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http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=440460033
改憲志向の安倍晋三首相の下、憲法施行六十年の節目を迎えて推進役を果たしてきた自民党が参院選で惨敗し、憲法論議はすっかり冷え込んでしまった。憲法改正手続きを定めた国民投票法成立で盛り上がりを見せたあの改憲派の熱気はどこへいったのか。
国民投票法に「設置」が盛り込まれた衆参両院の憲法審査会は、参院選で躍進した民主党の反対によって臨時国会で始動できなかった。民主党は秋の次期臨時国会でも引き続き反対する方針。このため憲法改正論議の舞台となる憲法審査会の発足はしばらく宙に浮く公算が大きい。
首相が強い意欲を示す集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈の変更についても、連立政権のパートナーである公明党が明確に反対する意思表示をしている。首相にとっては、どうにもこうにもならない状況だが、こうなった理由ははっきりしている。
首相自らが選挙の争点にしたいと表明し、「三年後の国会で憲法改正発議を目指す」と自民党公約の冒頭に掲げて臨んだ参院選の敗北は、憲法への対応を含む政府、与党の政治運営、政策の優先付けに対して民意が「ノー」を突きつけたといえるからだ。
参院選の結果を受け、民主党や公明党が慎重姿勢に転じたのも、こうした民意を考えれば当然のこと。首相もこの結果を謙虚に受け止め、前のめりで進めてきた改憲路線を反省すべきだろう。
「前のめり」の好例が国民投票法の成立過程だった。
改憲の発議に必要な衆参三分の二以上の合意形成を目指して、自民、公明、民主の与野党三党の実務者が慎重に法律の内容を検討した。あと一歩で合意できるところに来たにもかかわらず、参院選をにらんだ首相の強硬姿勢と、それに対抗する民主党の小沢一郎代表の思惑もあって、与党修正案が衆院憲法調査特別委員会で強行採決され、合意形成は幻に終わった。
直後に民主党の枝野幸男憲法調査会長が「安倍氏が首相である限り、与党と憲法論議しない」と発言したのは記憶に新しい。こうして成立した国民投票法は、厳密に言うと投票権者年齢さえ現時点では確定していない「生煮え」の内容。とても評価できない。
集団的自衛権の憲法解釈変更についても、首相の私的懇談会が秋に「米国を狙ったミサイル迎撃」などを容認する結論をまとめる方向だが、公明党の反対に加え、実現するには法整備が必要なため、参院の与野党逆転が大きな壁になるのは避けられそうにない。
現在はまだ始動のめどが立たないが、衆参両院の憲法審査会は三年間、改憲原案の提出・審議はできないと定められている。三年後にすぐそれをやらなくてはならないということではなく、その意味では時間的余裕はある。
そうなら、国民投票法をもう一度練り直すことを考えてもいいのではないか。集団的自衛権に関しても、本来は政府解釈の変更で切り抜けるような問題ではなく、堂々と憲法九条の改正案を提示して国民の判断を仰ぐのが筋だろう。
首相、自民党は「二〇一〇年中の改憲発議」という目標をまず下ろし、これまでの姿勢を改めて出直す決断が求められている。