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http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2008/02/20080228s01.htm
社 説
九条を守る首長の会/憲法は地域住民の隣にある
憲法九条(戦争放棄と戦力の不保持)の改正反対を主張する宮城県内の市町村長経験者14人が今月初め、「憲法九条を守る首長の会」(会長・川井貞一前白石市長)を結成した。
「……九条の会」といった各界の組織は全国で5000を超えると言われるが、「首長」と名のつく会は川井会長が言っている通り、恐らく初めてだろう。
地域社会でも先の戦争体験の風化が進む中、首長の会の結成は「住民と戦争」あるいは「自治体と憲法」について重い問題を提起しているのだと思う。
自民党が2005年につくった「新憲法草案」は現憲法九条一項の戦争放棄を維持した上で二項の戦力不保持を変更、国の安全保障や国際平和協力のため「自衛軍」を創設するという。
かいつまんで言えば、集団的自衛権か個別的自衛権かは別にして、日米同盟関係の変化に対応しながら国際社会で発言力を増すためには相応の軍備(自衛軍)が必要だ―との理屈が同党の九条改正論の裏側にある。
これに対し、地方政治には縁遠いとみられてきた九条にあえて着目した理由について川井氏は「住民の安全安心など、戦争がひとたび起きれば吹き飛んでしまうからだ」と言っている。
住民生活の向上を政治判断の最大基準にしなければならない市町村長の経験者だからこそ、九条改正に厳しい目を向けざるを得ないということだろうか。
川井氏の発言は、能動的な外交やグローバリズム時代を重視した九条改正論と自治体住民の意識の間にはまだまだ大きな開きがあることを浮き立たせる。
憲法改正の手続きを定める国民投票法が昨年5月成立した。
「憲法は不磨の大典ではないのだから改正の自由を確保しておくべきだ」といった率直な世論に後押しされてのことだ。
しかし、法を成立に引っ張ったのは九条を柱とする憲法改正に前のめりなほどの意欲をみなぎらせた安倍晋三内閣だった。
続く福田康夫首相の登場で安倍カラーは消されて改憲熱も冷めたかに見えるが、改憲論はいつ再燃しても不思議はない。
そうした重苦しい空気を背景に、国民投票法の成立効果とも言える現象が広がっている。
明確な九条改正、九条を維持した上での憲法改正、そして護憲。それらを求める動きは政党レベルだけでなく、意識的な市民団体にまで見られるようになった。「……九条の会」のような組織もその一つと言えよう。
その中で、九条改正に異を唱えつつ改憲問題にアプローチしようとする「首長の会」の登場は特別の意味があると考える。
川井氏はかつて自民党籍を持ったが、市長時代に自民党の公約を強行したわけではあるまい。自治体の首長は住民を意識するほど政党イデオロギーに縛られまいとする。
そして自治体の住民は政党政治の思惑に左右されない行政のサービスを受けることになる。
「首長の会」の主張はこうした「普通の住民」の集まりである地方自治体からの発信だ。幅の広い憲法論議に向けて一つの窓を開けたと言えるだろう。
2008年02月28日木曜日