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政治家を国際的座標軸から分析してみた 2007/10/13
国会論戦は本格化しています。
http://www.news.janjan.jp/government/0710/0710113760/1.php
ここで、皆様の議論の一助になればと思い、「政治家の国際的な座標軸比較分析」を行ってみたいと思います。
日本は基本的にアメリカに従属してきた以上、海外の政治家の座標軸も必要と考えます。
むろん、座標軸はいろいろとり方がありますし、皆さんもご自分でご自分なりのイメージを描いて整理されたら良いと思います。
私は縦軸に人道主義⇔事大主義、横軸に軍事力不活用⇔軍事力活用をとりました。
人道主義とは、言い換えれば、「他者への共感」、他者への想像力に基づいた行動です。
事大主義とは、ここでは、極論すれば、自分さえ良ければよい、という主義です(むろん、日本が経済発展途上の段階では「事大主義」もひとつの選択肢だったと私は理解しています。他国を省みる余裕はない、あるいは、当時の民主主義の発展段階で、国内でもきめ細かなセーフティネットを張る余裕がなかったという議論はありえます。)。
軍事力の不活用、活用については、読んで字のごとくです。
この図では、国内政治家や政治勢力のほか、外国も含めてマッピングしてみました(ただし、いわゆる先進国だけという限界はありますが)。
■小沢さんと北欧の類似性
小沢一郎さんは、右上です。国際治安支援部隊(ISAF)参加は、やはり軍事力活用である。しかし、彼の視点は、アメリカ・ブッシュ政権に左右されるわけではない。
「国連活動への参加と同時に、テロを根本的になくすために、テロの原因を取り除く民生支援を全面的に展開すべきだと考えています。つまり、貧困を克服し、生活を安定させることです。銃剣をもって人を治めることはできません。これこそが迂遠なようでも、テロとの本当の戦いだと確信しています。」(民主党はなぜ自衛隊の給油活動継続に反対なのか)という彼の言葉がそれを示しています。
国で言えばノルウエーが近いと思います。ノルウエーは私が訪問した際もアフガンへのISAFへ出撃する装甲車が出て行く場面を見ました。
一方で、国連が、このたび、出産時に死亡する女性、赤ちゃんを減らすためのプロジェクトをする際、同国は率先して10億ドルを拠出するとしています。人道主義を基本として、「テロなどの根本原因を除きつつ」、現に起きている無政府状態に対しても対応するという姿勢です。
■クリントン大統領とブッシュ大統領の違い
また、アメリカ人で言えば、ビル・クリントン元大統領(在任:1993年−2001年)があえて言えば近いと思います。昔の小沢さんがアメリカよりだったのに今は変節したと「ネオコン」の方々はよく論難しますが、クリントンさんと小沢さんが比較的近かったと思えば、その非難は当たっていません。
彼の手法は、国連のお墨付きを重視したものでした。そして表面上は人道主義的でした。むろん、旧ユーゴで劣化ウラン弾を大量使用するなどその罪は重いといえます。アフガンやイラクも空爆しています。民主、共和どちらにせよやはり軍事力を派手に活用するのです。
現大統領のブッシュさんは、右下です。すなわち「民主主義を広げる」というが、それはあくまで、「アメリカの安全のため」という利己的な目的です。彼は、少しでも自分の言うことを聞かない国があると気が気でなく、殴り倒さないとアメリカはテロにあう、と信じている節があります。
むろん、彼を取り巻きの「ネオコン」が利用して、軍事産業がぼろもうけしているわけです。
■類は友を呼ぶ
安倍晋三さんも、ラジカルな右下です。彼もまた、とにかくアメリカに追随しつつ自国のことしか頭にない。そして、集団的自衛権行使=アメリカと一緒に海外で戦争しまくり路線を歩もうとしました。しかし、経済政策で失敗し退場しました。また、終盤ではアメリカの北朝鮮政策変更に抵抗し、アメリカに煙たがられた面もあります。
元総理の小泉純一郎さんは、安倍さんよりはやや緩やかな右下です。彼は、ご都合主義で、大昔は、PKOに反対していたことが有名です。どちらかというと、単なる事大主義ないしポピュリズムといったほうがいいかもしれません。
そんなブッシュ・小泉グループが徒党を組んだのは当然です。類は友を呼んだわけです。
現総理の福田康夫さんは、かなりソフトな右下です。小泉さんらラジカルなネオコンを延命させる装置として登場しているように見えます。彼の役回りは、小沢さんを「自民党よりISAF参加がひどい」と論難し、民主党の人気を落とすことです。それにより、対米従属主義者の小泉さんや安倍さんに近い人(安倍さんご本人は復活は難しいだろうがその周囲の人たち)を温存するのです。
■あるべき構図構築怠った左翼
共産、社民は、左下の「一国平和主義」のように見えてしまったため、衰亡したともいえます。実はこれは、吉田茂さん、池田勇人さんらとあまり変わらない立ち位置です。同じ55年体制の同志なのです。
そして、そうした吉田的自民も、共産・社民も人道主義の立場に外交でも内政でも立ちきれなかったのではないか?
「憲法9条を守らないと環境も人権も守れない」ということをよく左翼の指導者から伺います。それはそうですが、しかし、たとえば「明日のメシが心配だ」という人々の悩みを、「小事」として切り捨ててきた感があります。
口先では平等を言いながらも、実際は、男性正社員中心だったりした。そのため、信望を失い、人道主義(「国民の生活が第一」)に立っているように見える民主党にお株を奪われたのです。
私は、左下は、アメリカに緩やかに従属してきた(できた)、また性別役割分業を前提とした日本型社民主義とセットの55年体制の遺物だと思います。
従って、今後は、力にはなりえない。あるべき左翼は左上であると思います。内政でも外交でも、個人を大事にするきめ細かな政治です。
実はこれは結構、難しいのです。リーダーには,感性、実務能力、理論合わせた高度な総合力が求められます。私が見たところ、小選挙区での当選経験もあるほど地元で幅広い支持を得ている辻元清美さん、自民党支持層からも幅広く支持されている広島市長の秋葉忠利さんあたりが、左上ではないか、という感触を持っています。
一方、右下も、ブッシュ大統領の失敗でもう、淘汰されなければいけないことが明らかだと思います。
これからは、右上と左上の間での政策論争という形になっていくと思います。
すなわち
小沢民主党=一定の福祉国家+人道主義に基づいた援助をベースに武力もノルウエー的に活用する。
あるべき護憲派=福祉国家+人道主義に基づいた援助をベースに非暴力の紛争予防策
こういう論争になっていくべきだと思います。
■怖いのは自民(右下)延命
ちなみに、日本が海外に出るとアジア諸国が反発するという論理が左下的左翼からは良く出ていました。
しかし、小沢一郎さんは、アジアへの謝罪にも、戦後責任総括にも積極的です。
1995年の戦後50年に際して、国会決議をしましたが、当時の新進党(海部さんが党首だが事実上「小沢党」でした)案の方が核廃絶などに踏み込み、私は評価しています。被爆者援護法にしても新進党のほうが国家責任を盛り込んでいました。
小沢さんの国際貢献と戦争反省はセットです。
右下の安倍的ネオコンのほうが戦争への反省がなく、アメリカからもかえって警戒されかねません。右上は案外「うまくやる」。だからこそ、左翼はしっかりしないと民主党を批判するだけでは衰退しますし、下手をすると右下をアシストするだけになる。
かつて、左下的な左翼やリベラル派は、「小沢さんが怖い」という感情論に走り、自社さ政権をつくり、結果として、右下を含む自民党を延命させてしまったのです。(無論実際、彼が怖そうなイメージをかもし出してしまったのは事実。)
そして、左翼が衰退し次第、自民党内の右下勢力が暴走し、ネオコンがこの6年半日本の政治を席巻したのです。
私自身も恥ずかしいことだが、小沢さんが怖いと思い込み、自民党のネオコン化が進むまで自民党に投票してきたことは一生の不覚でした。
今の局面で怖いことは、右下のネオコン勢力が、一見リベラルな福田さんの「ご利益」で、延命することです。そうではなく、時代を、右上vs.左上の論争ができる時代に早くもって行くことです。
(さとうしゅういち)