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「カトリーナ」2年のニューオリンズ 戻れぬ市民 進まぬ復興
【東京新聞】2007年8月26日 朝刊
米南部に死者約千三百人、被害額約八百億ドル(約九兆円)という米国史上最悪の自然災害をもたらしたハリケーン「カトリーナ」が上陸し、二十九日で二年。運河の決壊で市の八割が冠水し、被害が集中したルイジアナ州ニューオーリンズはいまだ復興が進まない。街に帰れない人たちは今も約二十万人。そのしわ寄せは、政府が提供する狭いトレーラーハウスに住まざるを得ない低所得者の黒人層に重くのしかかっている。 (ルイジアナ州バトンルージュ近郊で、石川保典)
ニューオーリンズの北約百六十キロの州都バトンルージュ近郊。連邦緊急事態管理局(FEMA)がつくったトレーラーハウスパークの一つ「ルネサンス村」には、五百余りの真っ白なキャンピングカーがひしめく。
黒人女性のラトヤさん(23)のハウスは十畳程度の広さ。そこに、七歳から三カ月までの彼女の子供四人と男友達、従妹(15)、めい(4つ)の計八人が住む。二段ベッドを含む四つのベッドと小さなキッチン、ソファ、テーブル。「狭いし、子供が遊ぶ場所もない。ストレスがたまるわ」
FEMAによると、被災者が仮住まいするトレーラーハウスは、同州でまだ約四万四千もある。ニューオーリンズはアパート不足で家賃は高騰している上、トレーラーハウス住まいでは新たな就職先も見つからず、移り住みたくても身動きできない。
ルネサンス村のジェームズ・ウォーラーさん(49)が被災前に住んでいたニューオーリンズの借家は、二メートル余りの水につかったため、修復後の家賃が月千二百五十ドルと三倍に跳ね上がった。「時給二十ドルの仕事を見つけなければ帰れない、というわけさ」。糖尿病と高血圧を患う彼の代わりに妻が仕事を探すが、七十カ所の応募先からは返事すら来なかった。フライドチキンのチェーン店で働く十八歳の息子の収入だけが頼りだ。
元農地に造られた同村は街から遠く、バスも街まで一日一往復と不便。車のない住人は食品の買い出しにすら苦労する。FEMAは非政府組織(NGO)を通じて就職あっせんを手助けするが、「履歴書に住所をルネサンス村と書いただけで、雇ってくれない」(ウォーラーさん)という。
しわ寄せ 低所得層に
FEMAはニューオーリンズの復興が進まないため、トレーラーハウスや借家の家賃補助を二〇〇九年三月まで延長した。だが、今は無料のトレーラーハウスは、来年三月から月五十ドル、〇九年三月までに徐々に六百ドルまで上げて移動を促し、閉鎖する予定だ。「どうやってここを離れろというのか」とウォーラーさんは怒る。
ハリケーン前に四十五万人だったニューオーリンズの人口は現在、推定二十五万人。この二年で五万人しか戻っていない。住宅再建を支援する連邦政府の補助金が支給され始めたのは今春から。家の修復はようやく緒に就いたばかりだ。被災者が運河の再度の決壊に不安を抱いていることも帰還を遅らせている。
米工兵隊は運河の決壊個所を補強。メキシコ湾から湖を通じ運河に逆流する水をせき止める防潮扉も一部に造ったが、カトリーナ級のハリケーンでは依然、市の多くが再び冠水する見込みだ。政府は、議会が承認した七十一億ドル(約八千二百五十億円)に加え、七十六億ドル(約八千七百四十億円)の追加支出を議会に求めて一一年までに運河全体を補強する予定だ。
市は六月、十一億ドルをかける復興プランを発表した。ただ財源見通しはなく、完全復興には十年以上はかかるという。
貧しい黒人が多く、犯罪が多発しながらも、ジャズ発祥の地として特異な文化性が観光客を引きつけてきたニューオーリンズは、独特な街のにおいを失うかもしれない。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007082602043956.html