★阿修羅♪ > 憲法1 > 569.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
問う 2007参院選 この国の岐路 憲法改正 『白紙委任』に潜む危険性 【東京新聞】2007年6月24日 紙面から
「今年は憲法が施行されて六十年。私の内閣として改正を目指していきたいということは、当然、参院選においても訴えてまいりたい」
ことし一月四日、首相官邸での年頭記者会見。安倍晋三首相は、改憲を参院選の争点として掲げることを宣言した。首相の背後の緞帳(どんちょう)はこの日、それまでのブルーから、小泉純一郎前首相が郵政解散時など重要局面の会見の際に使った、燃えるような緋(ひ)色に変えられた。
そして五月十四日、国民投票法(憲法改正手続き法)が成立。首相は手続き法にすぎない同法を明確に改憲のステップと位置付け「二〇一〇年の国会発議を目指す」と、自民党の参院選公約に盛り込んだ。年金問題の陰に隠れてはいるが、公約のトップ項目であることには変わりない。同党の中川秀直幹事長は「憲法改正まで政治スケジュールに載せた首相は戦後一人もいない」と、首相の決断を持ち上げる。
では、その首相は憲法のどこをどう変えたいのか。自民党には、結党五十年の二〇〇五年秋に打ち出した新憲法草案がある。首相はこれを基本に「国民とともに広く議論をしてまいりたい」と言う。だが、草案に盛り込まれた改正点は、前文、九条および国民の権利の見直しなど大くくりの項目だけでも三十余。そのすべてを同列に問うのか焦点を絞るのか、判然としない。そもそも自民党の公約は、同草案の内容に全く言及していない。
首相の思惑について、井口秀作・大東文化大法科大学院教授は「草案の名の通り、どこを改正するかより、新憲法制定を論点にしようとしている。裏を返すと、現憲法はもはや役に立たないと(有権者に)言わせたい」と分析。「そうなると、国民も時代の流れで、もう憲法を変えてもいいのではと漠然と支持する可能性がある」と予測する。要は、新憲法制定の「白紙委任」が首相の狙いというわけだ。
しかし、改憲スケジュールを掲げる一方で“側近”の有識者を集めて集団的自衛権行使容認の解釈改憲を行おうとしている首相のこと。「白紙委任」の先に関しては、改憲論者の中からさえ「愛国心の強制と九条の空洞化による海外派兵の自由化が最大の目的。敗戦の軛(くびき)から解放されたいがための戦前回帰志向であり、憲法改悪にすぎない」(小林節・慶応大教授)と、懸念の声が出ている。
そんな首相の思惑も、参院選で自民党が大敗する事態になれば、帳消しになるのかもしれない。
ただ、その場合でも、国民投票法と同時成立した改正国会法により、選挙後の臨時国会で衆参両院には改憲原案を審議する憲法審査会が設置される。審査会設置には、与党と民主党の間に全く意見の相違がなかった。原案審議は三年間凍結されるとはいえ「国会の改憲論議は着実に進むことになる」というのが井口教授らの見方だ。
当然、改憲論議をめぐる民主党の影響力も大きくなるが、同党はそれに関して参院選マニフェストに盛るどころか、党内の意見集約もしようとしていない。愛知選挙区から出馬する同党新人の谷岡郁子中京女子大学長は、こうした対応について「国の形の根本問題。審査会に臨む前に、党は国民の意見を広く聞き、説明責任を果たすべきだ」と訴える。
当選すれば、六年の任期内にほぼ確実に改憲発議の是非に直面する候補者として率直な意見だろう。有権者の側も、今回の候補者たちがその任を負うことを忘れてはならない。改憲問題に対して「白紙委任」はあまりに危険だ。 (政治部・参院選取材班)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007062402026809.html