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『タンタン』苦境 植民地時代コンゴ舞台 ベルギーの漫画【東京新聞】
2007年8月22日 朝刊
世界中で人気を集めるベルギーの漫画「タンタンの冒険」シリーズの一つで、アフリカのコンゴ(旧ザイール)が舞台となった作品が人種差別的、植民地主義的だとして、書店からの撤去や出版禁止を求める動きが欧州を中心に広がっている。ベルギーにとって植民地時代の負の遺産を世界中に印象づけると同時に、国が誇る世界的ヒーローの失墜になりかねないだけに、悩ましい事態となっている。 (ロンドン・池田千晶、写真も)
タンタンシリーズは、ベルギーの漫画家エルジェ(本名ジョルジュ・レミ、一九〇七−八三)が生んだ、少年記者タンタンと相棒の白い犬スノーウィが世界中を冒険する物語。問題となっているのは、コンゴがベルギーの植民地だった三〇−三一年に発表された「タンタンのコンゴ探検」で、日本でも今年一月、翻訳版が出版された。
一連の騒動は英国から始まった。今年七月、市民からの指摘を受けた政府系の人種平等委員会が、「人種的偏見に満ち、黒人が野蛮で能力が低い未開人として描かれており受け入れがたい」と批判する声明を発表。書店に対し、販売方法に配慮するよう呼びかけた。
これを受け、英国内の大手書店の多くは、それまで児童向けコーナーに置いていた同書を成人向けコーナーに移動。七月下旬には南アフリカの出版社が、公用語の一つであるアフリカーンス語版の出版停止を決めた。
こうした中、おひざ元であるブリュッセルの大学に通うコンゴ出身の学生が八月初め、出版停止を求める訴訟を提起。「植民地主義のプロパガンダだ」と主張し、一ユーロ(約百五十五円)の損害賠償を求めている。
同書では、タンタンが運転する車が機関車を横転させた際、黒人を怠け者としてしかりつけ、働くよう諭すシーンがある。また、タンタンが病気の男性に薬を与えるとすぐに回復し、妻から「偉大な白人」と両手をついてあがめられるなど、白人が黒人の支配者のように受け取れる描写が出てくる。
さらに、動物に向かって銃を連射し、殺す場面も繰り返し出てくる。
こうした点から、同作品は古くから批判にさらされ、作家のエルジェは戦後の四六年の改訂の際、植民地支配に関する部分だけは削除している。
英語版は長い間白黒版のみで出版され、子ども向けのカラー版が出たのはつい二年前。巻頭には、「後に作者自身も認めているように、当時の欧州人のステレオタイプ的な見方に基づいてアフリカの人々が描かれ、不快に感じる読者もいるでしょう」とのお断りがつけられるなど、一定の配慮はなされてきた。
タンタンシリーズは二九年以降、新聞などに連載され、単行本は全二十四冊にのぼる。原作はフランス語だが七十七言語に翻訳され、二億部以上が販売されている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007082202042874.html