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http://www.labornetjp.org/news/2007/1197618935040staff01 から転載。
木下昌明の映画批評「暗殺・リトビネンコ事件」
ロシア国民の熱狂的支持の中
プーチン政権の「裏面」を告発
プーチン大統領の「信任投票」といわれたロシア下院選挙は与党が圧勝した。プーチン氏は来年5月の退任後も権勢を維持するという見方がもっぱらだが、選挙を前に「プーチンは“皇帝”になるか」と題するNHKの「クローズアップ現代」(11月29日)が放送された。大国ロシアの復活をプーチン氏に託す国民の熱狂的な支持を背景として、新たな権力支配が画策されることに危惧を抱く番組だった。
そのプーチン氏の強権政治を内部告発していた人物がいた。アレクサンドル・リトビネンコ。FSB(ロシア連邦保安庁=旧KGB)の元中佐で、プーチン氏がその長官時代の部下だったが、庁内の汚職を告発したことから二度も投獄された。身の危険を察知して亡命するものの、昨年11月、放射性物質ポロニウムによって何者かに暗殺された。
ドキュメンタリー「暗殺・リトビネンコ事件」のアンドレイ・ネクラーソフ監督は5年前からリトビネンコ氏に密着していた。その間のインタビューを中心に編集された映画は「私の身に何かあったら、このビデオを公表して世界に伝えてほしい。彼らは暗殺など平気だ」と語るシーンから始まる。彼らとはプーチン氏の権力母体FSBで、その実体は「秘密警察で、政権を維持するための機関」という。
暗殺容疑をかけられている元KGBのルゴボイ氏(今回の下院選挙で当選)や、プーチン政権を批判し同時期に殺された女性記者のポリトコフスカヤさんのインタビューもある。彼女は「(2002年のモスクワ)劇場占拠事件の犯人の一人がいまプーチン政権で働いている」と証言する。
リトビネンコ氏はチェチェン戦争そのものがFSBのテロ工作によるもので「民主国家」を統制国家に変えるために企図した、と暴露する。いずれ、国際政治の裏面を描いた映画として歴史の評価を受けるかもしれない。(木下昌明)
*映画「暗殺・リトビネンコ事件」は12月22日から東京・渋谷ユーロスペースでロードショー
「サンデー毎日」07年12月23日号