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市民の顔、国家の顔【東京新聞】
2007年8月19日
まだ一年以上先だというのに、アメリカ大統領選挙は本戦モードだ。何とも気の早い、と思う半面、万策尽きた感もあるイラクの局面打開を次期政権に託したい米国民の心情の表れかとも思うと、妙に納得もする。
アイオワ州デモインで開かれる党員集会による候補選びが本格的なスタートになる。昔話で恐縮だが、一九八八年、デューク大学の客員ジャーナリストとして短期米留学していた時、その党員集会を初めて取材した。民主主義の本家アメリカ。一市民に至るまでどんな高度な論議が戦わされるのか、わくわくするような期待感を抱いていたのを覚えている。
実際に現場に行くと、雰囲気は日本で言う町内会の寄り合いだった。老若男女が手弁当で集会所に集まる。学生ボランティアや党関係者が会議の進行を担当、テーマ別に小サークルの話し合いを繰り広げ、候補者への支持を訴える。部外者の筆者に「これは何のプレジデント(会長)を選ぶ会なの?」と真顔で聞くお年寄りもいて、グラスルーツ(草の根)の原点をかいま見た気持ちだった。
今を遥(はる)か、の冷戦時代。以後四度の大統領選挙の間にベルリンの壁は崩れ、湾岸戦争、民族紛争、グローバル化、そして9・11…。アメリカは「宗教国家」の地顔を露呈し、今やその力を持て余し、身の置き所を探しあぐねるかのようだ。
党員集会で、身近な問題を素朴に話し合っていた草の根の市民の表情と、今の怒れるアメリカ国家像とがなかなか結びつかない。外報部から論説に移ったことを機に、じっくり考えたいと思う。 (安藤徹)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2007081902042156.html