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http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0712/200712_070.html
あなたがこの記事を読む30分ほどの間に360人の乳幼児が飢えと栄養失調で死んでいく。1分間に12人,それも絶え間なしに。1年間で600万人以上が亡くなる計算だ。しかし,これは氷山の一角にすぎない。世界人口の約1/8にあたる8億人もの人が,日々,食糧不足にさいなまれながら暮らしている。十分なビタミンやミネラルを摂取できていない微量栄養素欠乏症を含めれば,その数はさらに増える。その代表的な症状は,鉄分不足とそれに伴う貧血だ。
原因は食糧生産量の不足ではない。地球上には食べ物があふれ,栄養過多に陥る人が年々増えている。農業技術の進歩により,多くの食物を低コストで作れるようになった。情報通信技術の発達,流通の効率化とともにグローバル化が進み,食糧の長距離輸送が可能になった。地球上のすべての人に必要なエネルギー源とタンパク質を供給できるだけの食糧が,現時点でも生産されているのだ。
飢餓の根底にあるのは貧困だ。貧しい人は十分な食糧を購入できないだけでなく,農業をするための資金すら持ち合わせていない。しかも,学校に通えない子どもも多く,彼らは成人しても十分に収入の得られる仕事に就けない。その結果,さらに貧困が進むという負のスパイラルに陥っている。
だから飢餓をなくすには,貧困の解消に取り組まねばならない。希望はある。例えば,慢性的な飢餓に苦しめられているバングラデシュでは,貧困家庭の子どもが働く代わりに学校へ行くとその家庭に食糧が支給されるプログラムが実施されている。その成果として,栄養状態が改善されただけでなく,子どもが高いレベルの教育を受けられるようになった。
各国政府や国際機関,NGOなどは貧困解消に向けた努力をするべきだ。飢えている人はたいした交易相手にはならないし,国境を越えて不安定をもたらす。飢餓の撲滅は,飢えている人を助けるだけでなく,私たちすべての利益になる。
著者
Per Pinstrup-Andersen/Fuzhi Cheng
ピンストラップ=アンダーセンはコーネル大学で食糧・栄養・公共政策のH.E.バブコック記念教授および企業家精神学のJ. トーマス・クラーク記念教授を務める。コペンハーゲン大学の農業経済学の教授でもあり,2001年の世界食糧賞に輝いた。チェンはコーネル大学の博士研究員。
原題名
Still Hungry(SCIENTIFIC AMERICAN September 2007)