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<憂国の士の論説コーナー>
2007.5.28(月)
堀本秀生(旧大宮市在住)
夏に「憲法審査会」が設置され、国会運営の中心となる
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5月14日、「憲法改正手続法」が成立しました。同法に基づき、参議院選挙後に開かれる国会で「憲法審査会」が設置されます。今後国会の運営は、衆参に設置された「憲法審査会」が中心となる事態を迎えます。大手マスコミは、この事実の報道をさけています。私は、「憲法審査会」設置が、どんな事態を指しているのかについて、報告をします。一言でいえば、設置により、国会運営が、「1院制」に変貌します。
この間、与党・民主党の法案提出者とマスコミは、成立した「憲法改正手続法案」を「国民投票法案」と呼んでいました。大手マスコミが、同法案の名称を「国民投票法案」としているのは、主権者にすり込むためです。「国民投票で、憲法改正案の是非についての主権行使できる」と考えると、大きな勘違いと、「戦後体制の脱却」という大変な事態を迎えることになります。
同法は、「国民投票法」ではありません。同法は性格の違う2つの内容で構成されています。ひとつは、国会内常設機関として「憲法審査会」を設置し、「憲法改正原案」の提案・審議・可決と、改憲発議までを定義した部分です。もうひとつは、マスコミなどによく取り上げられている、国民投票の部分の定義から成り立っています。憲法第96条では、発議(提出)と国民投票は、区別されています。憲法では発議と国民投票は別々に法律をつくりなさい、と規定されています。
さらに発議の国会は、憲法第41条に基づく国会運営ではできないことになっています。第41条に基づく国会とは、法律案、予算、などを審議する国会のことです。41条の国会では、憲法改正案の提案はできません。96条には、41条の国会とは、特別の国会を立ち上げなさいと、定義しています。特別の国会とは、憲法改正案を「国民に提案してその承認を経る」ための提出する機関のことになります。
しかし、与党と民主党の「憲法改正手続法案」の構造は同じでした。「憲法審査会の設置」と「国民投票制度の新設」で成り立ち、通常の法案を審議する国会(第41条)であることも同じで、法案の1字1句同文でした。これらの事実は、4月13日での衆議院本会議での与党議員のやり取りで確認できました。
場面を説明しますと、法案採決に先立ち各党から意見表明が行われました。民主党枝野幸男議員は、「昨日の委員会採決を暴挙だ」と抗議し、「憲法は権力に乱用されないよう限界を定めたものでそれが近代立憲主義だ。安倍総理は統治の道具と考えている」と批判し民主党案の趣旨説明を行っていました。
しかし、自民党と談合を行ってきた枝野議員に対し、近藤議員(自民)から「自民党修正案は9割がた1字1句民主党案と同じ、妥協できないのはどうしたことか?」と、また公明党の大口議員から「枝野さん、5月3日までに成立させたいと発言したことをお忘れか?」と揶揄されていました。
なぜ、与党と民主党の法案の構造が同じなのでしょうか。かつて与党(自民党と公明党)が、04年12月3日に公表した「国民投票法案骨子」は、「国民投票制度の新設」を重点にしていました。その「国民投票制度の新設」と憲法改正案を審議する委員会の設置とが一括になったのは、自民党が05年10月28日に、戦後体制を否定をする「新憲法草案」を発表したからです。自民党の「新憲法草案」は、憲法第九条2項が「改正」されています。「同草案」の「改正」は、「集団的自衛権」行使を安倍政権を指導している「アーミテージレポート2」の要求に沿うかたちになっています。
それを受けて自民党・公明党(宗教の世界化を狙っている)・前原民主党のそれぞれの責任者による非公式協議が活発になりました。それは05年12月ごろから自民・公明・民主(前原代表)3党の非公式協議の「成果」でした。非公式協議のそれぞれの責任者は、自民が船田元(はじめ)、公明が斉藤鉄夫、民主が枝野幸男で、3名とも衆議院議員です。これまで「国民投票法案」と呼ばれていましたのが、06年3月には、国会法の改正で「憲法審査会」を設置するので、「憲法改正手続法案」と名付けられました。同法案は06年の164国会(通常)に、3党共同提出の形で、衆議院に提出される予定でした。この3党共同提出の流れが変わったのは、4月7日に小沢一郎氏が民主党の代表になり、通常国会の5月9日に、小沢民主党代表が3党共同提出について「賛成ではない」と表明をしたからです。社民党は、06年5月31日に、衆議院議長宛てに、「憲法審査会」の設置の「国会法」改正が、同法案に含まれているので、衆議院憲法特別委員会の運営の趣旨にそぐわないので、本会議の差し戻しを申し入れています。
さて、「国民投票法案」が、「憲法改正手続法案」に変貌した経過を書いてきました。変貌のポイントは、自民党の「新憲法草案」の発表です。憲法第九条2項の「改正」です。それと、今年2月に公表された「アーミテージレポート2」です。「アーミテージレポート2」は06年9月20日の自民党総裁選の前に公表されるという話が、06年の前半にありました。同レポートは安倍政権に「集団的自衛権」行使を指導しています。安倍政権を指導する勢力にとり、「憲法審査会」設置が必要なのです。14日、参議院本会議で同法案が可決され、成立しました。
同法案の賛成をした参議院議員は、参議院の弱体化に手を貸したことになります。
2005年8月8日を、想い出してください。
参議院本会議で「郵便貯金の民営化法案」が否決された日です。89年の消費税導入をめぐる参議院選挙以来、国会運営の中での参議院は影響力を増大させてきました。失脚させられた村上正邦氏は、参議院議員で村上・亀井派の派閥の会長でした。影響力の行使で目につくのは、参議院自民党の青木幹雄幹事長です。参議院議員の任期は6年で、当時の小泉総理の解散と公認の脅かしに、びくともしなかったのです。
「憲法改正手続法」の成立で、参議院選挙後の国会から、衆参に「憲法審査会」が設置されます。同法では衆参の「合同憲法審査会」の設置も予定されています。日本国憲法は国会を「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」(第41条)と位置づけ、国会は「衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」(第42条)と2院制です。参議院と衆議院が法律案で、異なった決議をしたり、参議院と内閣が対立することが、憲法によって想定されています。
ところが、衆参の「合同憲法審査会」が設置されると、どうなるでしょうか。安倍政権を指導する勢力にとり、とても都合のよい制度になります。憲法改正案をめぐり参議院と衆議院が異なった決議をしたり、参議院と内閣が対立したりする、めんどくさくて、ややこしい2院制よりも、参議院の国会での影響力を低下させ、衆参が談合できる「合同憲法審査会」にして「1院制」にしたほうが、指導しやすいのではないでしょうか。日本弁護士連合会は06年12月1日の衆議院議長宛ての意見書の中で、「憲法審査会」に対して設置の「合理性がない」と、「合同憲法審査会」については、「各議院の独立性を尊重しようとする憲法の趣旨に反する」と指摘しております。
大手マスコミは、以上のことを報道していません。
また、「憲法改正手続法案」に賛成をした参議院議員は、自らが国会での参議院の弱体化に手を貸したことを、反省すべきです。「議会制民主主義を守る」を結党の動機にしているのは、国民新党です。それは、当時の小泉総理が、違憲の解散をしたからです。その結果、行政府の権力が増大していることが明らかになりました。国会に対して連帯して責任を負っている内閣の権力を巨大化させてはいけない。2院制の国会運営が、「憲法審査会」の設置で、限りなく1院制の運用に近い状態になります。まちがいなく違憲です。賛成した参議院議員は、「議会制民主主義を守る」ために、直ちに行動をすべきです。