高速道路を作り、修繕する計画なのです。
そして、2050年までの平均金利が4%にとどまるという想定が崩れれば、巨額の国民負担が
発生するのです。 (続く)
■全国の高速道路の65%がムダになっている
今、高速道路無料化を実現することは、将来の新たな借金や金利上昇のリスクを、
すべて断ち切ることを意味します。
それだけではありません。国土交通省の発表によれば、通行料金が高いばかりに、
全国の高速道路の65%が、ムダになっています。平行している国道は混雑しているのに、
料金が高い高速道路が使われないからです。もったいない話です。
これこそ、資源のムダづかいです。
通行料金を無料にすれば、いまある高速道路が使えるようになります。
さらに、無料になれば、料金所での渋滞もなくなります。
そして、欧米並みに出入り口の数を増やせば、一般道路との接続もよくなります。
このようにして、今ある高速道路と一般道路の両方が使いやすく輸送力が上がれば、
新しい道路を作る必要は大きく減るでしょう。
そうなれば、税金のムダづかいが減るはずであり、その分、年金や教育に回す予算が
増やせるはずです。それがいやだという人は、税金のムダ使いで得をする人なのでしょう。
(続く)
■値下げしなくてもガソリン代が安くなる
いや、高速道路無料化より、ガソリンが1リットル25円安い方がいい、と言うかもしれません。
でも、高速道路無料化の方がお得です。
簡単な計算をしてみましょう。
50キロ離れた所に自動車で行くと仮定してください。
高速料金の基本は、1キロの距離について25円です。
高速道路を利用すれば、今は、通行料金は1250円かかります。
高速道路を無料にすれば、それがタダになります。
時速75キロで走れば、運転時間も45分くらいで済むでしょう。かかるのはガソリン代だけです。
高速道路の上は燃費がいいですから、1リットル10キロ走れます。
ガソリンは5リットルで済みますから、1リットル150円として、750円がガソリン代になります。
一方、高速道路無料化が実現せずに、代わりに、ガソリン税が1リットル当たり25円安く
なっていたら、どれだけコストはかかるでしょうか。その時は高い高速道路は使わずに、
一般道路を50キロ走るとします。時速40キロで走ったとして1時間15分かかる計算になります。
ガソリンはどのくらい使うでしょうか。
信号待ちや一時停止も多いでしょうから、燃費は低下します。仮に、高速道路より3割燃費が
低下すると1リットル当たり7キロとなります。その場合、50キロを走るのに7.1リットルの
ガソリンを使います。1リットルのガソリンが125円に値下がりしているとすると、890円かかります。
ガソリンの値下げがなくてもガソリン代が安くなることもあり得るのです。
でも、考えてみれば当たり前です。高速道路は、一般道路よりも燃費が優れているからです。
交差点も信号もなく、渋滞もはるかに少ないからです。
高速道路無料化によって、料金所をなくせばさらに高速の渋滞は減り、目的地まで、最短時間、
最小のガソリン消費で行けるようになります。ハイブリッド車のように、高速道路上では
燃費が向上する自動車では、ガソリンの節約効果はさらに大きくなるでしょう。 (続く)
■自動車ユーザー、国と地方政府、環境それぞれが“得をする”
高速道路無料化によって、道路予算のムダづかいがなくなるだけでなく、
ガソリンのムダづかいも減り得るのです。日本が環境立国を目指すのであれば、
ガソリン税は今のままで、その使い道を高速道路無料化や環境対策に変えていくべきです。
そして、道路財源全体の見直しを行い、地方に道路財源を配分し、節約した地方が、
年金や教育など他の目的に、自動車ユーザーからの税金を使えるように変えてこそ、
道路の改革の名に値するでしょう。
ガソリン税で高速道路無料化を実現するのが、“三方一両得”です。
自動車ユーザーは、お金と運転時間が節約できます。国と地方政府は、財源が確保できます。
ガソリンの消費が減って、その分、地球環境に貢献します。
今のまま道路を作り続けるよりも、ガソリンを値下げするよりも、
納得のいく解決策ではないでしょうか。
以上