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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070720-00000015-mailo-l02
毎夏10件は来ていた戦争体験の講演依頼が、戦後60年の05年を境に1件も来なくなった。
「我々の世代はもう必要ないのか」。1945年にあった青森空襲の体験者で、青森市内で戦争体験の語り部活動をする古木清隆さん(75)は唇をかみしめた。
10年ほど前から戦争体験の風化を実感していた。体験を話しても、小学生に「うそでしょ」と言われた。それでも古木さんは「日本には平和憲法が、9条があるから大丈夫」と思っていた。だが、初の戦後生まれの安倍晋三首相(52)は「憲法改正」に踏み込んだ。古木さんは「わずか20歳ほど下の世代が、こうあっさりと憲法を変えたがるとは」と、がくぜんとした。
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憲法改正の是非も今回参院選の大きな争点だ。ことに、戦争放棄や戦力の不保持をうたった「9条」が焦点になる。
改正の手続きを定めた国民投票法が5月に成立した。同法は3年後に施行される。参院議員の任期は6年間なので、今回の参院選は「憲法改正発議をしうる初の国会議員を選ぶ選挙」でもある。
安倍首相は今年1月、憲法改正を参院選の争点とする考えを表明した。自民が05年に公表した新憲法草案では、9条の2項に「自衛軍の保持」が明記されており、参院選の同党マニフェストでも「新憲法制定の推進」を掲げている。
民主も「現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改める」と改正に含みを持たせている。一方、共産、社民は9条改正に明確に反対している。
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「親の身になれば、今の憲法は逆に不安だ」。元陸自隊員で、息子2人も現職隊員である県自衛隊父兄副会長の對馬敦夫さん(67)は、改正に賛成する。04年に陸自第9師団がイラクへ派遣された際、對馬さんは平和と安全の象徴である黄色いハンカチを掲げる運動をした。
對馬さんは現憲法で、自衛隊の存在が「隠されている」と感じる。「戦争は絶対にだめだ。だからこそ、強い抑止力を海外に示しておかないといけない」と話し、自衛軍の明記を支持する。
自衛隊の海外での武器使用が厳しく規制される憲法解釈も不満だ。對馬さんは「国際貢献の現場で、子供の無事を願って使用制限緩和を求めるのは、親とすれば当然。現実に合う憲法が必要だ」と話す。
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参院選公示日の今月12日、青森中央学院大(青森市)の教室で憲法の講義が開かれた。出席した女子学生(21)=4年=は「憲法改正は必要」と話した。
講義で憲法改正の是非は勉強していない。だが、ニュースで知る自衛隊の海外派遣の現状と、自分の知る9条とは、あまりにも違う。女子学生は「話し合いで国際問題が解決するとも思えない。現実を見たら、戦争することだって考えないといけない」と述べた。戦争は嫌ではないか。女子学生はその問いに「ない方がいいだろうが、戦争を知らないから嫌かどうかも分からない」と答えた。
戦後62年。国民は今や「戦争を知らない世代」の方が多数派だ。勢い、憲法問題への当事者意識は希薄となる。女子学生も国民投票については「私が改正の是非を決められるかな。20代で憲法に責任を負うのは重いな」と感じている。
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県立保健大学の大竹昭裕准教授(憲法)は「手続き法がこれまでなかったのは異常だった」として、国民投票法の成立自体は評価する。一方で「本来、憲法は公権力を抑止し、国民の権利や自由を保障するもの。今は国民への行動指針を定めるような、憲法の性格を変えるような議論もある。国民は各党の憲法観を過去にさかのぼって吟味すべきだ」と話す。
古木さんは26日から4日間、青森市中央市民センターで青森空襲を語り継ぐ展覧会を開く。展覧会最終日の夜、憲法改正にかかわるかもしれない参院議員の顔ぶれがそろう。
7月20日朝刊