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<沖縄・文学・憲法>自決強制裁判への決心など/大江健三郎さんに聞く(上)〜(下)【しんぶん赤旗】(どこへ行く、日本。)
http://www.asyura2.com/07/kenpo2/msg/158.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 11 月 26 日 11:13:51: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://ameblo.jp/warm-heart/entry-10057218401.html から転載。

2007-11-26 09:34:11
gataro-cloneの投稿

<沖縄・文学・憲法>自決強制裁判への決心など/大江健三郎さんに聞く(上)〜(下)【しんぶん赤旗】
テーマ:憲法

以下は「しんぶん赤旗」紙面からの直接貼り付け。(上)…11月24日付1面 (中)…11月25日付1面 (下)…11月26日付9面

特別インタビュー 沖縄・文学・憲法(上) 
大江健三郎さんに聞く 自決強制裁判への決心

九条の会の呼びかけ人の一人である大江健三郎さんは、沖縄の集団自決問題をめぐる裁判の被告でもあります。先日、法廷で証言に立ったばかりですが、今度は新しい小説『膿(らふ)たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』(新潮社)を刊行しました。社会的活動と創作の両面で多忙ななか話を聞きました。 (聞き手・北村隆志)

 ―沖縄の集団自決について軍の強制を否定する教科書検定に対して、沖縄で大きな怒りが起きています。この問題と経過をどう見ていますか。

大江 沖縄では集団自決という悲惨な出来事があり、慶良間(けらま)列島の二つの島で七百人に及ぶ人たちが自殺を強いられました。誰が強制したか?

    ■事実

 集団自決が軍の強制で起こったということは、沖縄の人間は誰でも知っています。本土の人間が知らないだけで、沖縄の人から語ってもらえば、これは事実だとすぐ認識できるものです。戦後から現在まで六十二年間、誰も集団自決が軍の強制によるという事実を疑ってはこなかった。

 ところが「新しい歴史教科書をつくる会」の人たちが、これは軍の強制ではないと言い始めた。

 この間問題の一つのきっかけとして、ぼくの『沖縄ノート』(岩波新書)について、渡嘉敷(とかしき)島の守備隊長(故人)の家族と、座間味(ざまみ)島の守備隊長にとって名誉棄損であると、ぼくと岩波書店が告訴された。

 ところが、判決はもちろん、まだぼくに証言の機会もないうちに、この裁判を口実に、集団自決が軍の強制かどうか疑問視されているからこの項目を教科書から取り除くようにという指示を、文部科学省が発したわけですね。こんな不自然なことは政治家が介入しなければ起きないことです。

 その教科書検定の結果は、三月三十日の午後に公表された。ところがその日の午前中の裁判で、原告側が集団自決は軍の強制だという項目は教科書から取り去られることが決まった、われわれの勝利だと発言したんです。明らかに教科書を検定する人たちと、ぼくらへの裁判を起こした人たちがつながっていることを示したと思います。

 ぼくは裁判を通じて、軍の強制があったことをどのように信じて、この本を書いたかを発言しようと思っていました。九日にその証言があったのですが、その準備のために、小説家になってから五十年間続けてきた、毎日一時間は計画的に英語かフランス語の本を読むという習慣を、初めて半年間やめました。

 来月二十日すぎに結審され、年内か来年早くに判決が出るようです。沖縄の集団自決は軍の強制だという文章が、問答無用で教科書から取り除かれる風潮では、ぼくらの裁判も楽観できません。

    ■72歳

 負けることがあれば、私は、最高裁に至るまで上告し続けようと考えています。もう私は七十二歳ですから、もしかしたらそれが私の社会的な意味での最後の仕事かもしれません。どういう判決があろうと、それはやる決心をしているのです。     (つづく)

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特別インタビュー 沖縄・文学・憲法(中) 
大江健三郎さんに聞く 「意志的な楽観主義」で

 ―新作『臈(らふ)たしアナベル・リイ 総毛立ちつ身まかりつ』で、占領軍の青年からうけた性的トラウマを抱え続けるサクラという女性は、戦後日本の比喩(ひゆ)のように思いましたが。

 大江 社会的活動に参加するときは、自分のやることに小さくてもどういう意味があるかを考えて、例えば九条の会に行きます。

 沖縄の集団自決の問題でも、教科書から事実を取り去ろうとする勢力に対して、ぼくは『沖縄ノート』の一行も取り消さないことを示して、被告として裁判を受けています。

 先日の証言のような時は大きい枠組みで整理して考え話そうとします。

    ■小説

 でも小説を書くときは、子どもの時に見た、本当にきれいなアナベル・リイという少女についてのエドガー・アラン・ポーの詩、そこから思い描いたイメージを、七十を過ぎて思い出すことから始めます。

 アナベル・リイの役を子どもの時にやり、それがきっかけで女優になったサクラが主人公なんです。彼女はぼくと同い年です。しかしよくよく思い出をたどると、彼女は映画を撮った占領軍の青年に暴行されていた。三十年前にそれを知って精神的な病気になった。そしていま、自分の中の傷ついた少女を恢復(かいふく)させるために再び映画を撮るという小説です。

 戦争直後、ぼくたち子どもにとっての頭の上を覆っていた、占領軍の大きい黒い雲のようなものは書いています。それを少女の経験として小説化していくということが問題で、政治的枠組みの小説を書いているということではないんです。ただ読んだ人が占領下のいろいろな出来事を思い出してくだされば、深く理解してもらえるとは思います。

 ―小説の最後は今までにない明るい希望が感じられます。

 大江 老年の人間として、もうあれはできない、これもできないと晩年の仕事についてジタバタ考えるのはやめました。今の年齢で自分ができる小さいことをやってみようと。そうするとぼくは次第に楽観的になってきました。

    ■納得

 ぼくが十七年間友人だったエドワード・サイード(パレスチナ系アメリカ人の文化理論家)は、パレスチナ問題を人間の側から解こうとして働いて、四年前に白血病で亡くなりました。見送った友人たちの話を聞くと、彼は「意志的な楽観主義」を持っていた、自分の意志で明るい将来を信じるという姿勢で最後の六カ月ほどを生きたといいます。

 ぼくは最初それがよく分からなかった。ところがこの小説を書きながら、今できる一番明るい締めくくりをしようと考えた。そのように考える態度が「意志的な楽観主義」ではないかと納得しました。     (つづく)

 (下)は26日付学問・文化欄に掲載します。

―――

 訂正 昨日付本欄で、三月三十日の「午前中の裁判」は「午後二時ごろの裁判」の誤りでした。同日の教科書検定の結果公表が「午後」とあるのは「夕方」です。

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特別インタビュー 沖縄・文学・憲法(下) 
大江健三郎さんに聞く 憲法が一番語られた3年間


 ―今度の小説は「恢復(かいふく)」がキーワードになっていますね。

 大江 そう読みとっていただければ、うれしいです。光という子どもが生まれてから四十数年、その間で一番大切なことばが「恢復」でした。しかし小説のなかでこのことばを使ったことはあまりなかった。

 自分の息子のことにかかわらせて考えると、なにかが治るとは、自分で決意して自分の力で恢復するものだと思います。自分がどのように傷ついているかをはっきり認識して、力を込めて恢復しようとする。この小説のサクラにとってその手続きが映画を作ることだった。

      ■星空

 その映画の最後の場面、音楽がひびいて星空が映る。その星空の意味に、書いた後で気がつきました。

 ダンテの『神曲』がありますね。ダンテと、その先生格の詩人が、地獄をめぐって煉獄(れんごく=注)にあがり、さらにダンテだけ天国に行くという旅の物語です。

 地獄は穴ぼこみたいなもので、上が閉じていて空がないんです。煉獄はわれわれ人間の世界とつながっていて、空があり、夜は星が輝く。天国はそのまた上ですね。『神曲』の地獄篇(へん)の最後は、さあ煉獄にのぼっていこうという一行なんです。それが煉獄ということばを使わずに「空に星が輝くところに出ていこう」と書いてある。

 サクラは少女時代からの苦しい地獄のような人生を乗り越えて、いま煉獄へいく、これから本当の救いに向かっていく場所に出るんだと、そういう意味なんです。

 ―呼びかけ人である九条の会は六千七百を超えました。

 大江 教育基本法は作り替えられてしまいましたが、九条の会では憲法と教育基本法を重ね合わせて話しています。

 「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化」という教育基本法のことばに励まされて、高校・大学と進み、ずっと仕事をしてきて、教育基本法を忘れることはなかったのです。

 ところが戦後四十年もたつと、ぼくが教育基本法について書くと、からかわれたりする感じがありました。教育基本法はあるのに、それを考えもしない人たちが多かったですよ。

 三年前に九条の会が始まった後、どこに行っても九条の会に参加している人に会うようになりました。憲法を読んで、前文について詳しく知っている、変えられる前の教育基本法をよく覚えている、そういう人に数限りなく会ってきました。

      ■9条

 この三年間はぼくの七十二年間の人生で、憲法と教育基本法が一番よく語られてきた三年間だったと思うんです。ぼくが中学生だった、憲法・教育基本法が施行されてからの三年間を超えるくらいです。

 それが政治的な力を持つかどうかは専門家に任せますが、小説家として言うと、憲法にどういう考え方が表現されているかということが、久しぶりに国に行き渡った時期がこの三年間だった。そのために九条の会は役に立っていると思います。十人話せばその中の何人かは知っていてくださる、考えてみれば大きい運動です。       (おわり)

―――

 『臈(らふ)たしアナベル・リイ総毛立ちつ身まかりつ』あらすじ

作家の「私」の前に突然、古い友人の木守が現れる。30年前私は国際的な映画プロデューサーだった木守と、米国に住む日本人女優サクラと映画製作に取り組んだが、スキャンダルがおきて中止になった。木守は、その後精神病院に暮らしていたサクラの新しい企てを持ってきたのだった‥・。

 

注・煉獄

カトリック教で、死者が天国に入る前に、その霊が火によって罪を浄化される場所。地獄と天国の間。


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