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http://news.livedoor.com/article/detail/3547160/
[CNET Japan] ひろゆき氏が明かす、「ニコニコ動画が人気な理由」と「コミュニティ運営のコツ」
2008年03月10日21時04分
ニワンゴが運営する動画コミュニケーションサービス「ニコニコ動画」の勢いが止まらない。
当初YouTubeなど外部サイトの動画にコメントを付けられるサービスとして開始したものの、アクセス数が伸びすぎてYouTubeから接続を遮断される事態に。その後、動画投稿サービス「SMILEVIDEO」を自社で開始し、猫が土鍋の中で眠る「ねこ鍋」や、音声合成ソフト「初音ミク」を使った楽曲など、ニコニコ動画発のヒットコンテンツも数多く生まれている。3月5日には「ニコニコ動画(SP1)」という名称に変わり、これまで会員でないと見られなかった動画も、提携サイトに掲載して誰でも見られるようにした。会員数は3月に560万人に達し、今後は、他社とは違う「明後日(あさって)の方向へ進化」すると打ち出している。
CNET Japanではニワンゴの取締役管理人であり、2ちゃんねるの管理人「ひろゆき」としても知られる西村博之氏に、ニコニコ動画が人気を得ている理由や運営のコツ、開発秘話などについて聞いた。インタビューの中で話は大きく広がり、最後には日本が目指すべき方向にまで及んだ。その模様を2週にわたってご紹介する。今回は、ニコニコ動画というコミュニティを運営する上での鍵を探った。
――ニコニコ動画は正式サービス開始からわずか1年で500万人以上の会員を集め、ここから生まれたムーブメントも数多くあります。人気を得た最大の理由は何だと思いますか。
何だろうなぁ。結局、人間がコミュニケーションを取るときって、必ず共通の知識が必要なんですよね。「あのドラマ見た」とか、「あの上司むかつくよね」とか。
ニコニコ動画は、動画という共通の話題をどーんと目の前に出してあげる。「みんな、動画を見ているんだからその話をすればいいじゃん」ということで、コミュニケーションをするときに話題を探す手間がいらない。途中から参加する人にとっても、「えー、その話さっきしたよ」とか「過去ログ読めよ」って言われない、とっつきやすいコミュニケーションの仕組みを考えた。
……というか、結果としてそうなったんですけど。そういうのを作ったサービスが他になかったんじゃないですかね。
今流行しているコミュニケーションサービス、たとえばmixiの場合、「この人と友達になりたい」といっても、共通の話題がないとそもそも友達にはなれないし、誰も話題を振ってくれないと黙ってるしかない。話しかけても相手にしてくれないかもしれない。
Twitterも自分で話題を決めないといけないという側面があるし、Second Lifeはもっとハードルが高い。
そういう意味では、(楽天が運営するプロフィールサービスの)前略プロフィールが流行しているのと似ているかもしれないですね。質問が数十個あって、「書きました。それに対して興味のある人がいればいいんじゃね?」っていうぐらいの、ゆるいものが受ける時代なのかなと。
――コミュニティサービスの場合、場を作ったからといって人が集まるわけではないですよね。
話をするネタがあるかどうかだと思いますけどね。ネタがないんだったら、もてなす人がいるかどうか。
mixiだと誰かが必ず日記を書いて、誰かが必ずコメントをしてくれるっていうように、人がホストになる。2ちゃんねるのようにテーマが分かれているところだと、そのテーマについて話す。ニコニコ動画の場合は動画をネタにする。
話すネタをきちんと提供できているコミュニティはそれなりに流行するし、「書き込みができます、さぁどうぞ」っていうのは、紙とペンを渡して「さぁ絵を描け」って言うのと同じで、言われた人は「いや、別に・・・」と思っちゃう。そういう感じのはうまくいかないというだけだと思いますけどね。
――コミュニティサービスのもう1つの難しさは、場が「荒れる」ことをいかに抑えるかだと思います。場の空気のコントロールはどのようにしていますか。
今でも荒れてます(笑)。今の空気が良いかといえば、良くないときも多々見かけるので、どうにかしなければならないとは思っているんですけど。
サービス開始時に名前欄を付けたほうがいい、と言ったのは僕ですね。でも途中で撤去されました(笑)
どうにかしたほうがいいよな、と思うことがあって、それは(お笑いタレントの)出川(哲郎)さんや江頭2:50さんがどのくらいすごいか、という話になるんですけど。基本的に出川さんは面白くない芸人、もてない芸人としてテレビに出続けているんですが、あれは、そういうふうに言われるっていうポジションを頭を使って取っているんです。
江頭2:50さんの場合も同じで、テレビに出続けると飽きられるし自分には実は芸がないということを分かっているので、一定以上テレビには出ないし、出るときはひたすら本気を出す。自分のポテンシャルを分かっていて、いじられる人なんですよ。
そういうのが分かっている人が罵倒されるのはアリなんです。ただ、それが動画やお笑いの文化だとして、それをニコニコ動画の中に持ってきてしまうと、そこまで覚悟のない動画投稿者がいきなり罵倒されてしまうんですね。
視聴者としては、罵倒が当たり前だと思っているからやるんだけれども、それは出川さんや江頭さんじゃなければ耐えられないんじゃないか、というような状況になってしまう。
実際、それに耐えられて、そのポジションで長生きできた人というのはテレビ業界でもごく少数なんですよね。そういうことが起きてニコニコ動画が荒地になってしまう気がするというのが、僕がどうかな、と思っている部分です。
――ちなみに「荒れる」というのはどういう状態を指していますか。
最近、誹謗と中傷の違いが分かったんですよ。誹謗は根拠のある、評価を下げる発言。中傷は根拠のない、評価を下げる発言。僕は、誹謗は結構アリだと思っているんですよ。「ここがこうだから悪い」というのは。でも中傷は、その人がどうやったら次から言われなくなるかという、プラスの方向性を見いだせなくて、ただダメージを受けるだけだったりする。
ですから、できれば誹謗してほしいんです。いや、別に誹謗しろと言っているわけではないんですけど(笑)
人が成長しやすいような状況を作ったほうが、長い目で見て、面白いものができ上がると思うんですよね。その場でつまんない人に「お前、つまんないから二度と来るな」って言ったら、たしかにつまんない人が減るので平均点は上がるんですけど、どんどんパイが小さくなっちゃう。
それだったら、つまんない人に「こうしたら面白くなるよ」って言っていって、面白い人が大勢いるという状況を作ったほうが面白い世界になると思うんですよ。
――すでにニコニコ動画はクリエイターの協業の場にもなっていますよね。
それはいいなと思って見ています。こちらが仕掛けたわけではないんですが、2ちゃんねるでも元々あった文化で、人の著作物を勝手に改造して公開して、それをまた別の人が使うことを誰もとがめない。例えばアスキーアートって、原型を描いた人がいても、最終形はぜんぜん違う人が作っているとか、面白い文章のコピペをだんだん変えていったりとか。ニコニコ動画はその文化圏のルールでやってもいいんだ、とユーザーが思ったので起きている現象だと思います。
商業的に見ると、著作物を適当にいじくりまわして出すというのは、テクノにおけるサンプリングとか「サザエさんの秘密」本、替え歌ぐらいしかないと思うんですよね。あんまり商業的には日本でうまくいかない分野の文化で、ネットでしかできないから、ネットで流行したんだと思いますけどね。
――2ちゃんねるの文化を引き継いでいるということですか。
結局、それまでは暇人がやることないから2ちゃんねるでうだうだしてて、ニコニコ動画が出てきて「あ、動画ができた、じゃぁ動画行こう」って。暇人がぐるぐるいろんなところを回っているだけで、その中のひとつにニコニコ動画が入れた、ということだと思います。
――場の設計として意識したことはありますか。
特にないかもしれません(笑)
ただ、人がコミュニケーションするときって必ずその人同士でコミュニケーションした結果やログが残って、誰と誰がどういう会話をしたというつながりは残るんですけど、ニコニコ動画の場合、実はまったくそのつながりが残らないんですよね。強いて言えば、チャットのサービスに近いかなという気はします。チャット文化を持つサービスが今はもうなくなってしまったから、そのニーズを拾えたというのがあるのかなぁ。
でも、それは別に僕が何かしたわけではないので、僕は大したことはしてないと思います(笑)
――サービスを最初から作りこむのではなく、ユーザーの反応を見ながら開発していったと聞きました。
どっち側に伸びるかが読めなかったっていうのがあるんですよね。どういう機能が今のユーザーに適しているのかと考えたときにも、どの意見にも説得力がないんですよ。結局、誰も実証を見ていないし、みんな「俺はこう思う」としか言えなくなる。
色んな機能をつけて公開した場合、どこが受けてどこが受けていないのかがよく分からなくて、結果のページビューだけが出るじゃないですか。
ニコニコ動画は最初、(動画の上に)文字が書けるだけだったので、動画を見たいならYouTubeに行けばいい。文字を書くことにどのくらい面白さを感じてくれる人がいるかということは、単一機能だから見えてきた、というのがある。
例えば大学の論文を書くときに、2つの標本があって1個だけ要素が違うようにして比較しますよね。要素が複数になると、比較がものすごく大変になる。
後は、だめだったらさっさと(サービスを)下ろそうっていう(笑)。言い方が悪いんですけど、YouTubeを利用させてもらっていたので、設備投資があんまりかからなくて、失敗して撤退しても誰も痛くないっていうのがあって。たまたま社内にあるサーバを数台使って、エンジニアが何日かテストした。サービスがダメだったとしても動画系のノウハウがたまるからそれはそれでいい、くらいの気持ちですね。
――サービスを運営する上で、西村さん自身のモチベーションはどこにありますか。
観察しているのが面白いというのがあると思います。僕が想像していなかったものを持ってくる人たちを。それがひどいものでも別にいいんですよ、こんなひどいものをよく思いつくなって(笑)。半年前の卵を食べてみる、とか。そういうのも別に僕としてはアリだと思います。
逆に、アニメのネタが分かる人同士が集まって、もっと濃いアニメのネタをやっていくと、分かる人をどんどん狭めていってしまう。さすがに僕もわからないので面白くない。
コミュニティってかならずそういうのがあって、最初はみんな初心者なんですけど、必ず常連さんが出てきて、初心者が入りづらくなって、過疎化していく。そのコースに行きそうな気がして気になっているんですけどね。
なので、コミュニティが濃くならないようにするか、切り分けてしまうか、何らかの手段は必要かなと思ってはいます。
その辺りは僕がどうこう言って何とかなるものでもないですからね。結局、面白いと思ってる人たちはずっと面白いと思っているので、それを外から「それ面白くないよ」と言っても「いやいや、面白いから」と言われるだけなんです。そうするともう、その人たちはその人たちでがんばってもらって、初心者の人たちが入れる別の新しい器をどんどん用意する形にならざるをえないのかなと。たとえばいまのニコニコ動画を「アニメ好きニコニコ動画」というものにして、「アニメ嫌いニコニコ動画」というのを作るとか(笑)
今のランキングだと、今までランキングを見てきた人が分かるネタのものばっかりなんですよ。初めてニコニコ動画にログインしてランキングを見た、という人が面白いものが、そんなにない。初めての人でも、動画を見ながらコメントしていくことが面白いんだなと思えるような見せ方というのは必要になるかなと思ってはいます。
――一般ユーザーを増やすための方策は。
結局、使ってみて面白いと思うか、不満を感じないかということだと思うんです。(動画再生中に告知や広告が割り込まれる)「ニコ割」がうざいのに何で存在するのかというと、たまに面白いものが見られるから。例えばテレビCMも、本当は番組だけ見たいからテレビCMはなくなればいい、という意見もありますが、そのおかげて面白いテレビCMが生まれたりもする。メリットとデメリットって必ず一緒について回るものだと思っていて。
そういう意味で、割とマイナスなところもあるけれども、それも含めて楽しんでもらえるっていうユーザーを増やしたいなと考えているところです。
会員になっていない人へのアピールポイントは、「ニコニコ動画(SP1)」で実装した、外部サイトにニコニコ動画の再生プレーヤーを載せられるっていうことが1つです。
あとは、普通のネットサービスをやっている会社がやらないようなことをしていると、「この人たちは面白そうなことをしている、ちょっと見に行ってみようか」という気になってもらえると思うんですよ。
そういう意味で、ちょっと他の人たちがやらないことを意識してやっていったほうが、実は一般の人たちは入って来やすいんじゃないかという期待もしています。